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132 頼りになるんだが


家に着くと奈々(なな)はまず有咲(ありさ)を連れて有咲の自室に向かった。


自分も体調が悪いことに気づいてきていた(ゆう)は、それでも手伝おうとするが奈々に止められたので諦めてパジャマに着替えてからリビングで体温を測っていた。


「38度か…」


一体どこからそんな熱が沸いてきたのだろうか。


ついさっきまで普通だったのに。


「人間の身体ってよくわかんねぇな…」


そんな愚痴を漏らしながらソファに腰掛けると、奈々が有咲の部屋から出てリビングにやってきた。


「優、調子はどう?」

「ん…ちょっとしんどいかな」

「熱は?」

「…37度」

「嘘つかないの。ホントは何度だったの?」

「38度…」

「まぁ⁉︎」


想像より優の状態が酷かったのか、奈々は慌てて至近距離までやってくる。


「あなたっ__い、今すぐベッドに行かないとっ!!」

「母さん落ち着いて。分かってるから」


焦りまくっている奈々とは対照的に、優は冷静であった。


「とりあえず、有咲のために色々してやってくれ。

俺は自分で何とかするから」


そう言って立ち上がり、薬を探しに行こうとした時に奈々から手首を掴まれる。


「ダメよ優。しんどい時はちゃんと親に甘えなさい。2人ともしんどいなら、私が2人とも面倒を見るわ。だから優は迷惑だなんて思わずに子供らしく甘えなさい」

「いや俺は子供じゃ__」

「いいえ子供です。れっきとした私の子供です」


いつものふんわりとした雰囲気とは相反して、今は真剣モードで話してくる。


奈々が本気の時は、いつもこんな感じになる。


大事なところで頼りになる、とても尊敬できる親だ。


そんな奈々の力が借りれるのなら、素直に甘えておいた方が良いのかもしれない。


それが、良い子供のあり方なのだと信じて。


「そう、だな…。じゃあ…お願いするよ。今日は…今日だけは…甘えさせてくれ」

「ふふふ。今日に限らず毎日甘えてくれてもいいのよ?」

「いや、それは遠慮しておく」


2人で少し笑った後、優は早速奈々に甘えてみる。


「じゃあその…一瞬だけ看病してくれないか…?」

「ふふふ。一瞬だけじゃなく、ずっとでもいいのよ?」

「いや、有咲の面倒も見てやってくれよ」

「そうね〜。まぁそこは何とか上手くやるわ〜」


そんな事を言いながら2人は優の部屋に向かった。


優は部屋に入ると速攻ベッドに横たわり、布団を被る。


「はい、おでこ見せて〜」

「……」

「ふふふ。冷えピタが嫌いなのはまだ直ってないのね〜」

「…うるせぇよ」


昔からこれだけは慣れない。


あのおでこに伝わってくる何とも言えない感触と冷たさが、昔から嫌いなのだ。


そもそも滅茶苦茶健康体なので直るタイミングもなかった。


その事を挑発されて少しムッとするが、あまり拗ねすぎるとまた奈々に子供っぽいとか言われそうなので黙って目を瞑っておく。


「おやすみなさい」

「おやすみ。有咲のこと頼んだ」

「ええ、任せてちょうだい。伊達に16年間あの子の母をやってたわけじゃないのよ?」


視界が真っ暗で分からないが、多分ドヤ顔をしている。


でも事実だからツッコまずに静かに言葉を発した。


「じゃあ安心だな」

「ふふふ…優もバッチリ看病してあげるから、期待しててね?」

「…じゃあ、そうするわ…」

「素直でいい子ね〜。いつもこうだったらいいのに」

「うるせぇよ…」

「ふふふ、すぐ拗ねちゃって可愛いんだから〜」


奈々はイタズラ心満載の笑顔を浮かべながら頬を突いてくる。


それを手で退けた後、少し口を尖らせて話した。


「そんなことはどうでもいいから、早く有咲のそばに行ってやってくれ。寂しがりやさんなんだから」

「そうだったわね〜。じゃあ、行ってくるわね。おやすみなさい」

「おやすみ」


奈々は一瞬優の頭を撫でた後、部屋から出て行った。


(ったく、騒がしい人だな…。有咲…大丈夫かな…)


優は目を瞑ったまま有咲のことを心配していた。


(でも、母さんがいれば大丈夫か)


奈々は病弱だった頃の有咲の看病をずっとしていた。


なら、多分大丈夫だろう。


優は有咲のことを奈々に託し、深い眠りについた。


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