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117 早く助けて欲しいんだが


有咲(ありさ)七海(ななみ)がデザートを食べ終えた後に、(ゆう)は会計を済ませて店を出た。


「ご馳走様。ありがとね優くん」

「美味しかったです。ありがとうございました」

「おお」


2人は同時に礼をしてきて、それを軽く受け入れた後に2人を連れて家に帰る。


有咲を家に連れて行った後に七海を家まで送っていく。


「今日は本当にありがとう。じゃあ、また来週ね」

「ああ、また来週」


七海の住むマンションの前で手を振り合って別れを告げる。


いよいよ本格的に寒くなってきた夜道を、考え事をしながら歩いて行く。


(まさか優勝するなんてなー)


優は今日の出来事を思い出しながらノロノロと歩いている。


テニス部員はほとんどいないチームだったので、正直良くて3位ぐらいだと思っていた。


でも蓋を開けてみれば案外他のチームもテニス部員は少なく、案外勝ち上がることができ、なんか優勝できてしまった。


特に本気を出した記憶はないのだが、何人かの敵が泣きながら退場する姿がチラリと見えた。


(…ちょっと…やりすぎたか?)


今思い返すと、結構ボコボコにしていたかもしれない。


1日目の昼休みの七海との試合で感覚が狂ったのかもしれない。


その事に反省しつつ、少し遠回りしながら帰って行く。


すると突然雪が降ってきて、優は自分の体を温めながら早歩きで帰って行く。


「さっぶ…。早く風呂入りてぇー」


白い息を漏らしながら暖かい家を目指す。


案外早く家に着き、すぐにリビングに入って温まる。


「おかえり〜。外寒かったでしょ〜?」


すぐに奈々(なな)が近くまでやってきて、温めるために抱きしめてきた。


「それは暑いって…よいしょ」


流石に気恥ずかしくて奈々をさりげなく引き離す。


すると悲しそうな顔をされるが、知らないふりをして真っ先に風呂場に向かった。


「あ、お風呂には…」


そんな奈々の言葉も聞かず、早足で風呂に向かった。


扉を開けて、脱衣所の中に入ろうとした時だった。


「え?」

「あへ?」


衝撃のあまり変な声が出てしまった。


「あ。いたのか⁉︎ごめん」

「いえ、大丈夫です…」


優はすぐに扉を閉めて出て行った。


脱衣所には風呂上がりで裸の有咲がいて、タオルの1枚も巻いていないすっぽんぽんな状態だった。


優にとっては何の感情も湧いてこないが、有咲にとっては違う。


優に裸を見られるということは、最愛の人に裸を見られるということになる。


つまり有咲はどうなっているのかというと…


(え、えぇぇぇぇ⁉︎わわわわ私おおおお兄さんには、裸、を…うぅ…)


膝をついて顔を両手で覆って身体を小さくしながら脳内で様々な思考が巡っていく。


(ああぁ…私…お嫁にいけません〜!!!)


頭の中で大声で叫びながら身悶える。


だがここで天才的なアイデアが思いつく。


(あれ?でもお兄さんに貰っていただければ…)


優と結婚式を挙げている妄想をしながら立ち上がる。


だがやはり恥ずかしさを消し去る事は出来ず、もう一度頭を抱えて身体を小さくする。


「んん〜!!!!」


ついに声が出てしまうが、それに気づかず有咲は悶え続けていた。


そんな姿を、たまたま通りかかった奈々がコッソリと見ていて、少し悪そうな笑を浮かべながら娘を見守っている。


(あらあら可愛いわねぇ〜恋する乙女って感じで。私も昔はこんな感じだったかしらね〜)


まだ若い娘の姿を見て自分の過去を思い出す。


するとつい声を出してしまって、有咲がようやくこちらを向いてきた。


「誰かいますか?」

「あはは…ごめんね〜。覗き見するつもりじゃなかったんだけど」

「う、うぅ…」


有咲は露骨に悲しそうな表情をした後にタオルをとって顔を隠した。


「有咲?」

「お母さんなんて知りません」

「ッ__」


奈々はガーンという効果音が聞こえそうなぐらいに驚いて身体をのけぞらせる。


「そ、そう…。うん、わかった…」


奈々は心底落ち込んだ顔のままリビングに戻って行った。


「母さん…何て顔してんだ?」

「…ゆうぅぅ〜〜〜!」

「え⁉︎ホントにどうしたんだ⁉︎」


リビングに入ってくるなりすぐに抱きついてきた奈々に当然の疑問を抱く。


だが奈々が口を開くことはなく、ずっと胸に顔を埋めたままだ。


(子供か)


奈々の行動にそのような感想を抱きながら対応策を何とか考えていると、玄関の扉が開く音が聞こえてきて、その人物に助けてもらうことを決断をしながらじっと救助を待つ。


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