表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
198/218

198 ※特に深い理由はありません。


「んじゃ、そろそろ行ってくるわ」


全ての支度を終え、いよいよ旅行に出発する。


(ゆう)は玄関で靴を履きながら家族と会話をする。


「ああ、楽しんでこいよ」

「仲良くするのよ〜」

「うん、わかってる」

「なぁ優」

「ん?」


靴を履き終えて立ち上がった時に父の優希(ゆうき)が近づいてきて顔を耳元に近づけてくる。


「(ゴムは、ちゃんとつけろよ)」

「…は⁉︎何言ってんの⁉︎」


えげつないことを耳元で囁かれ、思わずガチトーンでツッコんでしまう。


「(いや、流石に高校生で妊娠したらマズイだろ…?だからちゃんとゴムつけろって話)」

「いやいやいや、そんな真剣な顔して言われても理解できないって」

「「??…」」


優希以外の人間は理解に苦しんでいるが、当の本人は全く気にすることなく話を続ける。


「(あ、もしかしてないのか?俺のやろうか?)」

「いやなんでそうなる!」

「(ん〜、なら金やるからそこら辺のコンビニで買ってけ)」

「いやだからなんでそうなる⁉︎」


優希は全く話を聞き入れてくれず、何度もアレを持たそうとしてくる。


大体、前提がおかしいだろうに。


(何で俺と七海(ななみ)がそういうことをする前提なんだよ…!クソッ、このエロオヤジ…)


優は怒りと呆れを交えた視線を向け、しっかりと大切な部分を訂正しておく。


「(俺たちは清い付き合いをしてるんだ。だからそんなものはいらないし、そんなのとは全く無縁だよ)」

「そ、そうなのか…っ」


優希はショックを受けた顔をしてグラグラの足取りで後ろに下がって行った。


それに対して奈々(なな)有咲(ありさ)は怪訝そうな目を向けるが、あまりそれに構っている余裕はなく。


優は1度呆れた息を漏らした後、家族に手を振った。


「それじゃあ、行ってきます」

「行ってらっしゃ__」

「っ⁉︎」


と、そこで有咲が目の前まで寄ってきた。


そしてそのままの勢いで頬に唇を付けられ、優は思わず心臓が跳ねる。


だがそんな兄の気も知らず、有咲は笑顔で手を振り返してくる。


「行ってらっしゃいっ!お兄さんっ♡!」


何なんだこの可愛い生き物は。


吹っ切れた有咲は今まで通りに…いや、今まで以上にたくさん甘えてくる。


甘えろと言ったのは自分だが、流石にこれはやり過ぎな気がしなくもない。


(これ以上にならないといいが…)


などという不安を抱えつつ、優も有咲に手を振った。


「行ってきます」


扉を開き、荷物を持って家を出る。


「ちゃんとご飯食べるのよ〜っ!あと、暖かくして寝るのよ〜っ!」

「はーいっ!」


何度も言われた言葉を肝に銘じ、優は一旦コンビニに向かった。


そこで食べ物と飲み物と、例のブツを買っていく。


(特に深い理由はないが…念には念を、だ)


そう、特に深い理由はない。


実際にそうなることに期待しているわけでもないし、ましてやこちらからするなんて以ての外だ。


だが七海なら、もしかしたら七海ならやりかねない。


そうなったら、正直流されてしまうかもしれない。


自分を抑えられると、心から言い切ることができない。


そういった少しの可能性も配慮し、念の為に買ったのだ。


決して、いや断じて期待しているなどではない!


優は心の中で早口で言い訳を募り、一旦冷静になってから七海の家に向かった。


「あ、優く〜んっ!!」

「おお、七海。おはよう」

「おはよう」

「荷物持つよ」

「ふふっ、ありがとっ。じゃあ行こっか」


2人は駅まで歩き、新幹線に乗って遠く離れた勝負の地へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ