127 青春なんだが
後日、七海は璃々をカフェに呼び出して、現在質問攻めをしている。
「で!いつ好きになったの?」
「それは…分からない…。でも、気づけば好きになってて…」
「おぉ〜!青春だねー!」
「そう?でもそれは七海ちゃんも当てはまるんじゃない?」
「え?」
青…春…?
特に記憶はない。
強いて言えば、優に出会えて、毎日一緒に過ごせていることぐらいだろうか。
でも、青春と呼ぶには足りない気がする。
やっぱり付き合ったりしないと、青春とは呼べない。
それが、七海の価値観だった。
でも周りから見れば当然…
「七海ちゃんも十分青春を謳歌していると思うよ?」
という意見となるわけだ。
でも自覚が全く無い七海は当然頭の上に?を浮かべてしまう。
「そうかな…?例えばどこが?」
「うーんそうだねぇ…」
璃々に説明を求めると、考える間もなく答えてくれる。
「例えば、如月くんと毎日登下校しているところとか?」
「それってそんなに青春かなぁ?」
「うんうん、全然青春だと思うよ」
璃々は知識が全然ない七海に少し呆れながら説明をする。
「年頃の男女が毎日一緒に登下校するなんて、普通なら付き合ってないとしないよ?」
「え?そう…なの…?」
「うん、普通はね」
ここで七海は気づいてしまう。
(私って…普通じゃない…?)
璃々の意見を聞いて、自分が普通の人より攻めすぎなのではないかと考え始めた。
「え、もしかして__」
「うん。隣で歩いている時に腕に抱きつくのも、結構な頻度でデートに誘うのも、まぁ普通ではないかな」
そこまで言うつもりはなかったんだけど、ある程度内容は的を射ていたので、急激に体温が上がってくる。
(えっあっ__えぇぇぇぇ⁉︎)
恥ずかしさで脳が回らなくなってきて、もう言葉も発せれなくなってくる。
そんな七海の心情を察したのか、璃々は身を乗り出して肩に手を置いてきた。
「でも大丈夫。それが七海ちゃんの強みだから。誰にでもできることじゃないよ」
励ましているつもりなのだろうが、七海の心にはズキズキと刺さっていた。
「如月くんも、あれだけアタックされたら意識しないわけにはいかないからね。多分、今は七海ちゃんしか眼中にないと思うよ」
「…ホント?」
「うん!本当だよ!」
ここで出そうになっていた涙がおさまり、顔を上げて明るい表情を作る。
「ならよかった…かな…?」
「うん!よかったよかった!」
なんか璃々の思うがままにされている気がするが、今はそんなことはどうでもいい。
(優くんが…私のことを…)
そう思うと、嬉しくてたまらない。
この感情は間違いなく愛なんだと、七海は思っている。
「……」
「…璃々ちゃん?どうかした?」
気づけば璃々に微笑ましいものを見る目で見られていて、少し不満を抱く。
「いや、なんというか…七海ちゃんも乙女なんだなって」
「…?…どういうこと?」
「いや、すごく嬉しそうにニヤニヤしてたから、可愛いなぁって思って」
「えっ__⁉︎」
璃々に指摘されるまで自分がどんな顔をしているかなど考えてなかったので、今になって恥ずかしさが込み上げてくる。
「わ、私そんな顔してたの??」
「うん。恋する乙女だったよ」
「うぅ〜…」
恥ずかしくてだんだん体温が上がっているのを感じる。
そんな七海を見て流石にからかいすぎたかと思った璃々は、今一度七海の肩に手を置いた。
「ごめんね。ちょっとからかいすぎちゃった」
「うぅ〜…」
七海は今も顔を下げて恥ずかしがっている。
そこで璃々は思った。
(七海ちゃんにこんな乙女な顔をさせるなんて…如月くん、罪な男だね…)
優は特に何もしていないのに勝手に璃々に悪者扱いされるのだった。




