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136 温かいんだが


その日の夜、(ゆう)奈々(なな)がリビングで晩飯を共にしていた。


「どう?食べられそう?」

「ああ、何とか…今なんか音した?」

「したわねぇ…有咲(ありさ)かしら」


突然2階から物音がし、2人は一瞬驚いた後に階段の方に向かって行った。


暗い階段を覗いてみると、そこにはフラフラと揺れながら頑張って階段を降りている有咲の姿があり、2人は慌てて介抱しにいく。


「ちょっ__危ないだろ?何か用があるならスマホかなんかで呼んでくれればいいのに」

「そうよ〜。何も1人で降りてくることないじゃない」


2人から少し叱られるが、有咲は折れることなく階段を下る。


何とか1階に降りることができ、2人にな支えられながらリビングに入ってこたつの付近で腰を下ろした。


そこに優と奈々も食事を持って寄って行き、有咲のすぐ隣にいた腰を下ろした。


「で、どうしたんだ?急に降りて来たりして」

「その…少し寂しくて…」


また悪い夢でも見たのか、有咲の顔は先程より若干赤くて薄暗くなっている。


「人肌が恋しくなったわけね〜。ほら、お母さんがぎゅーしてあげるわよ?」


有咲はそれに迷わず飛び込み、数十秒間じっくりとよしよしされる。


「調子はどうなの?」

「まだ…しんどいですけど、少しよくなりました」

「ならよかったわ〜。あ、勿論だけど、明日は学校お休みだからね」

「えっ__それはいやです…」


有咲は奈々の胸から顔を出し、嫌そうに目を見つめる。


だが奈々はそれに動じることなくしっかりと娘に言い聞かせる。


「だーめ。このままじゃ学校の子にも風邪うつしちゃうわよ?」

「う…そう、ですね…はい…休みます…」


有咲はしょんぼりしながら折れて明日も学校を休むことを決意した。


隣にいる優もそれに安心しながら奈々と交渉に出る。


「えっと…俺も学校休みた__」

「あなたは行きなさい」

「あっハイ」


クソ、無理だったか。


流れ的にいけると思ったんだけどなぁ。


まぁそんなおふざけは置いておいて、優は一旦熱を測ってみる。


一旦、念のため、ね?


数秒経つと音が鳴り、優は体温計を見てみる。


「37.4度…母さんこれなら流石に…」

「はぁ…仕方ないわねぇ。明日の朝の様子を見てからね」

「よっし…あ、頭イタイナー。あ、これ美味しい」


つい本音が出そうになって奈々に一瞬睨まれるが、何とか誤魔化して食事をすすめる。


その途中、奈々から離れた有咲は今度はこちらにやってきてもたれかかってくる。


「どうした?」

「いえ、その…今のうちにお兄さん成分を充電しておこうかと…」

「いやだから何だよそれ。別にいいけども」


謎の単語にツッコミを入れつつも、あっさりと有咲を受け入れる。


「あったかいです」

「そりゃ熱があるからな」

「そうじゃなくて…その…何と言いますか…」

「ははっ、分かってるよ言いたいことは。ほら、これでもっとあったまれるか?」

「はい、あったかいです…」


優は片腕で有咲を包み込み、そして少し体重も乗せる。


そうすると有咲は嬉しそうに笑いながら顔を赤くする。


いや、熱があるから顔は赤いんだけれども。


先程のどこか暗い表情は消え去り、今は家族の温かさに包まれて顔が赤くなっている。


それを見て優と奈々は安心し、微笑みながら箸を進める。


そのままあまり話さずに食事をしていると、気づけば有咲の目は閉じられていて、またしても2人は微笑んでしまう。


「ふふっ、あんなにしんどそうだったのに、すっごく幸せそうな顔で寝てるわね」

「ああ。この顔を俺たちは守っていかないとな」

「そうね〜。でも、優の幸せそうな顔も守らないとね〜」

「いやそんな顔をした覚えは…」

「今してるじゃない。妹に甘えられて、とっても嬉しそう」

「…そうなのか…」


ニヤニヤ笑いながら奈々に照れ隠しをするように横を向きながら心が温まるのを感じて、寒くて温かい夜を過ごした。


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