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116 そこは気にしなくていいんだが


頼んだ料理を全て食べ終えると、七海(ななみ)有咲(ありさ)が先程よりも難しそうな顔をしてメニューと睨めっこをし始めた。


「…2人とも何を悩んでるんだ?」


恐らくデザート選びに集中しているのだろうが、とりあえず訊いてみる。


だがしかし…


「「…」」


2人は一切口を開くことなくメニューを凝視している。


(いやどんだけ悩んでんの⁉︎人の声まで聞こえなくなるぐらい悩むことある⁉︎)


(ゆう)はあり得ないぐらい自分の世界に飛び込んでいる2人にそのような感情を向ける。


呆れるというか、逆に尊敬できるというか。


そんな感じの目線を2人に送っていると、先に有咲がメニューから目を離してこちらを見てきた。


「お兄さん…その…こちらのいちごパフェが食べたいのですが…」

「ん?いいぞ。好きなの食えよ」

「ありがとうございます」


値段を気にしたのか、有咲は遠慮がちに話してきた。 

確かに少し高いが、気にする程でもないので全然問題ない。


有咲に好きな物を頼むように言ったはいいが、全然顔が明るくなっていない。


「えっと…どうかしたか?」

「いえ…別に…」


ここで有咲は七海に顔を近づけて話しかけ始めた。


有咲の表情はどんどん深刻なものに変わっていき、最終的には暗い顔をしてメニューを再度見始めた。


「ん?どうした?パフェにするんじゃないのか?」

「いえ…今回は遠慮しておこうかと…」

「いや別に気にしなくても__」

「優くん、少し静かにしてようか」

「え⁉︎なんで⁉︎」


目の奥に深刻な何かを抱えている感じの七海が突然黙らせてきて、優は困惑する。


七海の視線を見る感じ、多分有咲から何か深刻な相談を受けたのだろう。


そのような考えに至ると、居ても立っても居られなくなり、身を乗り出して七海に顔を近づける。


「(何かあったのか?)」

「(いや…別に…)」


七海は言いにくそうに斜め上を見つめている。


直後七海は立ち上がってわざとらしくコップを手に持った。


「私、ジュースいれに行くけど、優くんも来る?」

「あ、ああ…」


七海に呼び出された気がし、コップを持って着いていく。


「で、何があったんだ?」


ジュースを注ぎながら七海に問いかける。


すると七海は表情を暗くして真剣そうに語り始める。


「優くん。女の子はね、太りやすい生物なの」

「お、おお…」

「有咲ちゃんはそこを気にしているみたいなの。だから察してあげてね」

「ああ…」


ちょっと想定外の言葉に困惑してしまう。


だが優はちょっとだけ嬉しくもあった。


あの細い有咲が太るだなんて、失礼だが兄としてはちょっと嬉しいのだ。


(まぁ有咲が嫌がってるなら強要すべきではないかな)


そのような考えを持ちながら優は席に戻って行った。


「お待たせ。デザートは決まったか?」

「はい。こちらのケーキにしようと思います…」


有咲は我慢するように口を強張らせている。


ここで頷けば優しい兄と慣れたのだろうが、やはり有咲の我慢する顔は見るに耐えなかった。


「有咲」

「はい?」

「俺、明日から朝に散歩でもしようと思っているんだけど、一緒にどうだ?」


さりげなく有咲をダイエットに誘ってみる。


すると有咲は何かを察せられている驚きとダイエットに付き合ってくれる嬉しさを交えた表情をし、少し言いにくそうに口を開く。


「はい、じゃあ…散歩、しましょうか」


そう言った後にもう一度メニューを開き、今度は我慢している表情などなくデザートを決めている。


「私、やっぱりパフェにしますね」

「おお」

「ふふ…よかったね」

「何がですか?」

「いーや、なんでもないよっ」


七海はわざとらしくニヤニヤしていて、有咲にとっては何だこいつといった感じだろう。


何がともあれ、有咲が好きな物を食べれるのなら何でもいいか。


3人は穏やかなデザートタイムを過ごした。


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