119 幸せですぅ…
少し不穏な出来事もありましたが、今は家族仲良くテレビタイムです。
そう、家族仲良く、です。
「ふふふ…有咲ぁ〜」
現在私はお母さんに後ろから抱きしめられたまま頭を撫でられています。
なぜこうなったかは…まぁ察していただけると助かります。
今はそんな説明をしている余裕はありませんので。
なぜかって?
それは…心地がいいからですよ。
お母さんの愛情たっぷりの空間に包まれていて、私は今とても幸せな気分なのです。
なのでつい顔が緩んでしまいそうになるのですが、それは頑張って我慢しています。
「…」
「お兄さん?どうかしましたか?」
視線を感じてそちらを見てみると、お兄さんが何か微笑ましいものを見る顔でこちらを見つめていました。
一体なぜこのような目を向けられているのでしょうか。
私は理由をお兄さんに訊いてみました。
するとお兄さんは軽く笑った後に幸せそうに話し始めました。
「いや、有咲も母さんも幸せそうな顔をしてたからさ。なんかいいなぁって思って」
「あら、有咲も幸せなの?なら嬉しいわ〜」
あれ?もしかして顔に出てしまっていたのでしょうか。
頑張って我慢していたつもりだったのですが、お兄さんには見破られてしまっていました。
それは少し悔しいですが、私はお母さんとお兄さんに素直な気持ちを伝えます。
「はい。とても幸せです」
溢れんばかりの幸福を顔に浮かべながら私はお母さんに背中を預けるようにしてもたれかかりました。
するとお母さんはさらに頭をなでなでしてくれて…
あ、そこ気持ちいい…。
もっとしてぇ…。
………………
はっ!!
いけません。
つい意識が呑まれそうになってしまいました。
ですが何とか持ち堪え、私は強く意識を…
ふあぁ…幸せぇ…。
あったかぁい…。
お母さん大好きですぅ…。
………………
気持ちいいですぅ…。
……………………………………………
あれ、おかしいな。
有咲さん、意識を呑まれちゃってる。
でも、幸せそうだからいっか。
優は有咲の幸せでとろけきった顔を見て幸せを実感しながら視線をテレビに戻した。
一方その頃有咲はというと…。
(なんだか眠くなって来ました…)
あまりの気持ち良さに眠気が兆し始めていた。
未だに奈々は有咲の頭を撫で続けていて、有咲の脳内が幸せパワーでいっぱいになっている事も知らずに手から幸せパワーを送り続けている。
気づけば有咲は眠りについていて、この場にいる全員はテレビがひと段落ついた頃に気がついた。
「あれ、有咲寝ちゃってるじゃん」
「あら〜本当ね〜」
「ははは、凄く幸せそうな顔して眠ってるな」
「そうねぇ〜。本当に子供みたいね〜」
「子供みたいじゃなくて、子供だけどな」
3人は静かに笑いながら有咲の寝顔を見ている。
有咲は子供のような笑顔を浮かべたまま寝ていて、この場にいる全員がそれを見て癒されている。
「可愛いなぁホント。優とは大違いだ」
「は?それ、まるで俺が可愛げがないように聞こえるんだが?」
「そう言ったんだが?」
「何だとコラ!!!滅茶苦茶可愛げあるだろうが!!!」
突然親からディスられたのでわざとらしく怒ってみると、奈々が間に入って止めにかかってくる。
「コラ。ケンカはやめなさい。優希くん、君は少し言い過ぎです」
「はい」
「ウチの優はすごく可愛いんだから。流石の優希くんでも、そんな事言っちゃう人は許せないよ?」
「はい」
隣で奈々が説教を始め、優希は身体を小さくして反省の意を示しまくっている。
そんな時、すぐ横にいた優は顔を赤くして頭を掻いていた。
(いや可愛いとか言われたら反応に困るんだけど⁉︎)
未だに奈々は優の可愛さについて熱弁していて、優は段々体温が高くなっていくのを感じ、2人にバレないように逃走を謀った。
その行動はしっかりとバレて、今度はこちらが説教をくらったとか。
いずれにしろ、如月家の平和は奈々によって守られたのだった。




