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迷子の無双ちゃん ふわふわ紀行 ~予言と恋とバトルの100日聖女は田舎の町娘の就職先~  作者: 相川原 洵
第六話 王都騒動

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79 ウワサのアイツ


 はるばる王都までやって来たわたしたち。で、まず、するはずだったお仕事を王太子サマ様の電撃訪問による中止要請を受けざるを得なくなり、わたしひとり暇になりました。ので、武神流の弟子、チャリパおっ母さんを引き連れて、街の調査兼、観光に乗り出すことに。


 まず向かったのが、王都冒険者ギルド本部。ここで、するはずだった仕事が王太子アッちゃんに引き継がれて今どうなっているのかを探ることと、電撃訪問中に青天の霹靂(カミナリ)のように起こったカムラン神の神託の影響を調べるつもり。

 そのなかで、聞き捨てならないキーワードを小耳に挟んでしまいました。



「“サディク王子の毒蛇”については、酒場で口伝えの噂話でしかないですので、チャリパさんのお連れさんなら、タダでお話しちゃいますよ! そのかわりといっては何ですが、ご存知のことがあったら教えて下さいね。」


 前置きをおいて、受付嬢さんが楽しそうに話し始めます。この人も朝からヒマなのかしら。

 問題の噂についてわかったことは、こうだ。


 まず、サディク王子の出征については、政治的にはかなりマズイものだったけれど民衆からの支持が熱狂的なので、扱いがかなり慎重。公式に発表される情報はほとんど無く、噂話を流す人にはどこからともなく“警告”が入って口をつぐむようになるのだとか。

 それでも断片的に、苦戦しているらしい、合戦に負けて陣を後退させた、王子は負傷、いや重傷を負って姿を見せなくなった、あるいは……などと情報が入ってきて、王都に重苦しい空気が流れ出した瞬間を見計らったように、快勝の一報が公表された!んだって。


 どうやら苦戦していたことも、陣を後退させたことも事実で、大逆転があってオーク族の侵攻は(つまず)き、去年までの占領地に撤退した。ここまでは事実らしい。では、大逆転ってなんだ。それがわからない。こんなモヤモヤする話があって良いものか。

 深い(いきどお)りを原動力にギルドの総力を結集して調べたところ、謎の諜報集団“毒蛇”の暗躍、オーク軍総司令の急死と、サディク王子を先頭にした決死の奇襲攻撃があったことが見えてきた。それらを元にしてギルドが導き出した真実とは!……



「あ、もういいです。」

 なんということ。国の密偵ベフランも、魔法ヤクザのナヴィドさんもやっぱり優秀なんだなぁ。王都は遠いから伝わりにくいのはもちろんだし、まだ起きてからそんなに日が経ってないから、しょうがないのかな?


「“毒蛇”はオーク族の特殊部隊だ。こちらの、我が武神様の使徒、武神姫アイシャ様が滅ぼした。どこかで話が混ざったんだろう。

 サディク殿下は一旦は敗れて囚われの身となっていたが、敵司令官を倒してお救いいたし、敵陣に火を放って勝利に貢献したのも、武神姫だ。

 カムラン神の使徒に、姫のご友人、男爵家のシーリン嬢が選ばれたのはその後のことだ。昨日の神託は、サディク殿下の許嫁になった姫に王太子殿下が挨拶にいらして、あのハーフェイズさんに姫が稽古をつけてあげるときのものだった。」


 おっと、口を挟む暇もなく、チャリパが全部言っちゃった。言っちゃいけなさそうなことまで全部。大丈夫かしら、これ。



「はぁ……ああ……そう、なんですね。わぁ、すごいなぁ。パチパチぃ……」

 おぉっと、三拍置いて、かわいそうなこども扱いだ。そりゃ、そうかもだけれど、どうしてくれるチャリパ。


「いいから。もう行きましょ、チャリパ。いま信じさせるほどヒマじゃないし。」

「しかし、金貨……」

「あとで王子様から貰うよ、もう!」


 いやぁ、これ、どういう噂になるんだろう。田舎よりは優しい感じで済んでくれたらありがたいけれど、背に受ける野次馬モードの気配が半端では済まない雰囲気。

 この女イノシシにはちょっとお仕置きが必要だと思いました。


「チャリパ、後でご褒美に特別メニューの修行をさせてあげます。」

「ハイッ! 光栄です!」



 その後は、適当な甘いもの屋さん、もといスイーツショップで昼食代わりにお菓子を頂いて、なんだかじわじわと心が痛くなってきたので、早々に引き返すことに。

 良いお店の情報もギルドのお姉さんから聞き出すはずだったのに、急いで出てきたのは失敗だった。とはいえ、あの状態から話を変えて聞き出す社交スキルはわたしには無い。


 あ、食べたものは美味しかったよ。上等な砂糖と花の風味のする、クッキーみたいな、食感がムニっとしたものと、ハーブの香りの氷を浮かべたお茶とか。でも、王都は水が良くないね。途中のホテルでも男爵邸でも思ったけれど、ヤーンスの名水って本当だったよ。どうしてこんなに違うんだろう。



「アイちゃん帰ってきた! ねぇ聞いてよアイちゃん、お父様ったら酷いのよ!」


 男爵邸に帰ってきた私たちを玄関で待ち構えていたのは、街で噂になっていたシーリンちゃん。うわあ、聞きたくないなあ。


「私に、ハーフェイズさんの第二夫人になれっていうのよ! 一昨日は適当なアイちゃんの知り合いと結婚しろっていってたのに、王太子サマ直々に言われたからもう仕方ないって! 無いと思わない!!?」


 思うよ。それは思うけれども。べつにブサイクじゃないし、どちらかというとハンサム(ビッグマッチョ)だし。身分低いの?一代限りの伯爵格?いいじゃん。何がそんなにイヤなの。


「私を足蹴(あしげ)にするような男! びっくりしたし、怖かったんだから!」


 確かに。それは確かなことだけれども、痛くはなかったんだ。だったらいいじゃん。

 こんなことになるなら叩いておけばよかったのに。平和的解決しようと思ったら余計に悪くなることもあるみたいだよね。わたしも気をつけよう。

 それはそうとして、

「シーリンちゃん、この間、自分も“イヤなものはイヤ”で通す、って言ってたよね。そうしたらいいんじゃないの?」



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