139 ぷにぷになんだが
見事ずる休みすることに成功した優は特に何かするわけでもなく、ずっと有咲の手を握っていた。
やはり手を握っていると有咲の寝顔は少し口角が上がた状態になる。
(守りたい、この笑顔)
切実にそう思い、優は有咲のほっぺをぷにぷにする。
するとさらに有咲の口角が上がり、とても喜んでいるように見えるので、優はずっとぷにぷにし続ける。
数分間じっくりぷにぷにしたところで有咲の目が開き、顔を赤くしながら起き上がる。
「おはよう」
「お、おはようございます…あの、さっきまで何を…?」
「ん?別に何も」
「その…私のほっぺを触っていませんでしたか…?」
「ん、まぁ、触ってたな」
「えと…何でですか…?」
よくよく考えれば目覚めるとほっぺをぷにぷにされていたなんてかなり辺な状況だ。
有咲が困惑して首を傾げるのも無理ない。
そんな有咲に優は小さく笑いながら問いに答える。
「普通に柔らかくて気持ちよかったから。あと触ったら有咲が嬉しそうにしてたから」
「え⁉︎」
有咲は赤くなっている顔を隠すように頬を押さえる。
「わ、私お兄さんにほっぺを触られて嬉しそうな寝顔をしていたのですか⁉︎」
「うん、結構ニマニマしてたな」
「うぅ…恥ずかしいです…」
「そんなに恥ずかしがることじゃないさ。俺は楽しかったし、有咲は嬉しかった。Win-Winじゃないか」
「そ、そうだとしてもぉ…」
優は有咲に追い打ちをかけているとも知らずに語り続ける。
「可愛かったしな、有咲の寝顔。だからそんなに恥ずかしがらなくても__」
「かかか可愛いかったんですか⁉︎私が⁉︎」
「ああ。ついずっと顔を触ってしまうぐらいにはな」
有咲は嬉しさと恥ずかしさが混ざり、顔全体を隠して悶えている。
優は普通に子供みたいで可愛いといった意味合いで言ったのだが、当然有咲は別の意味で解釈している。
「可愛いだなんてそんな…ダメですよ…私たちは兄妹何ですから…」
「何言ってんの…」
有咲は完全に照れてしまっていて、先程までのしんどさなど完全に吹き飛んでいる。
それ自体はいいのだが、後で熱が上がりそうなぐらい全身が赤くなっているので優はこの話を終わらせにかかる。
「ま、とりあえずせっかく起きたんなら飯でも食うか?七海の弁当一緒に食べようぜ」
「…そうですね…。ご飯食べましょうか…」
何とか話を逸らすことに成功するが、まだ有咲の顔は赤いままで、優の顔を直視できずにいる。
優はそんなことお構いなしに有咲の身体を支え、階段を降りていく。
「あら、有咲起きたのね〜。おはよ〜」
「おはようございます…」
「ん?顔が赤いわね…まだ結構熱があるのかしら…」
実際熱はあるのだろうが、多分今のこの赤さは全く関係ないもののせいだろう。
有咲は奈々に言われて熱を測ると、数時間前よりも熱が上がっていることに気づいた。
「あれ…どうして…」
「う〜ん、どうしましょう…とりあえず、食べれそうなものだけでもお腹の中に入れておきましょうか」
「そうですね…」
「じゃあ七海ちゃんお手製のお弁当持ってくるわね。優も食べる?」
「ああ」
奈々は弁当を取って食卓に持ってくる。
優と有咲は弁当が自分の目の前に届いた後、手を合わせてから弁当箱を開く。
「おお…これは…」
「ああ…これはかなり…」
2人は弁当の圧倒的なクオリティに驚愕した。




