142 チョコ選びっ!!
いよいよ冬も終盤、2月が訪れた。
まだ気温が低く、ハーっと息を吹けば白い煙が見えるぐらいの寒さの日、七海の家では重大な作戦会議がなされていた。
「いよいよ来たね、この時期が」
「そうだね。最高のものを作らないと…」
本日招待された璃々は七海の正面に座っており、やる気に満ちた表情で会議に臨んでいる。
そういえば何の会議をしているのかって?
当然、バレンタインの話だ。
七海は優にチョコをプレゼントするつもりで、これから試作でもしようかと考えていた時に璃々に相談を受けたので一緒に作ることになった。
これから共に戦いに挑むので、まずは諸々の確認をしておく。
「プレゼントするのは一条くんだよね?」
「うん、そうだけど…」
至極当然かのように言われて少し気に触るがとりあえずは質問に答える。
「お〜熱いねぇ。あ、味の好みとかは知ってる?」
「うん。確か甘すぎるものは苦手で、どちらかと言えば苦いチョコの方が好きなんだって」
「なるほど…ならあのチョコを溶かして…」
普段からお菓子作りに挑戦している七海はボソボソと何かを言いながら考え事をする。
「よしっ!じゃあ早速試作品を作ろっか!」
まずは買い出しということで、2人は家を出て近くのスーパーに向かった。
七海はすぐにチョコが並んでいるコーナーに向かい、どれが良いか吟味している。
正直よく違いがわからない璃々がその姿を眺めていると、少し離れたところに見覚えのある人影が見え、それがこちらに向かってきているのを認識した。
「ねぇねぇ七海ちゃん。あの人って…」
「ん?…あれ?有咲ちゃん⁉︎」
たまたま買い物に来ていた有咲と居合わせ、全員驚いた表情となる。
「七海さんに…紗倉さん…でしょうか?」
「あ、うん、そうだよー」
全く話したことのない人物に、有咲は頭を下げて挨拶をする。
「初めまして。いつもお兄さんと七海さんがお世話になってます」
直接話したことは無いが、優や七海から話で聞いたことのある人物だったのでとりあえず礼を言ってみると、璃々は慌てて頭を上げるように言ってくる。
「いやいや、お世話になってるのはこっちだよっ!2人とはいつも仲良くしてもらってて…」
「そうなんですね。ありがとうございます」
有咲のさりげない笑顔に、璃々は心臓がトクンと跳ねるのを感じた。
(あれ?何だろうこの感じ…よく分からないけど、男子が好きになるのも分かるなぁ…)
有咲の純粋な美しさに、そのような考えを持つ。
(いやいや、女の子同士なのに何でそんな事分かってるの⁉︎私が好きなのは柊太くんで…うぅぅっ!!)
有咲は勝手に自爆した璃々に怪訝そうな目を向けるが、肩に手を置かれたことでそちらに目線が飛ぶ。
「これ、いつものことだから気にしないで」
「あ、はぁ…」
有咲はちょっと何を言っているのか理解できていないが、今はとりあえず放っておく。
これから関わっていくと多分勝手に理解することになるだろうから。
「えと、とりあえず…一緒に買い物する?」
「はい、ぜひお願いします」
「よしっ!有咲ちゃんもバレンタインの買い出しだよね?」
「はい、そうです」
「なら、一緒にチョコ選びしよー。ほら、璃々ちゃんも選んで」
「…あっ!うんっ」
璃々は未だに顔を赤くして何かを考え込んでいたが、もう慣れた七海はほとんど気にすることなく買い物に集中する。
「そういえば、有咲ちゃんは誰にあげるの?」
「お兄さんですよ?」
「あ、そうなんだ…」
聞くまでもなかったが一応確認してみると、当然の事のように返されて七海は尊敬と呆れの気持ちが湧いてくる。
「七海さんはどなたに?」
「優くんだけど?」
「あ、そうですか…」
あれ、さっきまで呆れた表情してたのになんか同じことしてません?
そばにいた璃々はそんなことを考えながら2人の争いを観察していた。




