10 妹が厳しすぎるんだが
「「いってきます」」
「いってらっしゃーい」
朝の支度を済まし、優と有咲は靴を履いて扉を開く。
そこに待っていたのは、白く輝く太陽…のような髪をなびかせている少女が。
「あ、優くん、おはよう。それと…有咲ちゃんも、おはよう」
優と有咲でやや声のトーンが違う気がするが気にしないことにする。
「おはようございます。今日はどうして待ち伏せしているのですか?ストーカーなんですか?」
「エッソウナノ!?」
「違うよ!ただ家の前で優くんを待ってただけで、決して待ち伏せしてたとかストーカーとかじゃないからね?」
「それを世間一般ではストーカーって言うんだよ」
「そうですよ、ストーカーの七海さん」
「ストーカーじゃないもん!」
頬っぺをぷっくらと膨らませ、やや拗ねた表情で2人を睨みつける。
これはこれで子供みたいで可愛いな。
そんなことはさて置き、まず単純になぜ家の前で待っていたのか。
一緒に登校したいの♡とか言いそうだが、一応訊いてみる。
「それで?今日はなんでここに?」
「それは…その…」
「どうしたんですか?ハッキリ言ってくださいよ。まさか本当にストーキングしてたのでは…」
「してないよ!…ただ…その…謝りたくて…昨日はごめんなさい!」
思ったよりもまともな理由だった。
七海は深く頭を下げていて、もうすぐ地面につく…
「ちょっ、君何してんの⁉︎」
「何って…土下座だけど?」
「いや、何さも当然かのように土下座しようとしてるの?」
動作の流れが良すぎて途中まで気付かなかった。
ナチュラルに土下座しようとしている七海を、流石に有咲も止めに入る。
「流石に土下座はしなくても良いんじゃないですか?お兄さんは優しいですから、頭が擦り切れるまで地に這いつくばれば、きっと許してくれますよ」
「うん、優しい要素どこにいった?流石に鬼畜にも程があると思うんだが」
「そうだよね…流石にそのぐらいはしないとね…」
そう言って膝を曲げ、手を地面に着け、頭を擦り付けようとしている。
「いや、ガチでしなくていいから⁉︎ただの冗談だろ⁉︎な?」
「いえ、このぐらいはしてもらわないと」
「有咲さん⁉︎ちょっと厳しすぎません⁉︎」
満面の笑みで答えている有咲だが、その笑顔が怖い。
その笑みに負けたのか、七海は地面に這いつくばろうとしている。
「何やってんの七海さん⁉︎ホントにしなくて良いから⁉︎…ほら、早く立てよ」
そう言いながら七海に手を差し出す。
その手を握り、七海はゆっくりと立つ。
「ありがとう、優くん」
「いや、なんかごめん、うちの妹が迷惑かけて」
「ちょっ、お兄さん⁉︎私は迷惑なんかかけていませんよ⁉︎」
有咲が本気で弁明してくる。
いや、もう遅いけどな。
「まあ、迷惑ってほどじゃないし…ね?2人とも、喧嘩しないで」
「別に喧嘩というほどじゃ…」
「そうですよ。それに、私は何もしていませんし」
「何もしてないは無理があるのでは?」
「いえ、そんなことありませんよ」
「いいのいいの。ほら、早く学校いこ?」
そう言って七海が2人を先導する。
「そうですね、早くしないと遅刻しちゃいますしね」
有咲も七海に続くように歩いて行く。
全く、これからどうなるのやら。
このまま2人に振り回される高校生活になってしまうのだろうか。
いや、違うな。
この2人に振り回されるからこそ、楽しい高校生活になりそうだな。
そんなことを考えながら2人の元へ駆け出した。




