18 デートにはしたくないんだが
『ねぇ優くん』
『ん?なに?』
家でゆっくりしていると突如七海から連絡が届いた。
『今度の日曜日、ショッピングデートしない?』
七海からの唐突なデートのお誘いに、優は戸惑う。
うーんどう返すべきだろうか。
正直、ショッピングについて行くのは良いのだが、デートはちょっと。
そんな感じでどう返信するか迷う。
(まあ暇だしいいか)
そう考えながら優はスマホに指を伸ばす。
『いいよ。でもデートはなしで』
そう返信して数秒した後、七海からえっ⁉︎という感じで驚いているスタンプが返ってきた。
(本命はやっぱデートだったか)
結構予想通りだった。
きっと七海は悲しそうな顔をしているんだろうなぁ。
そう思いながら優は更に追い打ちをかける。
『えっ⁉︎じゃなくて、普通に遊びに行くだけな』
『……うん( ; ; )』
悲しそうな顔文字を付けて返信してきた。
そんな顔をされてもデートはしない。
あくまで幼馴染と遊ぶだけ。
『じゃあまた明日ね』
『ああ、また明日』
別に毎日会ってるからわざわざ連絡してくる必要もないだろうに。
恐らく誰にもバレたくないからしているのだろうが。
特に有咲に。
そんなことを考えながら優はスマホを閉じた。
◇
そしてデーt…じゃなくてショッピング当日。
優はいつもより早めに起きる。
それは準備をする為だ。
普段はあまり準備に時間をかけていないが、休日や遊びに行く時は割と時間をかけて準備をする。
まずは起きてすぐに着替えてランニングに行く。
これは別に休みだからする訳ではなく、優の日課である。
毎日欠かさずしている為、優はかなり体力がついている。
20分ほどランニングした後、シャワーを浴びに浴室へ向かう。
ここでしっかり汗を流す。
これも日課である。
シャワーを終え、リビングに向かい、牛乳を一杯。
これが美味しいのなんの。
その後は朝食を摂り、その他の準備を進めていく。
服を決め、髪型を整える。
ここまですれば、完全にデートに行く人である。
だが、優はいつもこれぐらいはしている。
なので有咲からもあまり疑われることはない。
というか、別にデートに行くわけでもないし、特にやましいことも無いのだが。
靴を履き、いよいよ家を出る。
その時、後ろから淑やかな声が聞こえてくる。
「お兄さん、今日は何処かに遊びに行かれるのですか?」
「ああ、ちょっと友達とな」
「そうですか、ならお気をつけて。あまり遅くならないようにお願いしますね」
「ああ、じゃあ行ってきます」
そう言って家を出ようとしたその時だった。
有咲が寂しそうな目でこちらを見つめている。
そして気付けば有咲の両手が広げられ、優に抱きついていた。
「え、どしたの?」
「お兄さん、できるだけ早めにお帰り頂けると嬉しいです」
ちょうど耳元から少し小さく霞んだ声が聞こえてくる。
「そうだな…できるだけ早めに帰ってくるよ」
そう言うと有咲は優の胸に埋めていた顔を上げて嬉しそうな顔をして喜ぶ。
「本当ですか!」
「ああ、頑張るよ」
「ありがとございます!」
嬉しそうに抱きつく力を強めてくる。
そして数秒した後、ゆっくりと離れて笑って優を見送った。
「それではいってらっしゃいませ、お兄さん」
「ああ、行ってきます」
有咲に手を振りながら扉を開け、優は目的地に向けて足を進めた。




