101 話題がヤバいんだが
全員ケーキを食べ終え、今は七海の様々な話題で盛り上がっている。
「で、七海ちゃんは優のどこが好きなの〜?」
うん、今の話題は地獄だね。
でも流石の七海でもこれだけの人の前、しかも親たちの前でこれに答えることは出来ないだろう。
そう思っていたが、それは甘かった。
「そうですね…全部、ですかね…」
七海は恥ずかしそうに頬を赤ながらもしっかりと会話を続けている。
そんなに赤くなるなら言わなければいいのに。
そんなことを考えている間にも、七海に様々な質問が投げかけられている。
「2人はもうデートはしたの?手を繋いだりとかは?」
「それは__」
(あ、これあかんヤツや)
本人が目の前に居るのに女子達が恋愛話で盛り上がっているのを見て少しずつ居た堪れなくなる。
下手したら黒歴史を話されている可能性すらある。
なので止めに入りたいのだが、多分それはできないというのがわかるのは長年の付き合いからか。
一旦諦めてこの部屋から逃げる事にしよう。
こうして逃げることを決意して席を立って一歩踏み出したのだが、そこでガッチリと左腕を掴まれて引き止められる。
「…離してくれないか?」
「まぁ…とりあえず座りなさい」
父の優希がいつにも増して優しい表情で、椅子に座るのを促してくる。
よく分からないので逃げたいのだが、逃げれない。
うん、左腕、痛いんだけど。
振り解こうとしてもビクともせず、もがけばもがくほど痛みが増すアレのような感じになっている。
流石に優希の力には叶わず、諦めて席に着く。
「なんだよ…」
「逃げるのはよくないぞと言いたくてな」
「別に逃げてたわけじゃ…」
「いや、逃げてたな。俺には分かる。親だからな」
「なんだそれ…」
なんか謎の理由で心を読まれていたので内心気持ち悪いと思ったが、それは表に出さず平静を保つ。
「てか、そもそも何で逃げたらダメなんだ?」
「向き合うべきだ、過去の自分と」
「…は?」
いよいよ言っている意味が分からなくなってガチトーンの「は?」が出てしまった。
まあ仕方ないだろう。
本当に意味が分からないのだから。
そんな感じの結論に至って前を向くと、智が近くまで来ていることに気づき、そちらを見てみる。
智は優希に共感するように頷いており、ハッキリ言って気持ち悪__。
というか、本当に何が言いたいんだこの人達は。
さっきから自分にあった出来事かのように話してるけど…
(あっ…)
ここで何となく察しがつき、2人の言いたい事も何となく理解した。
これは多分、過去に何かあったパターンだ。
ホントこの2人、過去に色々ありすぎでは?
まあ先人の知恵を生かせれるという点では良いのだが。
だが今そんなのは必要ない。
自分でどうにかしてみせるから。
気づけば逃げる気はすっかりなくなっていて、女子会で盛り上がっている方に耳を向ける。
「で、その…優くんがよければ何人でも欲しいというか…」
「キャー!!」
これ、ちょっと無理かも。
話題がちょっとヤバすぎる。
これは流石に無理だと逃走を図るが、当然優希に止められる。
「優…」
そんな表情をされても無理なものは無理です。
ガッチリ掴まれた腕を裏技で振り解き、リビングから退場する。
とりあえず自室に戻ろうと階段に向かった時だった。
「あ、お兄さん…」
有咲がリビングの扉のすぐ横で壁にもたれかかっていて、少し暗い顔をしている。
そういえば有咲の話し声が聞こえないと思ったらここにいたのか。
でも、なぜわざわざこんなところにいるのか。
そんな疑問が頭をよぎり、有咲に聞いてみる事にした。
「ここで何してるんだ?」
「えっとその…話題が話題だったので…ちょっと嫌になっちゃいまして…」
「わかる…」
拳を握りしめて共感すると、有咲も首を上下に振って共感している。
せっかくの誕生日会だってのに、全くエグい話をしてくれたもんだ。
とりあえず有咲を連れて話が終わる頃まで散歩でもする事にした。




