124 予想通りの反応なんだが
結局あのままほとんど会話がないまま夕方を迎え、2人は如月家のみんなと合流するべく家を出た。
家を出てからもあまり会話はなく、優は気まずさを感じながら歩いていると、すぐに家に着いてしまった。
家の鍵を開け、七海を招き入れる。
リビングに入ると、家族は既に支度を終えていて、すぐに出るように促してくる。
「じゃあ行きましょうか」
「楽しみね〜」
今日は如月家のクリスマス恒例行事に七海が着いていく形なので、七海はどこか申し訳なさそうにしている。
そんな七海の心境を察したのか、有咲が幼馴染として隣にくっつきに行った。
「七海さん、もしかして遠慮してますか?」
「え、いや…そんな事はない…けど」
「あらそうなの〜?全然気にしなくていいのよ〜」
車に乗った後、助手席の方からかけられた奈々の言葉を聞いて安心したのか、七海の表情は明るいものに変わった。
「はい。じゃあ、今日は楽しみましょう!」
「「おお〜!」」
楽しそうに拳を突き上げている女子3人を優は温かい目で見守りながらぐったりと背もたれにもたれる。
20分程経った頃に目的地に着き、店の中に入って行く。
「おお〜…綺麗なお店だね…」
七海は思いの外豪勢な店に連れて来られ、つい口が開きっぱなしになってしまっている。
「ふふ…驚いちゃいました?ここ、結構予約が取れないお店なんですよ?」
「そうなんだ…」
やはりといった感じで頷き、七海はとうとう店に足を踏み入れた。
「予約の如月です」
「はい、如月様ですね。確認致します」
優希が先導し、店員さんに声をかける。
「確認取れました。ご案内いたします」
店員さんに案内された席は、窓際でイルミネーションが1番綺麗に見えると言っても過言ではないぐらい良い席だった。
これには流石に七海も驚きが隠しきれず、目を見開いたままポカンとした表情になってしまっている。
そんな七海に奈々はドヤ顔で近づいて行く。
「ふふふ…凄いでしょ〜この席。毎年この席でイルミネーションを見ながら食事しているのよ〜」
「ま、毎年__⁉︎」
今年はたまたまいい席が取れたのかと思いきや、なんと毎年恒例の事のようで、七海の驚きは更に大きくなる。
(どうやってこんないい席を毎年…しかもクリスマスイヴの夜だよ…?)
1年で1番席を取るのが難しいクリスマスイヴの夜に、特等席を毎年取っている。
その事実が、七海の困惑を大きくしていく。
気づけば七海がフラフラし出したので、流石に解説をしておく。
「この店は父さんの知り合いが経営しててさ、いつも世話になってるからって毎年特等席を用意してくれてるんだ」
優が説明するとようやく七海は現実世界に帰ってきて席に座った。
「そうなんだ…。優希さん、凄いんですね」
「いやぁそれほどでもないさ〜」
「めっちゃ嬉しそうじゃん」
「いや別に?全然嬉しくなんてないぞ?俺はどうしてもこの席をあなたにって言われてるから仕方なく座ってあげているだけであってだな」
「はいはい、嬉しかったんだな」
「素直じゃないわねぇ〜」
わざとらしく嬉しくないアピールをしているが、口角が滅茶苦茶上がっている為、この場の全員がすぐに喜んでいるのだと分かった。
自分が喜んでいるのがバレまくっているとも知らずに誤魔化しを施していると、早速一品目の料理がやってきた。
「おぉ…これは…」
七海は抑えていた食欲が爆発しそうになり、身体中がヒヤッとする。
それぐらい、とても魅力的な料理だった。
何とか衝動を抑えながら手を合わせる。
「「「「「いただきます」」」」」
全員が味わって食べ始める中、七海だけはハイペースで食べ始めた。
あまりの早さに他の皆んなに少し引かれてしまって恥ずかしい思いをしたのはまた後の話。




