16 変な所で共鳴しないでほしいんだが
高校最初のテストが終わり、全てのテストが返却された。
そして校内の掲示板に順位が貼り出される。
教師が順位表を貼り出した後、生徒達の歓声と悲鳴が上がる。
「よっしゃ、25位!」
「嘘でしょ…真ん中より下なんて…」
麗英高校の1学年の生徒数は約200人。
それに対して志願者数は2000人超え。
この学校にいる生徒は熾烈な受験戦争を勝ち抜いた猛者だ。
そんな秀才達が全力で戦うとなると、当然ハイレベルな戦いになる。
それを勝ち抜いた生徒は、喜びの雄叫びをしていたり。
逆に敗北した生徒などは普通に大差をつけられて下位となっている。
その生徒達からはとんでもないほどの悲鳴が聞こえてくる。
何人か発狂してるな、これ。
そんな天国と地獄のようなこの状況の中、2人の少女が顔を合わせて睨み合っている。
「ふーん、同率1位なんだね」
「そのようですね。まあ全教科満点なのですから当然ですが」
学年一の美少女達が掲示板の前でとんでもない会話をしている。
その後ろには気まずそうに目を逸らしている男子生徒が。
「いやースゴイッスネー2人とも」
拍手をしながら褒め称える。
それを見て美少女2人は呆れたように男子生徒を見る。
「もう、もしかして、目立ちたくないからとかで点数を調整したの?」
「い、いやーソンナコトハナイデスケドネ?」
「棒読みになってるよ、優くん。せっかく私の彼氏の凄さをアピールするチャンスだったのに」
七海が少し拗ねたような表情をしている。
優は手を抜いていたので実力が露見することは無かった。
その事に七海は拗ねてしまったようだ。
さらに隣の少女も拗ねてしまっているようで、優の服の裾を掴んで話しかけてくる。
「お兄さん、テストは真剣に受けないとですよ?」
「は…はい…」
「このテストはお兄さんの将来を決める大事な試験なのですからね?」
「はい…その通りです…」
「(まあ私がお兄さんを一生養って差し上げてもよいのですけどね)」
なんか小声で聞こえてきたな。
七海は聞こえていないようだし、聞かなかったことにしよう。
「ま…まぁこれから頑張ろかなぁーって思ってて……」
「それでも、優くんが優秀じゃないって思われるのは嫌なの…」
七海が暗い顔をしている。
それほどまでに、誤解されたままなのは嫌なのだろう。
だが、優はそれを望んでいる。
その心の葛藤が、何とも言い表せない表情を作り出している。
そんな七海を見て、妹の有咲は共感の意を示す。
「気持ちはとてもわかります。これほど素晴らしいお兄さんの実力を見誤られたままなんて、私には耐えられません」
「そうだよね!」
「はい!」
そう言って2人で手を握り合ってぴょんぴょん跳ねている。
(う〜ん、なんか話がマズイ方向に行っているような…)
優の考えは現実となる。
「ということで!今からお兄さんの素晴らしさを学校中に広めに行きましょうか!」
「うん!」
「チョット何しようとしてんですか⁉︎」
今にも走り出して行きそうな2人の手を握り、しっかりと引っ張る。
「何で止めるの⁉︎」
「なぜ止めるのですか⁉︎」
「いや普通に止めるだろこの状況⁉︎」
優が力強く静止するとそれに2人は敗北し、悲しそうにこちらを見てくる。
「そんな目で見てもダメだ。流石に恥ずかしすぎる」
「なぜですか…恥ずかしがる事ではないですよ…」
「そうだよ…私達はただ優くんの素晴らしさを知ってもらおうと思って…」
「そんなの知って貰わなくていいから⁉︎」
こうして3人で楽しそう(?)に会話をしていると、周りからの視線も集まってくる。
うん、いつものやつ。
「あー、えーっと、とりあえず、帰るか」
いつもの逃げの一手。
優は2人のことを放っておいて1人で目にも止まらない速さで帰って行った。
その光景を見ていた2人は、優を呼び止めるように叫ぶが、その声は届かなかった。




