182 告白
「あ、あの時の…?」
遊園地デートの帰り際、突然七海に質問を投げかけられる。
「そう、あの時。アレは、結構ドキドキしちゃったなー」
七海は少し顔を赤くしながら笑いかけてくるが、優にその表情を見る余裕はなかった。
(あの時ってもしかして絶対あの時だよな…!!!)
優の脳内には観覧車での出来事が思い浮かぶ。
(クソッ__!流石にあれ掘り返されたら死んじまうってぇぇぇ!!!)
優は冷静でいられなくなり、目線があちこちを泳いだ。
「優くん…?」
どうやら七海に気づかれたらしく、こちらに疑問符が飛んでくる。
「ん、ん?どどどうしたのかね???」
「なにその口調っ、ふふふ」
「い、いやぁ〜何でも…」
「で、どうしたの?さっきから目が合わないけど」
「いやぁ…特に深い理由は…」
「そうなの…?まぁ、何もないならいいんだけど…」
とりあえず誤魔化すことには成功したが、何もない宣言したので目を合わせないわけにはいかず。
(クッ…!そんな温かい目で俺を見ないでくれ…ッ!)
七海は先程の話の続きを嬉しそうに始めた。
「やっぱり、ああいう雰囲気だと思ってること全部話しちゃうね。私、結構危なかったんだよ?」
「ん?」
ここで何かおかしな点に気づいた。
(七海が危なかった…?七海は特に何かをしようとしてた風には見えなかったけど…)
そう、観覧車に乗っている時の七海は緊張してこそいたが、割といつも通りのように見えた。
なのに結構危なかったとはどういうことだろうか。
(おかしい。何かがおかしい)
どこか、すれ違いがある気がする。
「なぁ七海。その話って…いつの話…?」
最悪自爆しかねない質問を、この時の優は平然と投げかけた。
そして七海はおかしそうに笑った後、細かく説明をしてくれた。
「それはもちろん、お化け屋敷の時の話だよ?もしかして、他の話だと思ってた?」
「いっ、いや…それだと思ってましたよ?」
「ふふっ、なんで敬語?」
また七海に笑われたが、それはどうでもいい。
(あっぶねぇ耐えたぁ…!てかその話かよややこしいな!!)
体内の寒気が消え、徐々に七海の体温を感じるまでに回復していった。
「七海の手…あったかいな…」
自然と繋がれていた手から七海の体温が伝わってきて、優は心臓を跳ねさせる。
「そ、そう…かな?えへへ…ドキドキしてるから…かな…?」
七海は指先まで真っ赤になり、恥ずかしそうに目を逸らした。
それを見て、優は七海よりも心臓の鼓動が早くなる。
(何だよ可愛すぎるなもぉぉ!!)
少しオーバーヒート気味の脳であることを考える。
(もしかして、今…か?)
今なら、告白できるのではないか?
優の脳はそのように考えた。
タイミングは、いいと思う。
雰囲気も、多分いい感じ。
(今なら…いや、今しかない!)
優は覚悟を決め、勇気を振り絞って口を開く。
「なあ七海」
「なに…?」
「好きだ」
「ふぇ…?」
七海は理解が追いつかないかのような声を上げるが、構わず続ける。
「俺は、七海の優しくて綺麗で温かい笑顔が、大好きだ」
「え、あ…」
七海は驚いた表情のまま両手で口を覆っている。
だがやはりそのことも気にせず、ただ話し続ける。
「俺は何度も七海に助けられた。でも、それだけじゃダメなんだ。俺も、七海のことを助けたい。七海の1番近くで、ともに人生を歩みたい」
そして、ついに自分の気持ちを全て吐き出した。
「桜庭七海さん。俺と、付き合ってください」
優はドキドキしながら、しかし落ち着いた状態で左手を差し出した。




