168 やっぱり
終業式が終わり、私は何をするか迷っていた。
優くんは友達と遊びに行くらしく、仲良く一緒に話していた。
(もし…私が…)
あんな風に、一緒にデートに行けたら。
そんなことを想像するけど、それはなかなか叶わない。
そもそも最近はデートに誘ってすらいない。
理由は単純に恥ずかしいから。
前まではそんな感情は湧かなかったけど、最近はどうにも気恥ずかしくて連絡ができていない。
(たまには、優くんからも…)
そんな期待を胸に、私は普通に家に帰った。
昼食を終え、部屋の掃除をしてからソファでゴロゴロとスマホで猫の動画を見ていた時、突然一件の連絡がやってきた。
『来週の日曜日って暇か?』
好きな人物からの突然の連絡に、私は心臓のドキドキが止まらなかった。
『暇だよっ!』
気づけば指がそう返事をしていた。
次は、一体どのような言葉が返ってくるのだろうか。
(デートのお誘い…とか…?)
つい、そう期待してしまう。
でもわかっている。
彼がデートに誘ってくるはずがないと。
でももし、本当にデートの誘いだったら…。
私の脳は期待で満たされる。
そんなことをしているうちに、向こうから返信があった。
『じゃあどこか遊びに行かないか?』
私はその文字を見て思い切り固まってしまう。
(え?どういうこと?遊び?ってことは、デートではない…?いやでも…)
わかってる。
優くんが、デートに誘うつもりでこのようなメッセージを送ってきたのではないと。
それでも、それでも、私は期待してしまう。
(もし、デートのお誘いだったら…)
そうであるのなら、私は今にも死んでしまいそうなぐらい全身が熱くなるだろう。
いや、もうそれに賭けたい。
そうであってくれないと、私は死んでしまう。
どのみち死んでしまう運命。
なら、少しでも幸せな方に賭けてみたい。
私は大勝負に出る気持ちでスマホに文字を入力した。
『いいよ』
いつもより冷静で、ローテンションな感じの返信をしてみる。
こちらは真剣だと、アピールするためだ。
その気持ちが伝わったのか伝わってないのか、それから優くんの連絡はなかった。
私は夕食を食べ終えて風呂に入った後、速攻でベッドにインした。
そしてもう1度優くんとのトークの内容を見てみた。
「ふふっ…へへ…」
顔のニヤ付きが収まらない。
でも仕方ないでしょう?
本当に遊びなのか、デートなのかはわからないけど、とにかく春休みに2人で遊ぶ約束ができたのだから。
「楽しみだなぁ」
私はトーク画面を見てはドキドキして枕に顔を埋め、またトーク画面を見るといった無意味なことを繰り返した。
でもそんな無意味なことを数時間してしまうぐらいには、嬉しかったのだ。
……………
数時間っ⁉︎
「も、もうこんな時間っ⁉︎」
ふと時計を見てみた時にとてつもない時間が経っていることに気づき、急いで寝る支度を済ませた。
そしてスマホを封印してからまたベッドに入り、目を瞑った。
その暗闇には、優との思い出が映し出された。
幼稚園、小学生、そして高校に入ってからの思い出。
どれもかけがえのないもので、どれも私の人生を変えてくれたもの。
(ありがとう、優くん)
気づけば感謝の言葉を心の中で呟いていた。
でもそんなことをしてしまうぐらいには、優くんに助けられてきた。
(もし、叶うなら…)
今度は私も、そばで優くんのことを支えたい。
1番近くであなたの全てを私のものにしたい。
ああ、やっぱり私は…
(優くんのことが好き)




