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迷子の無双ちゃん ふわふわ紀行 ~予言と恋とバトルの100日聖女は田舎の町娘の就職先~  作者: 相川原 洵
第六話 王都騒動

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81 謎の一団 


 前言をあっさり撤回して降って湧いた、シーリンの結婚話。本人の希望に沿って、これを潰すべく作戦を立てたアイシャだが、目的地への道案内が不在で、計画は失敗に終わったかと思われた。そんな折、格好の案内人候補が訪れる。


「運が、いやさ、都合がいいことだなアイシャ。」


 ヤクタのからかうような口調に引っかかるものを感じたアイシャが「言い換えなくても、運がいい、でいいでしょ。」と問いただすも、


「その計画で、全部いい結果になるなら幸運さ。でも、大体いい結果になったところで、ひとつ悪い目が出たら恨まれるのはアイシャだからな。リーダーをやるなら必要な覚悟ってヤツ。覚えておけよ。」



 なんとも返事に困る忠告だったが、シーリンは思わず!といった感じで目をそらす。善意の言葉なのか、面白がりか、目の奥に真意が見えないものかとヤクタの目を覗き込むアイシャだったが、すぐに照れくさくなって目をそらす。


 気詰まりな空気になるかと心配する間もなく、アーラーマン師範がメイドに案内されて、諸々の礼を述べに六人衆を代表し、登場。

「この度は」と、深々と礼をとろうとするのをさっさと制して、


「早速、明日も働いてもらうよ。カムラン流の道場に遊びに行くから、道案内をお願いね。」

「おぉっ、ついに奴ばらへ制裁を!」

「しないよ! 軽~く、お話しをするだけだからね。アーラーマンちゃんも、物騒な格好をしてきちゃダメだよ。パシッとした服装で、ね!」

「委細、承知しましたッ! 道案内はお任せくだされ!」



「……アイちゃん、あの人、わかってると思う?」

「何か間違えてても、別に問題ないんじゃないかな? 話が早いのは、ありがたいね。」


――――――――――――――――――――――


 そして翌朝、ファッションチェックは“平和的に、でも舐められないように美的なジャンルで強そうに”。ひらひらフリル多めの花柄で、肩周りは動きやすく、初夏らしい軽め。スカートもそんな感じ。腰に差した剣が不似合いなのでリボンを巻いたりしちゃって。シーリンちゃんともお揃いっぽく色違いでキメてみました。

 

 迎えに来たアーラマンちゃんは妙にパリッとした準正装くらいの服装で、わたしたちを見て何やらまごついている。今日のわたし、どう? 何かおっしゃいな。


「たげ、めごう存じます。」


 何いってるのかわからないけれど、明らかに動揺して赤面しながら言ってるので、たぶん悪い意味じゃない。シーリンちゃんと目を合わせてお互いに首をひねって、まあ、許してあげようと思ったのは、たぶん息が合っている。


 ちなみに、ヤクタは今朝は寝床から起きてくるのもしんどいらしい。ヤーンス町の人々からもそういう体調になる話はよく聞いていた。隣村ではそういうとき、赤い木の根をかじると具合が良くなるという風習があって、村ごと“地鼠(ジネズミ)村”と陰口されていたなぁ。でもネズミはわたしには禁句。こういうとき、薬とかあったらいいのに。



 でも、そんなことはどうでもいい。さあ、行こうか。そう言おうと思ったところで、庭先に知っている暗い気配が潜んでいたので、武神流の最高速で走って、エンカウント。


「ベムン!…… べラ? ベ! 今日からあなたの名前は“ベ”です。それで? 何の御用?」

「ベフラン!ベフラン!」


 シーリンちゃんが優しくもフォローしてくれているけれども、このべ太郎はフテ腐れた顔。


「監視任務だ! オマエが第3王子殿下のために政敵の暗殺に来たのではないと、安心できる材料はどこにもないのだぞ。当然、見張るだろう。」


「ひどいなぁ。いや、そんな疑われ方するのはサッちゃんの人徳の無さのせいだね。

 じゃあ、心ゆくまで監視させてあげるから、ついて来なさい。逃げようとしたら、今度こそ口を裂いて舌を抜くからね。」

「うわっ、アイちゃん、本当?」

「しないよ。でも、イジワルばっかり言う人は地獄でそうされるらしいよ?」



 かくして、妙な4人組の、謎の一団が出来上がった。外から見たらどう見えるんだろうね。妙におめかしした大男が先頭で、地味な黒ずくめ男が続いて、きれいなオシャレ女子2人がついて歩くの。女子2人が帯剣。

 いやあ、それにしても、今まで女子ばかりで連れだっていたから、男たちがむさ苦しいわぁ。スパイとか剣士だったら美少年ではなくても色男ではあってほしかった。


「あ、いや、我が武神流は体格第一だったものでして、申し訳ない。」

「無理やり脅して引っ張り出しておいて、なんたる言い草だ。遊びの用だったら、もう帰っていいか。」


 どうにも、ベ太郎、ベフラン?は戦いを挑まないと生きていけない性分の人なようだ。怖いなぁ。でも、同行してもらうよ。見えないところから監視されてるより、見えてるところにいてもらったほうが安心だからね。



「こちらが、彼奴(きゃつ)らめの道場です。さあ、討ち入りましょう。」

「違うよ、平和なお話しだよ。」


 微妙に人目を引きながらやって来たのは、城壁に近い、下級貴族の家人などが主に住んでいる居住区エリアの端っこ辺り。オシャレ王の都でも、ここまで来れば(スス)けた、空気もどことなく湿った感じになっちゃってる。まあ、お宅拝見に来たわけじゃない。


 入口近くまで歩み寄ると、2階から矢が跳んできて足下に突き刺さった。わぉ!



「何のつもりだ、武神流のアーラーマン! ついに戦争か!いい度胸だ、かかって来い!」

 怒鳴り声が響いてきたけど、言葉の内容の割にはイマイチ威勢の悪い、ハキハキしていない調子の年老いた声だ。

 不思議に、悲壮感が漂っている状況だぞ?



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