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195 ナニをしようとしてるの?


と、いうわけで。


現在温泉旅館のペア宿泊券が手元にあるわけだが。


うん、なんで?


なんか突然親からこのチケットを託されたのだが、何が何だか全くわからない。


なので何度も理由を尋ねたのだが、毎回「それで七海(ななみ)ちゃんと楽しんでおいで〜♡」と言われてしまう。


ね、意味わかんないでしょ?


てなわけで現在このチケットと睨めっこをしているわけだが、一体どうしたもんか。


親の口ぶりから察するに、七海と温泉旅行に行ってこいという意味なのだろうが、正直あまり乗り気にはなれない。


その理由は当然…


(何されるかわかんねぇぇ…!!)


といった不安だらけの理由だ。


正直最近の七海は前よりもさらに積極的になったし、2人きりになった時なんかはそれはもう大変なことになって。


そんな感じで(ゆう)は若干気が引けており、未だに七海に話せずにいた。


と、そんな時だった。


スマホから電話が鳴り、優はすぐに画面を見た。


そこには七海の名前があり、優はすぐに電話に出た。


「もしも__」

【温泉旅行に行きたいっ!!!】

「………」


(こいつエスパーか…?)


なんというタイミングだろうか。


完全に心を読まれているとしか思えないタイミングに、思わず口元が硬直してしまう。


だが七海がそんなことを気にするはずもなく、1人楽しそうに話を続ける。


【いつにする?私はいつでもいいよ?あ、行きたいところはある?私は露天風呂があるところに行きたいな〜】

「……」

【…って、優くん?話聞いてる?】


七海がしばらく話している間黙ったままでいると、流石に不審がられてしまう。


「…ん⁉︎あ、ああ…聞いてる聞いてる…」

【ホントかなぁ…。まあいいや。で、どうする?行けそうかな?】

「ん…まあ…」

【ホント⁉︎ふふっ、やった!】


スマホの向こう側から嬉しそうな声が飛んできて心がホッコリする。


そしてその温まった心の状態のまま、例の件について話し始める。


「実は俺もその話をしようとしてだな」

【えっそうなの⁉︎やっぱり、私たち相性抜群だねっ】

この言葉は無視して。

「この前母さんが福引で温泉旅館のペア宿泊券を当ててきてさ。で、この前それを押し付けられて…」

【⁉︎…そうなんだ!!】


ここで七海の声のトーンが一段上がる。


【あっ、だからこの前奈々(なな)さんから『楽しんで来てね〜』って連絡が来てたんだ】


いやあの人何言っちゃってんだよ。


その時はまだ行くのが確定しているわけでもなかったのに。


(…まぁ母さんなら仕方ないか…)


長年の経験から奈々はそういうせっかちな部分もあることを学んでいるため、優はすぐに納得してしまう。


【で…その宿泊券で…私を連れて行ってくれるの…?】


七海は電話越しでも恥ずかしがっているのがわかるような声で語りかけてきて、優の心臓が大きく跳ねる。


「うん、そう…だな…」

【ふふっ、やった】

「じゃあ、ちょっと計画練らないとな…」

【そうだね】


2人はそのままの流れでスケジュールを話し合う。


「__そこで寝たら1日は終わりかな」

【…寝ちゃうの…?】

「…ん?寝る以外に何かしたいことでもあるのか?」

【そ、それは…】


七海は声を小さくして早口で語り始める。


【ほ、ほら、私たち付き合い始めてもう半年以上経ってるでしょ?だからその、そろそろ大人の階段を登ってもいいかなというか、経験してもいい頃合いなんじゃないかなと思って…】


この人は一体何を言っているんだ?


純粋(?)な優には理解できず、しばらくキョトンとしてしまう。


すると七海が諦めたように黙り込んでしまい、優はさらに謎を深めていった。


そして何か話さねばと思っていた時、七海が少し泣きそうな声で電話越しに囁いてきた。


【優くんのばか、ヘタレ】


(えっなんで⁉︎)


自分の耳を疑いつつ、死ぬ気で原因を探すのだった。


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