12 デートではないんだが
紆余曲折しながらも、気付けばもうすぐ入学してから初めてのテストが控えていた。
そんな中、優七海の家で勉強を教えてもらう予定だ。
七海は一人暮らしをしていて、割と高級でセキュリティの良いマンションに住んでいる。
女子の部屋に入るのは初めてなので、流石に優も緊張している。
教えてもらったマンションに着くと、早速部屋番号を入力して呼び出す。
「あ、よう、七海」
「優くん!いらっしゃい!入って入って」
「あ、ハイ」
七海が何だかハイテンションのようだが、そこには触れないでおこう。
何となく理由は分かってるから。
優はエレベーターで七海の部屋のある階に向かう。
今日は休日ということもあり、いつもより身なりを整えている。
なのでエレベーターの鏡で髪型などをチェックする。
別にデートをするわけでもないのだから、こんなことをする必要はないのだが。
気付けば七海の部屋の階につき、エレベーターを出る。
そして七海の部屋の前に立ち、チャイムを鳴らす。
するととんでもない勢いで足音が迫って来る。
途中で一瞬こけたような?
どれだけ急いでんの、君。
直後七海は勢いのままに扉を開けてきた。
「優くん、いらっしゃい。さぁ中に入って」
「うっす、お邪魔しまーす」
どうにか嬉しさを隠してクールぶっているが、それに優は気付いている。
というか、服装とか髪型とかがもうデートの時に着るようなそれなのよ。
とても部屋着には見えないぐらいの気合いの入り具合だった。
(そのヒラヒラのスカート、絶対邪魔だろ)
流石に部屋では邪魔であろうに。
わざわざ今日の為にしっかり準備しているのがよく分かった。
部屋はきちんと整理整頓されていて、落ち着くいい匂いもしてくる。
(コイツもしかして…今日お家デートだと思ってる?)
というか、どうして七海と勉強することになったのか。
それは1週間ほど前の話。
「お兄さん、今日から一緒に勉強しませんか?」
突然有咲が帰り道で言い出した。
最近は七海も一緒に帰っているのでそれをしっかり聞いていてガッツリ絡んでくる。
「ん?優くんは私と勉強するんだよね?」
「え?勉強するなんて一言も言ってないんだけど…」
「じゃあ決定だね!今日から勉強しよっか」
「人の話聞いてた⁉︎」
まあそこから色々あり、結局ジャンケンで決める事となった。
七海は1勝7敗。
滅茶苦茶ジャンケンが弱かった。
まあそんなわけで今日が七海と勉強する日になったというわけだ。
まぁあんまり勉強する気にはならないが、とりあえず襲われないように頑張ろう。
七海に案内された場所に早速座り、勉強が始まる。
それから七海に勉強を教えてもらっているが、
「優くん、聞いてる?」
「あ…ああ…聞いていますとも」
全然話を聞いていない。
正直、勉強しなくても全部分かっている。
だって毎日勉強してるもん。
なので当然七海の話を聞く意味が無いわけだが。
とりあえず聞いてるフリだけはしておかないと機嫌を損ねるので適当に頷きながら時が経つのを待つ。
「よしっそろそろ休憩しよっか」
勉強開始から1時間ほど経った時に七海から告げられた言葉に優は露骨に喜び、思いっきり身体を伸ばす。
「ん〜っ、いやー勉強やだなー」
「そんなこと言わないの。というか、本来なら君は勉強しなくても高順位が取れるでしょ?」
「流石に買い被りすぎだろ。この学校じゃ厳しいだろ」
麗英高校では、毎年多くの難関大学合格者を輩出しているため、ノー勉で高順位を取るのは一般人には難しいだろう。
まあ、一般人にはの話だが。
「私はそんな事ないと思うけどなー。だって優くん、昔勉強凄く得意だったじゃん」
「そんな小学生の頃の話されてもな…」
流石幼馴染、よく知っている。
優は昔から勉強が得意で、実は授業を聞いていれば勉強しなくてもほぼ満点が取れる。
それを実行したことは一度も無いが。
まあとにかく、長い今日を乗り切ろう…




