164 乙女すぎるよっ!
こんにちは。
紗倉璃々です。
今日は七海ちゃんに呼ばれて家にお邪魔しています。
広くて綺麗なリビングに案内され、私はソファの上に腰掛けました。
そして、5時間目あたりから妙に調子の悪そうな七海ちゃんに質問を投げかけます。
「何かあったの?」
私がそう訊くと、七海ちゃんは暗い表情をしながら私の正面に座りました。
「実は…」
七海ちゃんは自分の気持ちを正直に話してくれました。
「なるほど…。つまり、如月くんを他の子に取られるんじゃないかって不安になっていると…」
「うん…」
これは、なかなか心にきてますね。
今までだって他の子に取られる可能性のある場面なんていくらでもあったけど、いつも気にする様子すら見せなかったのに。
そんな七海ちゃんがその事を気にするなんて、一体何があったのでしょうか。
私はそれについて尋ねてみました。
そして返ってきたのは、衝撃的な言葉でした。
「最近、優くんのことがますます好きになってきて…本当に、早く付き合いたいなって思うようになって…」
なるほど。
想像の700倍乙女だった。
何この可愛い生き物。
さっさと幸せになりやがれ。
というか、如月くんは本当に男の子なの?
こんなに可愛い子を目の前にして、全く暴走する気配がないなんて。
私だったらもう何回か襲って__
「璃々ちゃん…?」
「ん__っ⁉︎ど、どうかした⁉︎」
「いや、別に…」
気づけば変な顔になっていたようで、私は七海ちゃんに少し引かれました。
その恥ずかしさを誤魔化すように、先程の七海ちゃんの言葉への質問をしてみます。
「さ、最近如月くんのことをさらに好きになってきた理由って、もしかして…」
「うん、そう…」
「やっぱり…」
実は最近、如月くんの雰囲気が変わってきたのです。
バレンタインを過ぎたあたりから、身だしなみを整えるようになり、表情もどこか自信のありそうなものに変わっていました。
いや、変わったというか、これが彼の本来の姿なのだと、七海ちゃんの反応を見て分かりました。
でも、どうして急に?
何か、心境の変化でもあったのでしょうか。
そう、例えば…
「恋…かな…」
「恋…?」
「うん、間違いなく恋だよっ」
前にもこんな話をした気がしますが、私は何度でもそう言います。
ですが、今の七海ちゃんにはそれが棘になってしまっているようで、七海ちゃんは露骨に顔を伏せて肩を縮ませました。
「やっぱり…他の可愛い子のことを…」
「それはないよっ!!」
私は勢いよく、自信ありげに否定します。
いや、私は確信を得て、七海ちゃんの言葉を否定しました。
「如月くんが他の子に恋するわけないよっ!!」
「ど、どうしてそう思うの?」
七海ちゃんは嬉しそうに、けれどもどこか不安を包み込んだ表情でそう問いかけてきました。
そして私は少し微笑みながら真実を話しました。
「だって、如月くんの目が、ね。七海ちゃんは気づいてないかもしれないけど、如月くんずっと七海ちゃんのことを目で追いかけてるよ?」
「え…」
七海ちゃんは驚いて目を見開いたまま顔を赤くしますが、私は構わず続けます。
「でも七海ちゃんと話している時だけ目が不自然に動いたりしてて、あれはもう照れてるだけにしか見えないよ」
「そう、なんだ…」
「だから、如月くんが他の子のことを好きになるなんてありえないよ」
「そうだよね…うん、そうだよねっ!」
私と七海ちゃんは両手を合わせてキャッキャと飛び跳ねて喜びました。
この2人の運命は、どうなるのでしょうか。
その答えは、私には分かりません。
私はただ、2人が結ばれて幸せになることを祈ります。




