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193 幸せなんだが


「お〜風が気持ちいいね〜」


あれからしばらく七海(ななみ)に膝枕されながら休憩した後、七海が突然舟に乗りたいと言い出したので今現在乗っているわけだが、実のところ(ゆう)は全力で楽しめていないのであった。


その理由とは一体…!


(これ昨日も乗ったんだよなぁ…)


そう、優は昨日もお花見をしていたのだ!


家族と七海で2日連続で同じことをするとなれば、当然既にした記憶のあるものが多くあって、実際今のところ完全には楽しめずにいた。


だが七海はそんな優の事情など知ろうはずもなく、ただ純粋に楽しそうな笑顔を浮かべている。


「景色も凄く綺麗で…来てよかったねっ」

「ああ…そうだな」


なんか、七海の笑顔を見れば全部どうでも良くなった。


この力、使い方次第では結構害悪では?


などという考えを持つも、一瞬で首を横に振ってその考えを拭い去る。


「楽しそうだな、七海」

「うんっ!とっても楽しいよ!」

「そっか。ならよかったよ」

「でもその…優くんは…楽しめてる…?」


もしかして、見透かされていたのだろうか。


七海からそのような質問をされると、流石に汗が出てきてしまう。


でも七海はまだ確証を得ていないはず。


なら、まだ誤魔化しようはある。


優は少し言い訳をするように慌てて口を開く。


「あ、ああ。勿論だよ。好きな人との初デートなのに楽しめないわけないだろ?」

「す、好きな人…」

「ああ、好きな人」


七海は顔を赤くして明後日の方向を向くが、騙されないぞといった感じで首を横に振った。


「ご、誤魔化さなくていいんだよ?私が無理言って付き合ってもらってるんだから…。優くんは、昨日もお花見してるわけで…」


ちょっと、マズイ方向に行ってしまっている気がする。


このままではこれからの恋人ライフに影響が出てしまう。


直感的にそう思い、何とか対処を図る。


「七海」

「な、なに…?」

「七海は俺とデートしてて楽しいか?」

「それは…勿論そうだよ…?」

「そう、恋人とデートなんて、楽しいに決まってるんだよ」

「え…」


七海は胸に手を当ててこちらに目を合わせてくる。


「じゃ、じゃあ…っ!」

「ああ。勿論、七海とのデートは人生で1番楽しいよ」


そう、この言葉こそ、優の本心。


それだけは間違いないと自信を持って言える。


そんな全力の愛の気持ちを普段あまり言わない優が言ってしまうと、当然七海は照れてしまうわけで。


「そ、そう…なんだ…ふ〜ん…」


七海は斜め下を向きながら頬を赤く染めている。


(可愛い゛……っ!!)


そんな七海の仕草が優の心にクリーンヒットし、胸を押さえながら後ろにのけぞる。


そうすると舟のバランスが一瞬崩れ、2人は同時に血の気が引く。


「ひゃぁっ!!」

「うわぁっ、ちょ__!」


2人は息を合わせてバランスをとり、何とか持ち直すことができて同時に胸を撫で下ろした。


「あ、危なかったね…」

「ああ…ごめん。俺のせいだわ」

「ううん、気にしないで。これもなんかいい思い出になりそうだし」

「そ、そうか…?なら、そういうことにしとくか」


七海のポジティブさに救われ、優の罪悪感は消えていく。


「やっぱ、七海は明るいな」

「そう?でもまぁ、それは幸せだからかな」

「幸せだったら明るくなるのか?」

「うん!そうだよ」

「なら、最近の俺は明るいか?」

「そ、それはどうかな…」


この質問は訊くまでもなく答えがわかりきっているのだが、少しイタズラしたくなってしまってつい七海に訊いてしまう。


案の定七海は誤魔化すように目線を逸らし、この話題を終わらせようとしている。


だが優のイタズラ心がそれを許すはずもなく、追い打ちをかけるように口を開いた。


「ま、普通に考えて明るくなってるに決まってるか。だって俺、今世界一幸せだし」

「……っ!!」


七海は真下を向いて悶え、優はそれを微笑ましい目で見つめた。


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