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迷子の無双ちゃん ふわふわ紀行 ~予言と恋とバトルの100日聖女は田舎の町娘の就職先~  作者: 相川原 洵
第二話 領都

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19 ミラード叔父 


「あー、うー、コホン、…あう、あう、」

「落ち着け。オマエら、ひょっとして知り合い?」


 5日ぶりに、友人にして家来のヤクタに会おうと遠出してきたところ、ありうべからざる感じで、その彼女といま家族がご厄介になっている叔父さんが一緒にいるところに遭遇してしまいました。これは、間が悪い。ひょっとしてこの2人、ひょっとしているの? もしそうなら、なんだろうコレ。素直に祝福は出来ませんよ。とにかく、何でもいいから喋らねば。


「あー、ヤクタ。こちら、お父ちゃんの弟さんで、いまご厄介になってる、ミ「あー!」ド叔父さん。え、どうしました、叔父さん?」

「いや、なんでもない。そう、アイシャの叔父のケイヴァーンだ。そうだな、アイシャ。ケイヴァーンだ。」

「?」

「裏の人間は、いくつか名前を持ってるんだよ、わかってやれ、アイシャ。」

「なるほど、うん、ヤクタは頼りになるね。……うわぁ。」


 なんということでしょう。隠れヤバい雰囲気だった叔父さんは、ガチのヤバい人でした。“ネズミ婆”はこのことを知ってたのでしょうか、知ったから殴られたのか、関係なくても殴られたのか、わたしには想像もつきません。泣きそうです。


「なんてこった、ケイヴァーン、オマエが噂の暴力男だったのか。はぇー」 

 ヤクタもわたしと同じように慨嘆します。ひとは見かけによらないこともあるよね。今のところ、わたしの人間関係はこの人以外みんな見かけどおりだけど。


「それ、暴力男って一体どこからの噂なんだ!?」

 ミラード叔父さんが興奮しています。それにしても“ミラード(生まれてくれてありがとう)”の名と“ケイヴァーン(ザ・ワールド)”の名に込められた祈りに、14歳の私は後者に共鳴しますが、母に死なれた一人の女としての自分は前者を隠すことに憤りを感じます。まぁ、別にどうでもいいんですけどね。


「や、や、オマエへっぽこっぽかったから危ぶんでたんだよ。女でも殴れる男ってなら、見直したぜ。」

 親しげに叔父さんの肩を叩きながら。ヤクタの価値観は知りませんが、話が進みません。

「つまりケイヴァーン?叔父さんは革命家のやくざ者で、ヤクタは用心棒に雇われてるのね。それで、2人のロマンスは?」

「ないッ!」

「…カネ次第かな。」


 最悪に色気のない話です。

「叔父さん、先に否定してどうするんです。そりゃぁ、ヤクタの方が背が高いですけど、こんな美人に何の不満があるんですか。性格に露悪的なところはありますけど面倒見はy

「ヤクタ、物陰に2人、素人の見張りがいる。始末してくれ。」


 最低な形で無視されました。

「ちょっと待ってください。そこの2人はわたしのツレです。ヤクタの居場所が分からなかったから、襲ってきた彼らの尻に棒で聞いて、この辺まで案内してもらったんです。で、なにか儲け話があるなら自分たちにも噛ませろって、そこに。」

「最悪じゃないか。」

「始末しろ。」



 世界はドライです。なんとか、殺さなくても彼らの記憶を消すようにわたしが殴るということで、ヤクタを通して叔父にはご納得いただいて、細心の注意を払った角度と勢いで対処(・・)しました。武神様の筋力があれば顎にデコピンで対処できるみたいですが、わたしの場合は全身をバネにして、体重の全部をずんばる丸の先端に乗せて側頭部の一点を打つ技が必要です。そうして、斬るか打つか砕くかも、武神流の使う技次第。

 その後の叔父の顔色が悪かったのは、技の精緻さがわかっていない素人考えというものだと思います。



「叔父さん、わたしが強くなってることは、まだお父ちゃんには内緒でお願いします!」

「あ、ああ、わかった。そのかわりアイシャも、僕がケイヴァーンと名乗って政治活動をしていることは内緒にしていてほしい。ユースフ兄にも、他のみんなにも。」


 なるべく、このひとには近づかないようにしよう。そう決めていましたが、思わぬ秘密の共有みたいなことになりました。「ふたりのヒミツですね」と念押しすると、何だか赤面しながらうなずかれました。可愛い反応が気味悪いです。

 そんなことより、ヤクタと話がしたかったんですが、どう話を持っていこう。悩んでいたところ、


「では、僕はこれで失礼する。ヤクタ、3日後の会合では護衛をよろしく。」


 言い捨てて、足早にミラード叔父は去っていきました。

 今の今まで、どっかに行けばいいのにと思っていたのに、勝手に去られると腹が立つ。あまり良い心の動きとも思えないながら、赴くままの心ではあるので、実際どうなんでしょうね。

 叔父の背中を見送って、わたしはここまで来た目的に、やっと取り掛かろうとする。が、先にヤクタから話し始めます。


「アイシャ、アイシャ。この間の金10枚、まだ持ってる? あったら、貸してくんね? 倍にして返すから!」


 うわぁ、こいつ、もし男だったら(ひど)いダメ男だ。そして、ホイホイ貸しちゃうわたしの姿も見える。まずいぞ、コレ。…でも、現実は女同士だ。シビアに行こう。


「ヤクタの金10枚、もう使っちゃったの!? わたしだって欲しい物たくさんあるのに。あの銃、売っちゃいなよ。」

「その銃のための出費だよぅ。手放したらそれまでだけど、銃を上手く使える人材の値打ちったら、この先天井知らずになるぜ。これは、投資?ってやつさ。それに銃を売るにしても、ちゃんと使えることを証明できなきゃ、あんなの鉄パイプの値段しかつかないぜ。」

「えぇ……。まぁ、言うことはわかるけれど。どれだけ必要なの?」

「金15枚。最初35枚って言われたんだがな。まけさせたんだ。で、アタシの1枚は使っちまって9枚だから、6枚だけでも貸してくれよ。いずれ、20枚返してやんよ。」


 とんでもないことを言うヤツもいたもんです。ニフォンイェン通貨にして1500万イェン必要だから600万貸せって。この女、どうしてくれよう。



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