107 全然変わってないんだが
寝る支度を済ませて七海を連れて自室に入った。
「やっぱり懐かしいなー」
「それ、さっきも言ってたじゃん」
「そうだけどー。ここは思い出の場所だからね」
部屋を見渡しながら過去を思い出す。
(昔は、よくこの部屋で七海と遊んだっけ)
思えば、あの頃は毎日どちらかの家で遊んだような気がする。
多分そんな事はないだろうが、それぐらい強烈に脳に記憶されている。
七海も同じような事を考えていたらしく、じーっと部屋を見ながら微笑んでいる。
「ホント、変わらないね」
「確かに。あの頃から物をあんまり動かしてないな」
「それもそうだけど、特に君は全然変わってないよね。あの頃と同じ。どこまでも優しくて、太陽よりも眩しくて温かい」
急に褒められて少し恥ずかしくなってくる。
そんな心情を悟られないよう、適当なネタを入れて誤魔化しておく。
「ははっ、今日はエイプリルフールじゃありませんよ奥さん」
「お、奥さん⁉︎え、えと…恋人とかじゃなくて…いきなり結婚…?」
あれ、なんかとんでもない解釈をされている気がする。
このままではマズイ。
すぐに訂正しておかねば。
「いやそういう意味で言ったんじゃなくて…」
「(べ、別に私はそれでもいいよ…?♡)」
なんか小声で聞こえてきたが、それには触れないでおいてなんとなくベッドに座る。
同時に七海も座るように促し、そこでまた話をする。
「ねぇ優くん」
「なんだ?」
「私は昔と比べて変わった?」
「ん〜…そうだな〜…」
突然の想定外の質問に頭を悩ませる。
正直言うと、七海は変わっていない。
ある一部分をのぞいて全く変わっていないと言える。
その一部分とは何か?
そう、滅茶苦茶アタックしてくるようになったところだ。
昔はもう少し内気で純粋だったのに、今はすぐにくっついてきてアピールしてくる。
まあそれも悪くないんだけど。
とにかくこの場面で変わった部分を主張したら流石に落ち込みそうなのでそこ以外を褒めておく。
「いや、七海も全然変わってないな。昔と一緒で笑顔が眩しくて照れ屋さんで、感情の起伏が激しくて…」
「ねぇそれ、褒めてる?子供っぽいって言われている気がするんだけど?」
七海はほっぺをぷくっと膨らませて口を尖らしている。
(そういうところが変わってないんだよなぁ)
こんな事言ったら流石に拗ねてしまいそうなので言わないけど。
まあとりあえず誤解は解いておこうか。
「褒めてるさ。七海は昔からとても素敵な人間だってこと」
「そ、そう…なんだ…」
膨らんでいたほっぺは縮んでいて、顔を赤く染めて下を向いてしまっている。
うーん、ちょっとやりすぎてしまった。
流石に褒めすぎたな。
でも、すぐ照れるところは昔から変わってない。
そんな七海にやれやれと言った目を向けた後、ベッドに寝転がってからリモコンを使って電気を暗くする。
「ほら、隣…来ないのか…?」
さりげなく添い寝するよう促しているが、途中から恥ずかしくなって段々声が小さくなっている。
だが七海はもっと恥ずかしがっていて、ちょっと汗をかいているように見える。
七海は身体中が赤くてかなり暑そうなので胸元のボタンを外しながらベッドに寝転んできた。
互いの身体が至近距離まで近づき、冬なのに2人とも身体が熱くなって汗をかいてきている。
特に優は尋常じゃない程体温が上昇していた。
それはなぜかって…まぁ巨大な2つの山が無防備に至近距離にあったらそりゃドキドキもするでしょ。
優は吸い付く目線を何とか逸らしながら七海と2人仲良くベッドインした。




