160 忘れてたんだが
時は進み、本日は3月13日。
優はいつも通り学校を終えた後、柊太と泰明とともにショッピングモールに訪れていた。
そこで3人は何をしているのかというと…
「で、結局お返しは何にすべきなんだ?」
そう、バレンタインのお返しを探していたのだ。
ホワイトデー前日ということもありあらゆる店でホワイトデー向けの商品が並べられていて、泰明はどれにすべきか悩んでいた。
そして残りの2人も恋愛経験が浅いため、頭を抱えながら歩いていた。
「やべぇ全然わかんねぇ…」
「種類が多すぎてね…」
ホワイトデーに何を返すべきか。
それは男が抱える永遠の課題なのだ。
これに関しては完全に相手によるので、何が正解かは分からない。
「もう安直にチョコをお返ししたらいいんじゃねぇか?」
泰明がそう言った。
だが、それはあまりにも安直すぎた。
「それだと今以上の進展は無さそうだけどね…」
柊太がスマホで調べ物をしながらそう言い、泰明は頭を抱えながら崩れ落ちた。
「何でだよぉぉぉぉ!!!」
「今までと同じ関係を保とうって意味があるらしいよ」
「じゃあ友達以上の関係になりたい場合は向かないのか」
「じゃあ俺には意味ねぇってことじゃねぇか!!!」
泰明は初めて女子からチョコをもらった。
その女子とは時々連絡をとっており、話していくうちに好きになったらしい。
クソどうでもいi………いいことだと思う。
とうとう泰明にも春がきたかと優と柊太は騒いだのだが、優は自分に春が来ていないことに気づいて人知れず絶望していたのは置いておいて。
今は頑張って自分のためにチョコを作ってくれた人のためにも、最高の品物を返したい。
そこで一瞬手作りでもしようかという話になったのだが、何せ3人とも料理経験は皆無なため、断念したのだ。
3人はこの後もしばらくショッピングモールを周り、結局ある品物にたどり着いた。
「マカロン…か…」
柊太のスマホ情報によると、マカロンはホワイトデーのお返しランキングでもかなり上位で、尚且つ七海へのお返しとして最適だと思い、優は速攻飛びついた。
「速っ」
「全く見えなかった…」
「お会計3980円になりまーす」
「もう会計してるし!」
「いい買い物だったな」
「いや勝手に終わらさないでくれる?」
自分の買い物が終わり完全に満足した優は帰る気満々で2人のもとに行くが、当然2人の買い物にも付き合わされた。
2人が何を買ったのかは…興味ないからどうでもいいか。
とりあえず、さっさと帰りたい。
日が完全に落ち、外が真っ暗になってから優は家に着いた。
リビングに入ると、最近忙しくてこの時間にはほとんど見かけなかった優希に別室まで連れて行かれ、コソコソと話し始めた。
「もしかして、もう買っちゃったか?」
「ああ、さっきな」
「マジかよぉ…」
どうやら優希はホワイトデーのお返しの品を買えていないらしく、今から買いに行こうとしていたようだった。
「クソォ…急がねぇとな…」
「父さんは誰にもらったんだ?」
「お母さんと有咲にな」
「ふーん」
会社でもモテているらしいのでそちらの人からも貰っているのかと思ったが、そんなことはないらしい。
まぁこの人は妻一筋なので断っているのかもしれないが。
「で、お前は?」
「俺は七海だけ…」
…………じゃなくね⁉︎
「あっ__」
「ははっ、お前、忘れてただろ」
「いやそんなことは…」
「今なら連れてって__」
「お願いします」
「速いな…」
そういえば有咲と奈々からも貰っていたのをてっきり忘れていたので結局もう一度ショッピングモールに行くハメになった。




