115 腹と財布が心配なんだが
球技大会2日目も無事終了し、優は帰り際に七海と有咲と3人でファミレスで食事をしてから帰ることにした。
席に座り、メニューにサッと目を通して何を頼むか決めた後に目を前に向けると、七海がじーっと考え込んでいる姿が見えた。
それを見て優は今日ぐらいいいかと考えながら口を開く。
「あ、今日は俺が出すから2人とも好きな物頼めよ」
「え?いやでも__」
「はい。ありがとございます」
驚いた後に否定しようとする七海に反して有咲は嬉しそうに承諾し、もう一度メニューに目を向け始めた。
何の抵抗もなく奢られようとしている有咲に七海は少し疑問を抱いているようだ。
「有咲ちゃんは…えっと…遠慮しないんだね…」
決して嫌味のつもりはなく、単純に疑問に思ったのでその言葉を口にした。
それに有咲は何食わぬ顔で答える。
「はい。多分、今日はそういう気分なのでしょうから、それを受け止めるのが妹の役目です。もちろん、七海さんの役目でもありますけど」
「えっと…そうなの?優くん」
「ああ、まぁな。気分というのもあるし、2人とも頑張ってたし、その労いもかねてな」
平然とした表情でそう言うと、七海は顔を強張らせて悩み始めた。
だいたい何に悩んでいるのかは想像がつくのでそれを払拭させようとすると、先に有咲が口を開いた。
「こういう時のお兄さんは譲ってくれませんよ?七海さんもよく知っているのではないですか?」
前にデートした時も譲ってくれなかったことがある。
その話を有咲にした覚えはないが、何となくわかっているのだろう。
七海は意表をつかれて一瞬驚いた顔をするが、すぐに喜びの顔にしてみせる。
「じゃあ、ご馳走になっちゃおっかな」
「ああ、どんとこい!」
優が自分の胸を拳で叩き、自信ありげにそう言った。
そして七海は礼を言った後にもう一度メニューに目を戻した。
これで好きな物を頼めるからあまり悩まないはず…。
「ん〜…。う〜ん…」
あれ、おかしいな。
さっきよりも悩んでいるような気がする。
「えっと…好きなの頼んでいいんだぞ?」
「うん、それはわかってるんだけど…」
七海がそう言った瞬間に有咲も頷き、2人でアイコンタクトを取り出した。
「食べたい物が多すぎて決まらないんです…」
「あー…」
選択肢が増えたからこその悩みだったようで、3人はどうするべきか頭を悩ませる。
そこでいい案を思いつき、2人に提案してみる。
「じゃあ2人が食べたい物を全部頼んで、みんなでシェアして食べるっていうのは?」
どうやらこの提案は想定外らしく、2人はその手があったかと言わんばかりの表情でこちらを見てくる。
「なるほど。それなたくさんの種類を食べられますけど…」
「2人っていうことは、優くんの食べたい物は食べられないんじゃない?」
「いや、俺はいいよ。今メニュー見た感じだと、大体全部食べてみたいと思ってるから、何頼まれても喜んで食べるよ」
「そう?なら遠慮なく」
七海と有咲は話し合いながら厳選していく。
5分程じっくり悩んだ後、2人は店員さんを呼んで注文をした。
結構な種類を頼んでいたので自分の腹と財布を心配するが、多分どうにかなるだろうと一旦心を落ち着かせておく。
「でさ、今日の優くんはね__」
3人は今日の話をしながら注文した料理が届くのを待った。




