186 完全に濡れ衣なんだが
優と別れた後、七海は家に入りソファにドスンと腰を下ろした。
虚空を見上げ、今日の出来事を思い出した。
(ああ…幸せだなぁ…)
心は幸福感で満たされていて、とても心地が良い。
「♩〜♩〜♡」
七海はつい鼻歌を歌いながらルンルンと身体を左右に揺らしてしまう。
でも仕方ないだろう。
今日ようやく夢が叶ったのだから。
「ふふふ…これから一緒に何しようかな〜♡」
しばらくの間これからやりたいことを考えながら家中をスキップした後、その調子のまま風呂に入った。
しばらくノリノリのままお湯に浸かっていると、七海はふと優と別れる前の出来事を思い出した。
「それじゃあ、また連絡するねっ」
「ああ」
「あっ、今日…」
「ん?」
「と、泊まって……や、やっぱり何でもないっ!!」
七海はあの時即座に誤魔化してしまったことを少し後悔していた。
(あの時、そのまま誘っていたら…来てくれたのかな…)
付き合っているのだし、多分来てくれる…と信じたい。
「う、うんっ!きっと来てくれるよね!もう一緒に寝たことをあるんだしっ!」
そう!だからきっと誘ったら来てくれる!
……………
で、どうするの?
来てもらって、一体何をするの?
「まずは普通に映画見たりゲームしたりしてゴロゴロして…お腹空いたら一緒にご飯食べて…その次は…」
お風呂……?
一緒に……?
(え、えぇ〜〜っ!!一緒にお風呂…⁉︎)
別に一緒に入る必要はなたんだけどね。
七海がそんなことに気づくはずもなく、さらに想像を膨らませた。
「さ、流石にタオルを巻いて入るけど…それでも恥ずかしいよぉ…」
でも、いつかは。
将来結婚した時は、タオルもないまま入ることになるのかな…?
もし、そうなったのだとしたら。
そんなことを考えると、自然と身体中が熱くなって。
「〜〜っ!!!!」
七海は温かいお湯の中で悶える。
(も、もし裸でお風呂に入ることになったとして…優くんは、どんな反応をするのかな…)
ガン見してくるかな?
恥ずかしくて目を逸らすかな?
それとも……
「〜〜っ!!!!!」
七海は自爆し、またしても全身が熱くなる。
流石にお湯に浸かったままだと暑いので浴槽から出て椅子に座った。
そして頭を冷やすために冷たい水で髪を入念に洗った。
少し頭が冷えたところで、次は身体だ。
普段ならすぐに洗い始めるが、七海は1度立ち止まって自分の身体を鏡で確認した。
(へ、変なところとかないよね…?普通、普通だよね…?)
七海は自分が普通のスタイルだと心の中で豪語する。
だがそこで前に璃々に言われたことを思い出した。
「七海ちゃんの身体、破壊力がすごいよね…。特にその胸…!もう小惑星だよそれ…!」
ちょっと何を言っているか理解できなかったが、何となく褒められていることはわかった。
「私が彼氏だったら毎日揉みしだいてるし、そのまま襲っちゃうだろうなー。あ、今ちょっと揉んでもいい?」
と、璃々は言っていた。
(じゃ、じゃあ優くんは…)
七海はその記憶を頼りに一緒に風呂に入った時の優の行動を想像した。
服を脱いだところからジロジロ見られて、一緒に浴槽に入ると後ろから手が伸びてきて、そして……
「ゆ、優くんのえっちーーっ!!!!」
七海は反射的に両手で身体を隠し、何もしていない優に罵声を浴びせた。
「ヘックションッ!!」
「風邪かー?」
「今日は肌寒かったからね〜」
「先風呂入るわ」
優は謎のくしゃみをし、身体を震えさせながら風呂に入った。




