161 どうでもいいんだが
3月14日、ホワイトデー当日。
優は戦場に出る気持ちで学校に向かった。
だがそれを悟られぬよう、常に精神を統一しながら歩いていた。
しかしそれは完全に悪手で、かえっていつもと違うことがバレてしまった。
「優くん、どうかしたの?」
「いや別に」
「そう?どことなく落ち着きがない気がしたんだけど」
「そうか?今滅茶苦茶落ち着いてるだろ」
「そうだけど…」
何とか七海を騙すことに成功して内心安堵していると、有咲反対方向から小さな声で話しかけてきた。
「(私にはわかりますよ。お兄さんが鞄の中にあるそれをいつ渡すのか迷っていることが)」
ん?
何で鞄の中にあれが入っていることを知ってるんだ?
いや、これは鎌をかけてきただけか?
考えてもどちらかは分からず、優はしっかりだんまりを決め込んだ。
黙った時点で図星ということはバレバレなので、有咲は七海に悟られないようにクスクスと笑っていた。
それから数分後に学校に着き、優はいつものように教室の扉を開けた。
そして扉の近くにいた柊太と泰明に挨拶を__
「優、ちょっと来てくれ」
「は、え__?」
いつもより明らかに暗い表情の2人に拉致され、人気の少ない階段まで連れて行かれた。
そこで2人の悩みが打ち明けられた。
「アレって、いつ渡せばいいの?」
2人の悩みは昨日買ったお返しをいつ渡すべきかというものだった。
うん、クソどうでもいい。
(別にいつでもいいだろ…)
といった本心を正直に口にすることなど出来るはずもなく、優は適当にそれっぽいことを言っておいた。
「まぁ、早めに渡した方がいいんじゃないか?そうじゃないと相手もお返しがもらえなくて不安になるかもしれないし」
「「なるほど…」」
流石歴戦の猛者!といった感じの尊敬の目を向けられるが、何も嬉しくない。
ちなみに優自身は昼休みというそこまで早くない時間に渡そうとしているので、平気で尊敬に値しない人物だったりするのだが。
それはともかく、これで一件落着。
この程度で解決するなら相談してこないでほしい。
なんて微塵も思ってないが、とりあえず今日は話しかけてこないでほしい。
なんて思ってた矢先、泰明が不安そうに震え始めた。
「あぁ〜怖すぎる怖すぎる失敗したら俺の人生終わりだ…」
「いや流石に人生は終わらないでしょ」
「いやでもなぁ…優は__」
「ドウニカナルヨ」
「真剣に答えてくれよぉ!」
明らかにめんどくさそうに回答をする優に何度か助けを求めるが、良さげな言葉は返ってこなかった。
帰ってこなかったというか、返せなかったと言った方が正しい気がする。
この2人昨日から恋愛経験が豊富だから色々教えて欲しいムーブをかましてきているのだが、優に恋愛経験など一切ないのだ。
何で恋愛経験豊富と思われているのかは考えないとして、優は昨日から適当にそれっぽいことを言っているだけなのだ。
だから、失敗しても責任なんて取らないよ?
なんて考えていたりする。
だが柊太と泰明がそんな思考に気づくはずもなく、しっかり優の言葉の言いなりになっていた。
結局2人は次の休み時間にお返しを渡すことができ、そして上手くいったらしい。
「流石だな!!」などと言ったお褒めの言葉を預かったが、全然たまたまなのでそんなに嬉しくなかった。
そんなこんなあり、とうとう4時間目の授業が終わり、昼休みがやってきた。
(次は、俺の番か)
勇気を振り絞り、七海のもとに向かった。




