17 流石に低すぎるんだが
「よっすおはー」
「あ、おはー」
優の元へ来たのは友人である聖澤泰明。
入学してから1ヶ月が経った頃、たまたま体育でチームになり、あまりクラスに馴染めていない者同士共に頑張ろうということで友人となった。
それともう1人、この真っ暗な空間を照らすイケメンが。
「2人とも、おはよう」
そう言って現れたのはクラスの中心人物の一条柊太。
顔も良くて性格もいい。
噂では既に10回ぐらい告白されているとか。
全て断ったらしいが。
ちなみに有咲はその3倍以上告白されている。
なお、聞いた話によると、「私にはお兄さんがいるので」とか言って全て断っているらしい。
うん、何言ってんの?
兄を理由に告白を断るな。
何人かはこんなヤツを理由にフラれたのかと思っているだろう。
まあ目立たないようにしているのだから、そう思われるのは本望なのだが。
そんなわけで良い感じの学校生活を送っている。
実は最近はこの3人で集まって話すのが最高に楽しい。
なんでかって?
七海から逃げれるから。
この3人と話している時は七海が基本絡んでこないので、優にとっては良い逃げ場となっている。
「テストはどうだった?」
「俺は真ん中ぐらいだったな」
「柊太はドウダッタンダ?」
「泰明、自分のを言えよ」
「俺のはいいから、柊太はどうだったか知りたいんだ」
まるで自分の事を口にしない泰明に対して柊太は少し呆れてしまう。
「泰明、低かったなら素直にいいな?」
「そうだぞ、カスあき」
「誰が生ゴミ以下の人外だ⁉︎」
「誰も言ってねぇよ⁉︎」
「確かに合ってるけども」
「柊太サン⁉︎」
笑顔で怖い事を言ってくる。
コイツ、ナチュラルに煽ってくるタイプだ。
優と泰明は同時にそのような考えに至り、イケメンの恐ろしさを実感した。
「で、ホントはどうだったの?」
「………位…」
「はい?」
「………下位…」
「嫌だから何だって」
「最下位だよ!悪いか⁉︎」
「「……………は?」」
理解が追いつかなかった。
流石にここまで頭が悪いとは思ってもみなかった。
「えっっと…その…飯…食いに行くか?」
「そうだね……お、奢るよ」
「気ぃ遣わなくて良いから…ぐすん…」
2人の可哀想な生き物を見る目が泰明の心に突き刺さる。
ただ、この高校の最下位でも、他校なら割と上位なので、さほど頭が悪い訳ではない。
なので今まで勉強で下位になった事はなかったので、余計に落ち込んでいるようだ。
「まあ泣くなよ。お前まだギリ人間なんだしさ」
「そうだよ。君はまだギリ人間………なの?」
「いやそんなわけないやろがーい」
「あはははは」
「いや2人とも煽りエグないすか?」
2人揃って腹黒のようだ。
煽り慣れてやがる、コイツら。
「で、泰明は退学するとして」
「しねぇよ⁉︎」
「そうなの?そっかー」
「それは悲しi…嬉しいなー」
「うん、心の声漏れてる」
こうやって3人でテキトーに話すのが優にとってはとても楽しく、良い逃げ場となっている。
ちなみに何で柊太と泰明と話すのを許されているのかというと……それは長くなるからやめておこう。
端的に言うと七海は束縛しすぎだと有咲や七海の友達から言われたのでしょうがなくこの2人ならということで許しを得ている。
人と話すのに許しなんているの?という感じだが、七海はそれほどまでに束縛をしてくるタイプなのだ。
そんな七海と毎日ちゃんと面と向かって(?)接している優は実は気遣いのできる男だったり。
そんな感じで優と柊太と泰明の友情は生まれたのだった。




