19 定番のやつなんだが
優は集合場所に目掛けて歩く。
集合時間の20分前なのでまだ七海は来ていないだろうと思っていた。
しかし、集合場所から100m程離れたところからでもわかるぐらいの気高き美少女が見えてくる。
その少女はとても綺麗で、1人で居ればすぐにナンパされそうな…
(あれ?ナンパされてね?)
少しずつ近づくうちに七海が3人のチャラそうな男と話しているのが見えてきた。
七海はゴミを見るような目をして男達を追い払おうとするが、厄介でなかなか離れないようだ。
逃げようと振り向いても回り込まれる。
これは、かなり面倒そうだ。
(流石に助けるべきか)
仲の良い幼馴染が困っているのであれば助けるのは当然。
そう考え、優は七海の元へ駆け出した。
かなり近づくと、七海と男達の会話が聞こえてきた。
「いいでしょ?ちょっとだけだからさ〜」
「そうそう、ホントに一瞬で終わるからさ〜」
「本当に、消えてくれませんか?人を待っているので」
「いやいや〜そんな人より絶対俺らと遊んだ方が楽しいって〜」
(これはかなり厄介だな)
これは七海1人ではどうにも出来そうにない。
七海もそのような考えに至ったのだろう。
本当に困り果てた表情をしている。
そんな七海を優はすぐさま助けるべく、男達と七海の間に割って入った。
「あの〜俺はこの人と用があるので〜」
「あ゛?んだよお前?」
「えーっと、ただのおさなn」
「恋人です」
「「「「え?」」」」
なんとこの場にいる4人の男が同じ反応をしてしまう。
優は単純に恋人だと嘘をつかれたことの驚き。
それ以外の男3人はバレバレの嘘をついた七海への衝撃。
「ぷはははw、そんな嘘バレバレだってw」
「そんな嘘が通ると思ってんの?w」
「そうだよw君の彼氏がこんなんだったら面白すぎるってw」
(あ、その発言は流石に…)
後ろからとんでもない殺気が伝わってくる。
紛れもなく七海からの殺気だ。
優を馬鹿にされて七海が怒らないわけがない。
七海は今にも人を殺してしまいそうな目で男達を凝視する。
「ねぇ?いい加減にしてよ。あなた達。いくら彼女が出来ないからって他人の悪口なんて言わないでくれる?」
「は?急に何言ってんだ?」
「あなた達、優くんを馬鹿にしたね?」
「なんだコイツ、頭おかしくなったのか?」
明らかに先程とは態度が変わった七海に男達は疑問を覚えつつ、絡むのを諦めない。
「なあもう良いだろ?さっさと来いや。じゃあな、彼氏くん笑」
そう言って1人の男が七海の右手首を掴んだ。
そして優の腹を殴った。
その時だった。
七海の左手の握り拳が男の顔面に飛んでいった。
だが、それが男に当たることはなかった。
その拳は優が右手で掴んだからだ。
その行動に七海は驚いた様子で、目をポカンとさせていた。
「優くん、どうして」
「七海の手は汚させたくない。だから俺がどうにかするよ」
直後七海の手首を掴んでいる男の顔面にとんでもない一撃が。
その男は衝撃でふらふらと後方に下がって行った。
「は?今、何が…」
攻撃を受けた男は何が起こったか理解していないようだ。
それほどまでに、優の一撃は速くて重かった。
その一撃を加えた優の顔は、七海が今までで見たことないぐらいの怒った表情をしていた。
(優くん…)
助けてくれた優にドキドキしているのと同時に、見たことのない怒りの表情に少し恐怖も覚えていた。
そんな七海の事は無視して、男達は優に襲いかかる。
「お前、よくも!」
「死んどけや!」
そう言って優に襲いかかるが、その場は僅か1秒で制圧される。
1人の青年に倒される屈強な男達。
この様子を見ていた周りの人々は驚きを隠しきれずに優を恐怖の目で見つめるが、そんな事は気にせずに七海を連れて目的地に向かう。
「じゃ、行くか」
「う、うん…そうだね」
七海は優の腕にしがみ付き、目的地へ歩いて行く。




