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15 絆が生まれてしまったんだが


「おー上手いな七海(ななみ)

「ありがとう、次は君だよ」


1日目のテストが終了した後、(ゆう)と七海は2人でカラオケに来ている。


まずは七海が歌い、部屋の中に美声が響き渡った。

その声に魅了され、優の気持ちは少し高ぶっている。


なので優も気合を入れて歌う。

曲が流れ始め、数秒してから歌い出す。


全日本を席巻した歌声が、カラオケの小さな部屋に響く。


その圧巻の歌声に七海は心を奪われる。


(凄い、昔よりずっと…)


優は今でも歌が好きで、よくカラオケで歌っている。


天賦の才に努力を組み合わせると、当然最強になるわけで。


この歌声を聴いて心を奪われない人はいない。


そう思ってしまうほどに、優の声は美しかった。

気付けば1曲が終わっていた。

4分ほどあったはずの曲は、体感で10秒程度で終わってしまう。


「お疲れ様、優くん。凄いね、やっぱり」

「そうか?喉を慣らすためにちょっと軽めに歌ったんだけどな」

「え、そうなんだ…」


優の衝撃的な発言に七海は普通に引いてしまう。


まだ本気ではないのに完全に魅了されてしまった。


それほどまでに、優の歌声は素晴らしかった。


「すごいね優くん…私もがんばろ」

「まぁ七海ならすぐ上手くなるよ」

「ふふ…ありがと」


そんな風に2人で暖かく楽しい時間を過ごしていた。


その時だった。


突如勢いよく開けられる扉。


そこに現れた影は見覚えのあるもので。


服を着ていてもわかるスタイルの良さ、綺麗で真っ直ぐな長い髪、小柄ながら気品のある佇まい。

そんな人物、1人しかいない。


「お兄さん?どうして七海さんと2人でここへ?」


そう、有咲(ありさ)である。


有咲がとんでもないほどの目力でこちらを見ている。

それに対抗するように七海が立ち上がり、有咲の元に迫って行く。


「有咲ちゃんどうしたの?こんなところまで来て」

「いえ、ただ私ののお兄さんに変な虫がついていないか確認しようと思いまして」

「そうなんだ。でも良かったね、変な虫がついてなくて」


そう言う七海に鬼のような目を向け、鬼のような力強さで七海に迫る。


「いえ、案の定ウジ虫がついていましたね」

「ちなみに誰がウジ虫なの?」

「も〜やだな〜1人しかいないじゃないですか〜」

「えーっと、2人ともやめときましょ?」

「優くんは黙ってて!」

「ハイ!」


そう言って敬礼をしてから部屋の隅に逃げる。

優が部屋の隅に行ったことを確認し、有咲は更に攻撃を続ける。


「大体貴女はなぜ付き合ってもいないのにお兄さんに付き纏うのですか?」

「それは優くんが告白してくれたから!」

「いやしてないn」

「それはあくまでおままごとの話でしょう?なぜそれをいつまでも引きずるのですか?そうやってこじつけてお兄さんとお近づきになろうという算段なのですか?」

「そ、そんなことないもん!」


七海は少し声を荒げ、ながら対抗する。


「では、貴女はお兄さんのことを愛しているのですか?」

「愛って……」

「愛してもいないのにお兄さんと付き合おうとしているのですか?」


有咲が真剣な表情で七海を見つめている。

七海の本心を確かめるように。

それに応えるように七海も真剣な眼差しで有咲を見て口を開く。


「愛…してる。私は、優くんのことを愛してる。」

「それは本心ですか?」

「うん…これが私の紛れもない本心」


拳を握り、胸に拳を当てて答える。


その姿はまるで1つの決心をした人間のようだ。


実際、七海はここで決心したのだろう。

七海の表情は雲一つない青空のように明るくなっている。


「そうですか、それならいいんです。これからもお兄さんと話す権利を授けましょう」


真剣な顔を笑顔に変えて手を差し出す。


その手を握り、七海は答える。


「ありがとう、七海ちゃん」


そうやって2人の絆は生まれた。


そして優はある意味絶望していた。


(あれこれ前よりもっと絡んでくるんじゃね?)


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