166 照れてるんだが
ファミレスで食事を終えた後、優と柊太と泰明は少しばかり話をしていた。
「で、例の子はいけそうなのか?」
「ん…まぁ…」
例の子とは、泰明がバレンタインにチョコをもらい、今現在いい感じになっている人のことである。
泰明はこの話になると照れくさそうに頭をかきながらキョロキョロと色んな方向に目が動く。
そんな泰明に柊太はやれやれといった目を向けた後、話題を変えてこちらに質問を投げかけてきた。
「まぁそれはいいとして。優の方はどうなの?」
「どうって?」
「桜庭さんの話だよ。キスくらいはした?」
「いやまず付き合ってないわ」
「あれ?そうだったんだ…。てっきりもう付き合っているものかと…」
「このくだり何回やるんだよ」
今までもこのような会話が何回か繰り広げられたので、優は少しめんどくさそうな表情を浮かべる。
「ごめんごめん。で、本当は?」
「何が?」
「何って、そりゃぁ__」
「好きなんだろ⁉︎桜庭さんのことが!!」
「え…は…?」
今までそんな話を2人にしたことはない。
なのになぜバレているのか。
それが分からず、優は頭の上に?を浮かべる。
そんな優に2人は呆れたかのように笑いかけた。
「はは、とぼけなくていいよ。わかってるから」
「ったくよぉ。相談のひとつでもしてくれてもいいだろぉ?」
2人にそのようなことを言われるが、優はまだ理解が追いついておらず、ポカンと2人の席の向こうにある窓の景色を眺めていた。
「あれ。もしかして、何でバレてるの?って思ってる?」
「もしかしてバレてないとでも思ってたのか?お前、滅茶苦茶わかりやすいぞ…」
一体どういった部分がわかりやすかったのだろうか。
優は驚いた表情のままそのようなことを考えていた。
「ま、マジか…?」
「マジマジ。なんか、桜橋さんを見る時だけ目の色が変わってるんだよな」
「そうそう。明らかに他の人と対応が違ってるよね」
(そ、そんなことになってたのか…?全然気づかなかった…)
好きだと気づいてからも普段と変わらぬように接してきたつもりだった。
少しキョドる部分もあっただろうが、大方誤魔化せていたと思っていた。
でも、現実はそうではないらしい。
少なくとも、目の前にいる2人にはバレてしまっている。
ということは、クラスメイトにバレている可能性もあり、七海にバレている可能性も…。
優は途端に顔が熱くなるのを感じ、サッと顔を伏せた。
「あ、照れてやんの」
「まぁ仕方ないよ。好きな人の話になったら照れるのは当然だよ。泰明だってさっき照れてたじゃん」
「て、照れてねぇし…」
「顔赤いよ」
泰明は赤くなっている顔を隠すように下を向き、頭を振って一旦冷静になった後、柊太に復讐をすべく悪そうな顔で口を開いた。
「オメェだって紗倉さんの話出されたら照れるだろぉがよぉ⁉︎」
「それは…」
「ふっ、やっぱり同類じゃねぇか」
「…」
「あれなんか負けた気がする」
柊太に「でも泰明は彼女いないでしょ」といった目を向けられ、敗北感を味わった。
そしてようやく顔の温度が下がった優が、泰明を挑発するように話し始めた。
「お前は敗北者なんだよ泰明」
「まだフラれてもねぇよ⁉︎というか、優は同類だろ!!」
「そうだっけ」
3人は知らなかった。
これから、壮絶な相談会が始まることを。




