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179 タイミング


2人はあれから様々なアトラクションを回った。


少しずつ上空まで上がって一気に下に落ちるやつだったり、近未来的な映像を楽しめるアトラクションだったり。


2人は笑顔で、しかしたまに顔を赤く染めながらも遊園地を満喫していた。


そしてドキドキハラハラと過ごした時間も終わりが近づいてきていた。


日が落ち始め、少しずつ空が赤く染まり始めた。


時間的には次が最後。


(ゆう)七海(ななみ)に何に乗りたいか問う。


七海は迷わず答えた。


「…観覧車…乗りたい」


七海は少し言葉に詰まりながらそう答えた。


どこか緊張してそうな、そんな雰囲気を漂わせている。


「そっか。なら、行くか」


そこには少し疑問を抱くが、優は気にせず乗り場に向かった。



(ここからどうすれば…)


七海はそのような気持ちを胸に抱えたまま列に並んだ。


待ち時間の間、七海は思考をフル回転させる。


(ど、どうせ告白するなら…夕日が綺麗に見える観覧車の頂上とか…)


そう、七海は今日告白すると決めている。


だがタイミングがよく掴めず、今に至る。


でも問題はない。


なぜならこの前読んだ本に『告白は夕方から夜にかけてするべし!』と書いてあったから。


そしてまた別の本には『遊園地のおすすめ告白スポット第1位:観覧車!!』とも書いてあった。


…でも本来ならもう少し早めに告白してそこからラブラブのデートが始まる予定だった。


つまり、七海は強がっているだけである……!


(さ、最初からここでするつもりだったから…大丈夫…!)


何も大丈夫ではないが、とりあえず意を決することができたのでよしとする。


だがやはり緊張は収まらない。


こんな状態では告白などできるはずもない。


(とりあえず…一旦深呼吸)


七海は大きく息を吸い、大きく吐き出す。


その瞬間に心臓の鼓動が収まるのを感じ、胸を撫で下ろした。


(よしっ、今の状態なら…!)


多分、問題なく告白ができる。


多分、ね。


七海は待ち時間で緊張してしまわないよう、スマホで時間を潰した。


そして体感で30時間が経った頃にようやく順番が回ってきた。


「じゃ、行くか」

「う、うん…」


優に差し出された手を取り、七海は優の対面側に座った。


「はは、なんか緊張するな」

「そ、そうだね…」


優はそう言って笑いかけてくる。


ああ、なんて映える笑顔なんだろうか。


七海は直感的にそのような感想を抱き、またしても緊張し始めた。


だがそんな七海に構わず観覧車は少しずつ進んで行く。


やがて遊園地全体が見えるぐらいの高さまで来て、優は嬉しそうに外を眺め始めた。


「おっ、あれさっき乗ったやつじゃん。あれは…何だあれ?変な形だなぁ」

「そ、そうだね…」


優はいつも通りの調子で外を眺めている。


だが七海は観覧車が頂上に近づくにつれて緊張が高まっていた。


(あ、あぁ…私を何か言わないとっ…!)


少し雑な考えのまま、七海は言葉を絞り出した。


「ゆ、夕日…綺麗だね…」

「ああ、そうだな」


あれ、この言葉じゃまるで…


(「君の方が綺麗だよ」って言われるの待ちみたいじゃないぃ!!!)


実際、多分七海はその言葉を待っている。


自分の1番好きな人にその言葉を言われることがどれだけ幸せなのか。


それは恋愛経験のない七海でもわかる。


ああ、今すぐその言葉を言ってくれないか。


その言葉が頭をよぎった時だった。


「でも、七海の方が綺麗だよ」


正面から、そのような言葉が聞こえてきた。


聞き間違えるはずがない。


今、間違いなく優が綺麗だと、そう言った。


「え…」


七海は反応もできず口を押さえて固まった。


だが優は構わず続けた。


「なあ七海。俺は、七海のことが__」

【【ピロン♩】】

「あ、え?」


タイミングよく、2人のスマホから通知音が鳴った。


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