109 勝手に話を進めないでほしいんだが
外が明るくなった頃、優は目を覚ました。
「あ、おはよ」
寝顔をずっと見ていたのか、目の前には七海の綺麗な顔があって、驚いてすぐに距離を取る。
「あ、ああ…おはよう…」
2人は起き上がってベッドから降りる。
「よく眠れた?」
「ああ、まあな。七海は?」
「私は…あんまり眠れなかったかも」
七海は顔を赤くしながら何かを思い出すように下を向いている。
まあ大体なぜ眠れなかったのかは想像できるので理由は訊かずに話を変える。
「そっか。まぁとりあえず降りるか」
「そうだね」
2人は階段を降りてリビングの扉を開く。
「お、仲良しカップルが来たぞ〜」
「いやカップルじゃねぇよ」
「そうなのか。てっきり昨晩告白して付き合っているものかと」
「そんなのしてねぇよ。普通にすぐ寝たし」
「そうなのー?残念ねー」
ソファでゴロゴロしている優希と、キッチンで朝食の準備をしている翔子に残念がられる。
(いや勝手に期待しすぎでは?)
特に告白するとかの話は全くしていないのに勝手に期待されていて優は親達に少し呆れる。
だが隣の七海はなんだか嬉しそうにしている。
(これは…親公認ってこと…?)
七海は心の中でそう考え、嬉しい気持ちが顔に出てしまっている。
そのままの勢いで優に告白してしまおう。
七海のパンクした脳でそのような考えに至る。
「優くん。みんなも期待しているみたいだし、そろそろ付き合__」
「よし!ちょっと走ってくるわ!」
「あ__」
優は逃げるようにリビングから飛び出し、外で少し走ってからリビングに戻る。
その頃には先程の話は完全に終わっていて、ホッとした後に席に座る。
全員が朝食を食べながら話をしている。
だが優は特に会話に入ることもなく黙々と朝食を食べていると、奈々が何かを思い付いたかのような顔をした後に勢いよく話しかけてくる。
「そういえば今日七海ちゃんとデートでもしないの?」
「は?」
「せっかくの休日だもの。カップルで仲良くデートでもしたら?」
「いやだからカップルじゃ__」
「はい!デートします!」
「ダメです!今日は私とデートするのです!」
「こら有咲。今日も主役は七海ちゃんなんだから、譲ってあげなさい」
「…はい」
有咲は叱られて悲しそうに七海にデートの権利を譲る。
ここで優は思った。
(いや何勝手に話進めてんの?)
何も言っていないのに勝手に七海とデートすることになっている。
別に嫌というわけではないが、突然の事すぎて困惑してしまっている。
そんな心情も知らず、七海は近づいてきて小声で話しかけてくる。
「(楽しみだね)」
別にこちらは楽しみではないんだけどね。
まだ状況に追いつけておらず、七海の言葉に何も返さぬまま食事を進めていく。
その後は何気ない会話が続き、あっという間に朝食を食べ終えた。
その後はソファに座ってゴロゴロテレビを観ていたのだが、そこに奈々がやってきて戒めるように言葉をかけてくる。
「そろそろ支度をしないと、デートに遅刻しちゃうわよ?」
「はい?」
「だから、あと1時間後に集合なのでしょう?準備し始めないとマズいんじゃない?」
「え、そうなの?」
知らない間に時間まで決められていたようで、優は焦りながら支度を始める。
気づけば七海は家に帰っていて、支度をしてからまた来るとのことだった。
なんか知らない間に色々話が進んでいる。
心の中で軽く愚痴を溢しながらも素早く準備をする。
50分後、七海が再び家にやってきた。
ギリギリ支度が完了し、急いで玄関のドアを開けに行く。
「準備できてる?」
「ああ、何とか」
「じゃあ行こっか」
昨晩プレゼントしたネックレスを早速付けてくれていて心の中で喜びながら家を出た。




