203 その称号はいらないんだが
あの後も七海は子供の名前やら育て方やらを語り、1人で話を進めていっていた。
優はもう止める気も起きなくなり、ボーッと星空を眺めていた。
(あ〜オリオン座食べたい)
などと適当なことを考えながら七海の話が終わるのを待っていると、こちらに質問が飛んできた。
「ねぇ、優くんはどう思う?」
「ん?」
「子供、何人欲しい?」
「………」
どう考えても気が早すぎる質問に、優は黙秘を続ける。
だが心の中ではしっかりと考え、自分なりの答えを導き出そうとする。
(まぁ多くても4人ぐらいかな?多すぎても子育て大変だし、そもそも俺の給料で養えていけるのか?……就活頑張らないとな…)
優は将来の自分に全てを託し、七海の方に視線を戻s……
「ぶっ__⁉︎」
視線を戻した時に視界の少し下の方から入ってきた情報に、つい吹き出してしまう。
(た、タオルがズレてやがるっ…!)
そう、七海のタオルが先程より少しずれていて、立派な山と谷が結構モロに見えていた。
これは流石によろしくないと視線を逸らすが、そこで七海に不審感を抱かれてしまう。
「どうしたの?急に目を逸らして…もしかして、そんなに恥ずかしいの?ふふっ、私は何人でも引かないよ?優くんとの子供なら何人だって産んじゃうんだからっ♡」
うーん、的外れ。
少し気になる話をされるも、今の優にとってはどうでもよくて。
優は心の中で急いでどう伝えるべきか考えていた。
(普通に直接伝えるか?いやでもそんなことしたらまた変態扱いされる気が…いやでもなぁ…)
そんな風に脳内で解決策を考えていると、七海は前屈みになって少し心配そうに顔を覗いてきた。
「大丈夫?顔が赤いけど…もしかしてのぼせちゃった?」
「い、いや…大丈夫」
(そんなに前屈みになったらぁぁぁああぁぁ!!!!)
七海は優の顔の斜め下から顔を覗いてきているため、普通に七海の顔を見ていたら視界に立派なものが映り込んでしまう。
しかも前屈みになっているのもあってか先程よりも肌面積が大きくなり、いよいよ見えてしまうのでは?という次元まできていた。
流石にそこまでくると心臓の鼓動が早くなり、全身が熱くなってくる。
「本当に大丈夫?さっきより顔赤くなってきたけど…」
(やばいやばいやばい…っ!)
七海はさらに距離を縮めてきて、いよいよ身体が触れ合う。
その時に耐えられなくなって優は思い切り立ち上がった。
「ゆ、優くん…?」
「ちょっとのぼせたかも。涼みながら身体洗ってくるわ」
「あ、うん…」
優は逃げるようにして立ち上がり、少し離れたところに涼みに行こうとした。
その時だった。
身体が近くにあったということもあり、優が立ち上がった時に七海の胸に手が挟まった。
「あ、」
しかも七海のタオルは結構下の方までズレていたため、七海を守っていた城壁は簡単に崩れ落ちた。
「っ__⁉︎」
七海は手で必死に隠し、一瞬で後ろを向いた。
「ご、ごめんっ!!」
七海の背中に向かって必死で謝るも、七海は何も言ってくれない。
それから数分間死ぬ気で謝っていると、ようやく口を開いてくれた。
「……見た?」
「え?あ、その…見てないよ…」
「…本当に?」
「あ、ああ…本当だとも」
嘘である。
正直視線は完全にそちらに吸い寄せられていたため、七海の立派なモノは綺麗に見ることができたし、何なら一瞬だけアレが見えた気がしなくもない。
だが流石にこれを言ってしまうとマズいため、優は黙秘しようとしていたのだが…
「嘘つかないで」
なんでか、七海に嘘は見破られていた。
「な、なんでっ…!」
「だって鼻の下伸びてるし、何なら鼻血でてるし」
「な__っ⁉︎」
もう逃れられない要素が揃いまくっており、優はとうとう諦めた。
「ご、ごめんなさぁーい!!!!!」
バレたなら仕方ないと正直に頭を下げるが、当然七海は許してくれるはずがなく。
「優くんのえっち」
またしても変態のレッテルが貼られてしまうのだった。




