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迷子の無双ちゃん ふわふわ紀行 ~予言と恋とバトルの100日聖女は田舎の町娘の就職先~  作者: 相川原 洵
第三話 オーク

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32 雨宿りの旅人


 雨の中、薄暗い小屋の中に火を囲んで雨宿りの5人。男が3人、若い女が2人。

 最後に増えた1人は、いかにも行商人の風体だが屋内に入ってからも目深に被ったフードを上げず、極めて怪しい。

 怪しいといえば、あえて戦地に近づくように旅している、見目の良いのを隠しもしない2人娘というのも不審極まりない。


 皆が微妙に居心地悪げになっているのを気にもせずに、もう色々忘れて1人ほのほのとしているのはやはりアイシャだった。


「いやぁ、ほっこりするねぇ。ねぇ、ヤクタ。」


 白湯を沸かすやかんに持参のハーブを浮かべさせてもらい、ハーブティーをすすりながら話を振る。このハーブは後で干そうと外套のポケットに入れていたのがずぶ濡れになってしまったので、さっさと消費することにしたのだが、この行動も怪しいといえば怪しい。

 ヤクタの方は神経をとがらせつつ生返事を返して、小降りになってきた雨音を気にしている。


 ぷぅと頬を膨らませても相手してもらえないアイシャは、仕方なく隣の旅人のも声をかける。

「お兄さんは、どちらから?」


 黙殺。あるいは、寝たふり。気配で、熟睡状態でないことはわかっている。


 農家のおじさんは部屋の隅の椅子に腰掛け、うとうとと船を漕いでいる。だが、こちらも本当に寝てはいない。


 行商人は懐から帳面を取り出し、何か書きつけている。覗き込むと、「これは見せられないんだ」と隠されて、体ごと反対側を向かれてしまう。



 何か話題はないか。考えたアイシャは、ヤクタににじり寄って深い考えもなく問う。

「あのさ、銃って、雨に濡れても使えるの?」


 男たちが三者三様にピクッとする。


「銃の筒っぽは鉄だから大丈夫だろ。錆びないようには気をつけるけど。火薬の方は、それこそ湿り気も厳禁だってさ。厳重にしまい込んでるよ、アイシャのハーブと違ってな。」

「いちいち意地悪言わないの。暇だから、筒の方、どう使うのか見せてよ。」


 そっぽを向いた行商人が手鏡で眉のあたりを気にしている。

 寝たふりの旅人がわざとらしいイビキを発する。

 椅子に座った農夫が気配を薄くする。


「まあ、いいか。銃は、これだな。これをだな、」

「ちょっと待って、ヤクタ。」


 そっぽを向いた行商人が手鏡でヤクタの銃をガン見している。

 寝たふりの旅人が目を見開いてヤクタの銃をガン見している。

 椅子に座った農夫が隠しもせずヤクタの銃をガン見している。


「ねぇ、どういうこと?」


――――――――――――――――――――――


 一瞬で空気が激変しています。


「えっ、間諜のあぶり出しに振った話じゃなかったのか? まさか全員とはお姉さんも思わなかったがな。」


 ヤクタが訳知り顔をしているけれど、まだ、全員とは限らないんじゃないかしら。それに、スパイだとしてもオーク族のそれとは限らない。

 つまり、この男の人3人は【A. オーク族の密偵】【B. 第3王子軍の偵察部隊(主戦派)】【C. 国の間諜(和平派)】【D. 単に物見高い人】の可能性があるわけだ。あと、その他、情報屋さんみたいなヤクザの人(E)かもしれないな。

 全員オークかもしれないし、1人ずつバラバラかもしれない。こうなったら、なるべく間違えず探り当てたい!

 真実はあんまり沢山は無い! お父ちゃんが泣かないように!


「ほぉーっ、ややこしいもんだな。どうしたもんだか。あと、最後のは村芝居のなにかか?」


 ヤクタは当てにならなさそうなので、お国の兵隊さんの偵察部員を退治てしまう訳にはいかないこの状況、名探偵アイシャちゃんが解き明かし、オーク族なら退治して、お国の敵対派閥ならお帰り願わないといけない。

 さて、どうすべきか。


1) 一切合切、正直にぶちまける

2) 全員殴って、持ち物から身元を探る

3) 名探偵なので一言ずつ話を聞けばピタリと当てられる

4) 考えてみれば別に構うこともないので、雨も小ぶりになったみたいからさっさと他所に行く


 どうしよう。朝と同じにカードで決めようか。いや、落ち着こう。

 まず、(2)と(4)は、急がなくても、最終手段に使えるからまだ選ばなくてもいい。

 そうしたら、(1)も、その一歩手前なので、必然的に(3)、みんなの話を聞こう、ということになる。

 方針が決まったので、あらためて全員と向き合う。全員、銃に対してそれぞれの反応を示してしまったことに気まずげな顔をしつつ、善後策を検討している感じだ。

 とりあえずヤクタは【E.ヤクザの人】だとして、男3人に1人ずつ話を聞こう。


 最初は、いちばん露骨にアレだった行商人さんからだ。





謎の流れで探偵編です。

べつに何も考えず読み進めてください。

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