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123 部屋の空気が悪いんだが


(なんか、気まずい…)


昼食を終えた後は七海(ななみ)の提案で映画を見ることとなり、現在絶賛視聴中なのだが、(ゆう)は居心地の悪さを感じていた。


原因は…


【絶対にお前のことは離さない。愛してるよ】

【ちょっ__ここではダメッんグゥ⁉︎】


この映画、結構そういう系のシーンが多かったのだ。


友達から「彼氏と一緒に見るといい感じになるよ〜」とか言われて今回提案してきたようなのだが、どうにも付き合ってもいない優たちにはかなりキツかったようだ。


というか、いい感じになるってそういう意味ね。


七海も多分そういう意味だとは思っていなかっただろう。


日本語って、難しいね。


間違ってはないけど、色々間違えてる。


そういった日本語の解釈の違いのせいで、今は2人とも一言も話すことなく映画を見ている。


いや、七海はもう途中からほぼ目を逸らしてしまっている。


この人、そういう話題には弱いから。


たまにチラチラ画面を見ては顔を赤くしながら目を逸らしたりを繰り返していて、七海も動揺しているのが手に取るようにわかる。


(気持ちは分からなくもないけど…流石に動揺しすぎでは?)


明らかにいつもより動きがキョロキョロしていて、いつも以上に心を揺さぶられているのが伝わってくる。


結局七海はそのままほとんど画面を見ないまま映画が終わってしまった。


映画が終わると部屋の中には気まずい空気が流れ、優はいたたまれなくなって少し席を外そうとする。


「ちょっとお茶を…って七海さん?」


七海に服の裾を軽く握られていて、その場から逃げられなくなっていた。


優は諦めて座り、七海の発言を待つ。


何かを言いたそうにしたまま10秒ぐらいたった頃に、重い口が開かれた。


「映画…どうだった?」

「ん、まぁ…そこそこ面白かった、と思う…」

「そうなんだ…」


やはり七海も恥ずかしがってしまっていて、もう一度部屋に沈黙が訪れる。


(何を話せばいいんだっ__!)


普通は映画の内容について話すのだろうが、そんな事をすればさらに気まずい空気が流れてしまいそうだ。


なので優は何を話すべきか悩んでいると、七海が先に口を開いた。


「よ、よし!ちょっとおやつタイムにしよっか!」


少し焦り気味に手を叩きながら七海はキッチンの方に去って行った。


そしておやつを探しながら七海は少し考え事をする。


(ああああんなにえっちなやつだったなんてっ…!優くんにこんな映画を勧めてくる変な娘だって思われちゃってるかもぉ…)


頭を抱えて露骨にガクンと頭を下げる。


そして、先ほどの映画のワンシーンを思い出す。


(愛してるって言った後に強引に深いキスして…そのまま押し倒して…んぅぅぅぅっ!!!)


七海の思考は完全にパンクしてしまい、フルスピードで回転したまま優のもとに戻って行く。


「ねぇ優くん…」

「ん?」

「優くんは結婚したら…さっきのみたいなこと…するの…?」

「…へ?」


どう答えるのが正解なのだろうか。


キモがられたくないのならNoと答えるべきだが、そうすれば七海は落胆する気がする。


でもYesと答えるとなんか変態っぽいよなぁ…。


そんな葛藤を抱えていると、七海が震えながら小さな声で話してくる。


「(私と結婚したら…ああいうえっちなことをしたいって…思う…?)」

「えっ__は?」


その顔でその発言は結構ヤバい。


優でなければ確実に色々勘違いされてしまうだろう。


そのぐらい、今の七海は様々な意味でヤバいのだ。


当然優の心も大変なことになっているのだが、かなり時間をかけて何とか制御して七海に話す。


「あの…その…まず前提がおかしいというか…な?物事には順序があるからな….。先の事は考えすぎないようにしようぜ」


我ながら悪くない回答な気がする。


優は心の中でドヤ顔をしているが、七海には違った意味で伝わっていた。


(じゃあ順番が来たらいずれは…ってこと…?)


完璧な答えを導き出したはずなのに、七海の頬は更に赤くなっていっていて、優は少し焦りを覚える。


(え?どっかでマズったか?)


何とか脳を回転させて考えるが、結局何も分からずまたしても沈黙が訪れたのだった。


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