145 疲れが溜まってるよ!!
あれから幾度の戦いを乗り越えて、璃々はとうとうチョコを完成させることができた。
璃々は喜びのあまり飛び跳ねて思い切り両手を掲げる。
「やったーっ!!これで喜んでもらえるよ!!」
着地した後、ハイテンションのまま2人に礼を言う。
「2人ともありがとうっ!!1人じゃ絶対に作れなかったよ!」
「友達…ですから…当然…ですよ…」
璃々にチョコの作り方を一から百まで教えていた有咲は疲弊しきった様子でソファに飛び込む。
そしてその横にさらに疲労が蓄積している人物が倒れ込む。
「喜んでもらえるといいね…」
顔をソファに埋めたまま腕を高く上げてサムズアップする七海。
そしてソファに突っ込んだきりビクともしない有咲。
それに気づかずはしゃぐ料理センス破壊系女子。
七海の部屋はそんなシュールな状況となっているが、それに気づく人物はいないまま休日を爆滅された2人が口を開き出す。
「…ねぇ」
「…はい?」
「ちょっと仮眠とってもいいかな…?」
「はい。実は私もそうしようと思ってしまして…」
「そっか。なら、一緒に寝よー」
「わかりましたっ」
2人は立ち上がり、璃々に一休みすることを伝えてから七海の部屋に向かった。
「お〜綺麗なお部屋ですね」
「そうかな?」
「はい。何というか、女の子っぽい部屋ですね」
七海の部屋はかなり整理整頓されており、さらに可愛いものが沢山飾られていて、女子のお手本のような部屋だった。
だが女子っぽい部屋なら、有咲も負けていない。
「でも、有咲ちゃんの部屋もすっごく綺麗で可愛かったよ?」
有咲の部屋は七海程ではないがしっかり片付いていたし、可愛いぬいぐるみなんかも沢山あって可愛らしい部屋となっている。
以前有咲が熱を出してお見舞いに行った時の部屋の光景を思い出しながら有咲に話すと、嬉しそうに笑ってくれた。
「ふふふ…ありがとうございます」
有咲は部屋の中を探索するようにぐるぐると回っている。
2週目に入った時、急に有咲の足が止まったので七海はそちらの方を見てみる。
「この写真って…」
有咲の視線の先には七海が引っ越す直前に撮った幼馴染3人の写真が飾られてある。
その写真に近づき、有咲は懐かしそうに語り始めた。
「確かこの写真は…お兄さんと七海さんが泣きながら駄々をこねて最後の思い出にって撮った写真ですよね?」
「ん?1番泣いてたの有咲ちゃんでしょ?」
「そんなのは記憶にありません」
「いや、この写真も有咲ちゃんだけ涙拭いきれてないし…」
全く泣いていないし駄々をこねていないことを主張する有咲に事実を叩きつける。
確かによく見れば、有咲だけ目元に光沢が見える。
なぜか有咲だけ目の下が極端に赤いので、誰が1番わがままを言っていたかは火を見るよりも明らかだ。
それにも関わらず有咲はシラを切り通すつもりらしく、斜め上を見ながら知らないふりをしている。
そんな子供らしい対応に七海は可愛いなと思い、そのまま彼女の誤魔化しに乗ることにする。
「あ!そういえばこの時は私がいっぱい泣いちゃってそれで仕方なく写真を撮ることになったんだよねっ!そうだよねっ!!」
「あ、はい!その通りです」
そんな事実は存在しない…こともなくはないが、有咲が誤魔化し切れていると思っているのでまぁ良しとする。
七海は先にベッドに横たわり、すぐ隣に有咲を誘う。
「失礼しますね」
有咲はゆっくりと布団の中に入り、お互いを見つめ合うような体制をとる。
「少し…照れますね」
「うん、そうだね…」
2人は苦笑いを浮かべ、ちょっとだけ女子会を開いた後に自然と眠りに着いた。




