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130 声が大きいんだが


「久しぶりだね」

「ああ、久しぶり」

「お久しぶりです」


冬休みはあっという間に終わり、今日から学校が始まる。


(ゆう)有咲(ありさ)は家を出た所にいた七海(ななみ)と挨拶を交わした後、冬休みの出来事について話しながら歩く。


「ははは…そんなことがあったのかぁ…って何でさっきからそんなにくっついてんの?」

「ん?優くん成分を補充するためだよ?」


七海は平気な顔をして腕に抱きついてきている。


色々当たっていて結構マズイ状況ではあるが、何とか平静を装う。


「最近会えなかったから補充しておかないと」

「いや何言って__」

「ずるいです。私も補充したいです」


そう言って有咲も腕に抱きついてきて、これで()()()()()()が完成した。


当然いつも通り周囲から辺な目で見られているが、なんだかそれすらも懐かしく感じる。


(そんなに離れてなかったはずなのにな)


七海が実家に居たのはせいぜい1週間程度なので懐かしさを感じるには短すぎる気がするが、それぐらい寂しかったのだと気づかされる。


「ふふ…今日は素直だね」

「そうか?もう諦めてるだけの可能性もあるんじゃないか?」

「いえ、それはないですね」

「根拠は?」

「女の勘です」

「あっそうですか」


有咲の発言に七海も首を縦に振って共感しており、優に味方はいなくなっていた。


いや、元からいないか。


まあとにかく無心で学校まで辿り着くことを目標に、少し早めに歩いて行く。


「あ、おはよう2人とも」

「おはよう紗倉(さくら)さん」

「おはよー恋する乙女ちゃん♡」

「ちょ__そんな呼び方しないでよ〜!」


七海があからさまに璃々(りり)をからかっていると、もう1人の主役がやってきた。


「ちょっとちょっと、ウチのフィアンセをいじめないでくれないかな?」

「おぉー熱々だなー」

「バカップルだね!」

「ちょ、ちょっとぉ…」

「で?年末年始はどうお過ごしで?」


照れて顔を赤くしている2人に訊くと、先に柊太が話し始めた。


「まぁ…特に何も…」

「なんで目を逸らす」

「いや、別に…」

「七海」

「うん、そうだね」


七海とアイコンタクトをし、これ以上追求しないことにした。


「まぁ、頑張れよ」

「何で急に応援してくるんだ?」

「じゃ、あとは熱々のお2人でー」

「あ、ちょ__なんか癪に障るな…」


柊太の胸の中にはなぜかモヤモヤが残っているが、それを晴らす前に優に逃げられたので解決しないまま席に着く。


「あはは…やっぱり恥ずかしいね…」


璃々が頬を赤く染めながら苦笑いしてくる。


「そうだね…。でも仕方ないさ。最初は茶化されるものだよ」

「そう、だよね…」

「まぁ俺も強力するかさ。何とか乗り切ろう」

「うん、そうだね。よしっ!頑張ろう!」


璃々はいつものテンションに戻り、柊太は胸を撫で下ろす。


その姿を、優と泰明(やすあき)は少し離れた所から眺めていた。


「クソッ…ウゼェ…」

「そんな悪を見るような目で見てやるなよ」

「いやだってよぉ!!あいつ女に興味ないみたいな感じで振る舞ってたんだぞ⁉︎なのにクリスマスにデートして【実は璃々…紗倉さんと付き合ったんだ…】って何だよ!クソ羨ましいな!!!」

「うるせえよ…」


心の叫びを耳元で放たれ、少し耳が痛くなる。


「俺だって…彼女ほちい…」

「そうだなぁ」

「お前は適当言ってられる側じゃねぇだ……死ね」

「…は?」


突然の殺害予告に流石に疑問が湧いてくる。


そんな事言われるようなことをしただろうか?


全く記憶にございません。


なので泰明に訳を訊いてみると、怒りを5倍増しにした感じで胸ぐらを掴まれる。


「お前にも居るじゃねぇか!!」

「いや何が?」

「女だよ女ぁぁ!!」

「いやいないが?」

「いるだろ!桜庭(さくらば)さんという世界一の美少女がよぉ!!!」


あ、ちょっと声が大き__


「(そう…だね…優くんには私がいるからね…)」

「え、あ、えと…」

「クソ羨ましいなぁ⁉︎どうやったらあんな可愛い娘を自分のモノにできるんだよ!!教えてくれ!!」

「いや声がでか__」

「へぇ冬休みから付き合いだしたんだ」

「やはり如月(きさらぎ)氏、彼女に手を出したか」

「絶対に殺してやる…」


うーん、なんかエグいこと言われてる気がする。


勘違いされている上に、あることないこと言われているような…。


(と、とりあえず誤解を…)


解こうとした時に始業のチャイムが鳴り、諦めて静かに着席した。


隣を見てみると、先程からずっと顔を伏せている七海の姿が。


(泰明のやつ…)


泰明のせいで、七海に何を話せばいいか分からなくなったじゃないか。


(クソ…どうすれば…)


頭を抱えて考えていると、1人の人物からざまあみろと言わんばかりの視線を向けられている気がし、そちらを見てみると、その瞬間に柊太が顔を逸らして机の中を漁り出した。


(よし、アイツは公開処刑してやろう)


そう心に誓いながら、優は誤解の解き方を考えていた。


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