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211 再会と…


 いつの間にか、太陽が明るい。空も、気持ちよく青い。通りにも、たくさんの人が行き交っている。

 革命家のアジトで話をつけた帰り道、迷ってしまって一晩中途方に暮れていたのだけれど、偶然知り合いに出会えたので、聞いた方向に足を運んでいるところだ。


 確か、広場があるって言ってた。道行く人に聞いてみようかと思ったが、どうも、誰が普通の人で誰が革命家か、なんだか怖くなって身がすくむ。

 別に怖がる理由もないだろうけれども、(ハラ)に一物抱えて悪巧みしていやしないかと普通の人を警戒してしまうのは、なかなか腹をくくってあたれる問題じゃない。


 目立たないようにこっそり歩く。おや、広場だ。なにやら豪勢な馬車が停まっているよ。偉そうなお嬢様が手を引かれて降りてくる。いいなぁ。

 と、思っていたらお嬢様はシーリンちゃんだ。と、いうことは。手を引いているのはメガネくんことユーバフ氏。


 こんな都合の良いことがあるものだろうか。そんな考えが頭をよぎらないではなかったものの、見過ごしたって仕方ない。それに、体が自然に動いている。



「シーリンちゃーん!」


「あらぁアイちゃんおはよう。泣いてたの? 目が真っ赤だけど。朝からアイちゃんをいじめたのはどこのおっちゃんかしら!?」


「泣いてなんかないやい。夜じゅう、寝ずに歩いてたからだよ。」


 ぎゅっと手を握りあう。あぁ、明るい空の下で盟友に会うと気持ちが入れ替わるようだ。夜に嫌なものに触れるとロクなことがない。


 聞けば、シーリンちゃんは到着したばかりで、これからメガネくんのメガネを作るべく職人街前の広場に乗り付けたのだという。

 わたしの方は一晩中道に迷っていたことを正直に話すと、心底呆れ返られたけれども、それはそれ。注文を済ませたあとに宿まで送ってくれることになったので、朝食をお茶をいただきながら待つことになった。



 ヤクタたちは心配してくれているだろうか、怒ってるだろうか。いつもフラフラしてるヤクタに怒られる義理はないけれど、もう時間が経ったから今なら探せるかもしれない。気配を追う。

 ……居た。爺やは近くに、ヤクタとジュニアは下街まで行ってる。前みたいに、殺気を送って知らせようか。いや、メッセージの中身まで送れないよね。…そうだ、グリゴリィさんがやってたみたいに言葉を、


「…ちゃん! アイちゃん!」

「わぁ、なに⁉️」

「頭から、なにか生えてるわぁ!」


 おお、無意識に、頭から光る触手みたいなのを生やしていた。天に向かってフラフラしている。自分のことながら気味悪い。しかも、周囲の通行人みんなが見ている。

「あれ、何だ?」「どこの新製品だ!」って、幸いなことに職人街の近くなので聖女の神力バレはしてない。手早く済まそう。


[ひと晩かけて任務達成しましたので、シーリンちゃんと合流して今から帰ります。心配かけてごめんねー!]


 一方通行の言い捨てになるのは我ながら感じ悪いけれど、とても便利だ。一瞬、受け手の気配が怒りに包まれたのはわかるので、ほとぼりが冷めるまでゆっくり帰ろう。

 シーリンちゃんのメガネの用事はいつまでかかるの?


「そうねぇ、フルオーダーならひと月くらい?だけど、アイちゃん、仕事終わっちゃったの?もう王都に行く?なら、私たちもこっちじゃなくて王都にしようかな。あっちのほうが選べるしね。そうしよう。

 だから、もう用事はないわぁ。行きましょう。」


 あ、待って。もうすこし、あの、ちょっと。



 宿に戻っての糾弾会は、久々に(こた)えた。そんなに怒ることないじゃないか。そんなに心配される? わたし、あなた達みんな合わせたより強いよ。


「アイちゃんは、ベースが頼りないから。それで得したり、逆手に取って利用してることもあるんだから甘んじて心配されなさぁい。」


 と、言われると辛いところもあるかもしれない。幸い、お酒を与えればいい感じにごまかされてくれる人たちなので、その準備だけはしておいた。

 そういえばシーリンちゃんを交えての祝勝会ができていなかった。(うたげ)だ! 宴をしよう!

まだお昼前だけれど、お酒と肉だ! 甘いものも欲しかったら、果物をつくるよ。ヤだなぁ、大丈夫だってば。



 わたしたちが戦場に向かう際、先遣隊と後遣隊に別れていた間の話を、お互い大雑把にしか把握していなかった。そのこともじっくり話せはどれだけでも喋られるし、それ以前、出会ってからの思い出話だって尽きることがない。

 元料理人のメガネくんが宿の厨房を借りて作ってくれた料理も絶品。仮の眼鏡だから盛り付けは雑だというけれど、それを気にするのはシーリンちゃんくらいだ。

 ジュニアと爺やは空気を見てあまり前に出ず、でも思い出話には興味深そうに耳をそばだてている。



 瞬きの間に日が暮れてしまう。友人との楽しい飲み会の時間はあっという間で、気がつけばみんな床に転がっている。

 暗くなった部屋に、肉の匂い、お酒の匂い、不思議な花の匂いが漂う。不思議な気配。なんだろう。意識をそちらに向けたところで、不意に背中を突つかれた。

 ぴぇっ、と口をつきそうになるのを必死で抑えて振り向くと、ヤクタだ。


 耳元でささやかれる。うひゃ。

「あいつら、物陰で盛り上がっておっ始めやがった。見境ねえな。外出るぞ。」


 何が始まっているというの? 見たい。見せて☆ って言おうとする(ハナ)から襟首を引きずられて外に連れ出されてしまう。ゔー。



「銃の弾薬を仕入れなきゃなんねぇ。ジジィの居場所に見当がつかねぇか?」


「あ、朝に会ったよ。そうか、そのときに頼んでたらよかった。」


「言うと思って用意してたさ。金30枚、払えるかい?」


 夜闇のなか、急に後ろから湧き出るように出てきた怪人にヤクタが驚いて派手な音を立てて飛び退く。それはそうと、金30枚はひどい。それって、何発分?


「金30枚なら1000発分くらいだろうな。」

「おいおい、100発分のバーゲンセールだぜ。負からんぞ。」

「じゃあ60発で金10枚にしろよ」「なんでだよ!」


 前置きも何もなしに値段交渉が始まってる。もう、好きにやりなよ。


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