202 問題しかないんだが
七海と一緒に部屋の露天風呂に入ることになった優はひと足先に脱衣を終えて中に入って行った。
七海が入ってくるまでに身体を隠しておきたいため、優はかけ湯をしてから速攻で温泉に入り、口が浸かりそうになるまで深く座った。
と、丁度そこで入り口の扉が開かれ、七海が身体を手で隠すそぶりをしながら入ってきた。
いやタオル巻いてるのに何でそんなに隠すの。
もう裸なのかというぐらいの隠し方だった為、優は気になって七海の方をじっと見てしまう。
(いや…色々すごいなこの彼女)
以前に水着姿を見た時も思ったのだが、なんというプロポーションをしているんだ。
普通にそこら辺のグラビアアイドルが霞んで見えるぐらいの起伏の激しさだ。
こんなものを身の前にして見ずにいられる男など存在するはずがなく、優も例外なくしっかりとチラチラ見まくっていた。
向こうも多分視線に気づいていて身体を隠しているのだろう。
七海はかけ湯をし、ゆっくりとこちらに向かってきた。
「と、となり…入るねっ」
「お、おお…」
七海は片足をゆっくり入れ、そのままスラスラと温泉に浸かった。
「おぉ〜気持ちいいねぇ〜」
七海は少し身体を後ろに倒しながら気持ちよさそうな顔をする。
「やっぱり温泉は身体に効くね〜。これなら効能にも期待できそうだね♡」
「そ、そっすねぇ…」
七海はイタズラをする子供のような顔で目を見つめてくる。
「この感じなら…今日子供できちゃうかもね♡」
「ぶっ__⁉︎な、何言ってんの⁉︎」
七海の衝撃的な発言に、つい吹き出してしまう。
でも仕方ないだろう。
こんな発言をされて無反応なままの彼氏などこの世に存在するのだろうか?
いやしないね。
しないでくれ。
優は男なら全員こうなると自分に言い聞かせ、何とか心を落ち着かせる。
「あ、あのな…そういう話は結婚してからするもんだろ」
「そうだね」
「だからこの話はここで__」
「でも私たち、もう結婚してるも同然でしょ?」
「……」
もう反応する気力も失せ、優は七海にジト目を向けることしかできなくなる。
「もう、そんな目しなくてもいいのに。わかってるよ。私たちはまだ恋人だもんね。まだ」
「いやそこ強調しないでくれない?」
この感じだと七海はいつかは結婚する気でいるのだろうか。
その気でいてくれるのなら普通に嬉しいのだが、正直今は現実味が無さすぎて全力で喜ぶことはできない。
優は複雑な感情が入り混じり、一旦心を落ち着けるために大きく息を吸った。
「七海」
「ん?」
「俺たちは、恋人だ」
「うん?そうだよ?」
「だから、子供とかそういうのはまだ早い。そこまで考えてくれるのは嬉しいけど、まだ現実味がないというかだな__」
「今「まだ」って言った⁉︎言ったよね!!!」
「あ…」
マズいやらかした。
これではこちらもいつかは結婚して子供を作るつもりみたいではないか。
…いや否定はしないが。
でも流石に気が早すぎるというか、どう考えても高校生の会話ではないというか。
とにかく、このままではよろしくない。
何とかして流れを変えなければ。
「そ、それより星が綺麗だな…。露天風呂でよかったなぁ…」
「まぁそうだけど、話逸らさないでよねっ」
「うう…」
今回は流してくれないらしく、七海はねちっこく先程の話について問い詰めてくる。
「さっきの話からすると、優くんもその気があるってことだよね?なら、子供ができちゃっても問題ないよね♡?」
「いや何言ってんだよぉぉぉ!!!!」
優の叫びは大自然の中に消え去り、七海は機嫌良く距離を縮めて来るのだった。




