171 どうすればいいの⁉︎
今朝はいつもよりも早めに目が覚めた。
元々早めに起きるつもりだったけど、それよりも早く起きれた。
それはすなわち、今日が運命の日だと自覚しているということ。
「よしっ!」
私は両手で頬を叩いて気合を入れ、まずはシャワーを浴びた。
特に深い理由はないけど、全身をくまなく洗い込んだ。
特に深い理由はない。
私は1時間ほどのシャワーから上がり、しっかりと朝食をとった。
そしてそこから戦闘が始まった。
まずはお化粧から。
以前もデートの時はナチュラルメイクをしていたけど、今回はいつもより気合を入れたい。
それで(俺のために頑張ってくれたんだな…)とか考えてくれたら万々歳。
実際私は優くんのためにしか化粧をしないのだから、そういった感情を抱いてほしい。
優くんそういった素振りを見せたことがないから、今回こそはということでとても気合が入っている。
私はいつもよりわかりやすめに、けれども主張しすぎないような絶妙なメイクを試みる。
だがそれは至難の業で、なかなかうまくできない。
結局お化粧にかなり時間を取られてしまい、私は焦るように服を選んだ。
本当は昨晩に決めるつもりだったけど、2つまで絞ってからまったく進まず、結局当日に決めようということになった。
私は昨日の自分を呪いながら2通りの衣装を鏡の前で眺めた。
「こっちだと少し気合が入りすぎかな…?いやでもこっちは逆に気合いが足りないような…」
結局昨晩と同じような悩み方をする。
これでは埒があかないと思い、ふと思いついた方法で服を選ぶことにした。
「確か優くんの反応が良かったのは…」
私は過去のデートでどの服にどのような反応を示してくれたかを思い出しながら慎重に吟味していった。
「あの時のデートは清楚系の服で…確かよく似合ってるって…。で、その次のデータは綺麗系の服で…綺麗でよく似合ってるって言ってて…」
あれ?思い出してみると…
「優くん、私の服全部褒めてくれてる…?」
確かいつも優くんと合流してからいつも気分が良くなっていた。
それはもしかして服を褒めてくれていたから?
いや、もしかしなくてもそうだ。
私はそのことに気づくと恥ずかしさと嬉しさが込み上げてくると同時に、さらに悩みが深くなるのを感じた。
「どうやって服決めたらいいのぉぉぉ〜〜っ!!!」
結局作戦は失敗し、服選びは振り出しに戻った。
私は絶望し、一旦服選びから逃げた。
気持ちを切り替えて、今度は髪型。
この長い髪をどう活かすか。
本当は昨晩に決めるつもりだったけど(以下略。
「はぁ…はぁ…全然決まらない…っ」
全く支度が進まず、私は絶望の淵に浸っていた。
そんな時だった。
彼女から連絡が来たのは。
『お困りですかっ!』
まさかのタイミングで璃々ちゃんから連絡が来て、私はハッとした。
「璃々ちゃんに訊けば…!」
その手があったかと思い、早速連絡をした。
『うん、実はね…』
私はことの経緯を説明し、助言を要請した。
そして璃々ちゃんから帰ってきた言葉は…
『うんっ!どっちでもいいと思う!』
ん?
助言を要請したはずなんだけどなぁ…。
人の話聞いてなかったのかな?
いや文面なんだからそれはないか。
私はすぐに理由を訊くと、予想外の答えが返ってきた。
『如月くんは可愛い七海ちゃんなら何でもいいんだと思う!あ、何でもいいって言ったらちょっと言い方が悪いかな?』
璃々ちゃんは1人で会話を始めた。
『まぁつまり、七海ちゃんが如月くんのために頑張って準備しましたよっていうのが伝わればいいってこと!だと思うっ!』
あまりにも勢い任せの発言だが十分的を射ていたので、私はその意見を参考にしてみることにした。
璃々ちゃんに感謝を伝えた後、早速取り掛かった。
私は鏡の前で2通りの衣装を眺めた。
「……あれ?結局どっちにすればいいんだっけ…?」
よくよく考えてみれば問題は全然解決していなかった……!
「ど、どうすればいいのぉぉぉぉ!!!」
私の悲痛な叫びは誰にも届かず、結局約束の時間に遅刻する羽目になった。




