11 この先が不安なんだが
そんなこんなあって、入学式から早くも1週間が経っていた。
1週間も経つとクラス内でグループが出来始め、それぞれのグループで固まって行動している。
そんな中、あまりクラスに馴染めていない生徒が。
彼の名は如月優。
特にパッとしない、割とよく居る普通の高校生だ。
そんな優にも、1人だけ気さくに話すことの出来る友達が。
「七海、ノート見せてくんない?」
「もぅ、仕方ないな〜」
彼女は桜庭七海。
隣の席の優とは違い、七海は淑やかで優雅な美少女だ。
そんな彼女と仲のいいクラスの男子は優しかいないので、優はかなり目の敵にされていたり。
「優くん、もう学校始まって1週間経つんだから、そろそろ授業もちゃんと聞かないとだよ?」
「ハイ、すいません」
やや呆れた表情で七海に説教をされてしまう。
それにしっかり謝りつつ、言い訳をしてみる。
「いやー昨日はソシャゲのイベントがありまして…」
「そんな言い訳しなくていいよ」
なんか七海が笑顔になった。
そのまま七海が続ける。
「本当は何かトレーニングか勉強でもしてたんでしょ?誰にもバレないように」
(え、なんで知ってんの?怖いんだけど)
実は勉強しながら筋トレしてた。
左手でダンベルを持ち、空気椅子をしながら右手ではペンを動かしていた。
圧倒的変人だ。コイツ。
「いや、そんな事俺がするように見えるか?」
「見えるよ。優くんは見た目通りかなり努力するタイプだからね」
「七海に俺はどう見えてるんだよ…」
「ん?かっこよくて努力家でとても優しい人」
「それは流石に盛りすぎでしょ」
「そうだね…優くんはもっとすごい人だもんね!流石に盛らなすぎだったね!」
「耳腐ってんの?」
こうやって七海と仲良さげに話していると、男子共からの殺意がエグい。
特に七海目的で教室に来ている先輩からの殺気がとにかく凄い。
優は何事も無さそうに話しているが、実はとんでもないほど冷や汗をかいている。
(ヤバすぎだろこの状況⁉︎普通に帰り道で殺されそうなんだけど⁉︎ってか七海は何でそんなに冷静そうなの⁉︎)
そんな風に滅茶苦茶焦っている。
そして冷静な七海さんはというと
(みんな私達のことを見てる♡やっぱり私達お似合いのカップルに見えるのかな♡)
普通に的外れな事を考えていた。
全然冷静じゃなかった。
そんな事を考えているとは全く知らず、冷静そうに見える七海に助けを求めようとしたが、その男子集団の間から小柄ながらも高貴で麗しい美少女が現れる。
「お兄さん、遊びに来ちゃいました」
そう言って手を振りながら近づいてくる。
彼女は如月有咲。優の実の妹だ。
そんな兄大好きな妹と幼馴染が接触すると、当然喧嘩になる。
と思っていた。
だが、現実は違った。
「七海さん、私もお話に混ぜていただけませんか?」
「まあ…いいけど…」
2人とも前の件で反省したのだろう。
何とか2人とも心の中で自分の気持ちを踏みとどめているようだ。
「で、何のお話をしていたのでしょうか?」
「優くんがどれだけ凄い人かどうかを語っていたの」
「それは素晴らしいですね!」
「いや素晴らしいか?」
優以外の美少女2人は目を輝かせて話している。
本当に楽しそうに話すなぁこの2人。
話題は流石にドン引きだけど。
(なんか殺気が増した気がするんですけど⁉︎)
当然のことだが、美少女が1人増えたので殺気も増す訳だが。
えーっと、どうしようか。
これからの長い学校生活の中でこんな事はざらにあるだろうから、正直気にしたら負けな気もするが。
でも、ね?流石にこれを気にしないのは無理がある。
というわけで何とかしようと考えようとしたんだが。
「だーかーら!優くんは私の物なの!直々に告白されたこともあるんだし!」
「いいえ違います!妹である私の物です!お兄さんに愛してると言われたことがありますか?私はありますけど」
「ゔっ…確かに言われたことないけど…でも!それは妹に向けての愛してるであって異性として好きというわけではn」
「いや何の話してんのー⁉︎」
会話はほとんどの生徒に聞こえていて、もうどうしようもない状況になってしまった。
「でもでもでも!優くんは直々に異性として好きって告白してきたんだし!私のことの方が大切だから!」
「いやそれいつの話⁉︎ってかそれおままごとでやったやつだし⁉︎」
幼馴染が昔遊びでした告白を未だに引きずってくる。
本当に、このままでうまくやっていけるのだろうか。
そんな気持ちのまま楽しくヒヤヒヤする日常を過ごしていく。




