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迷子の無双ちゃん ふわふわ紀行 ~予言と恋とバトルの100日聖女は田舎の町娘の就職先~  作者: 相川原 洵
第二話 領都

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18 毒蛇スレイヤー 


 手がかりはつかめなかったけど、奢りの昼ごはんはいただけたから、まぁいっか。ちょっと量が多かったかも。ふくれたお腹をさすっていると、改心させた?2人の元悪漢に、イヤな感じで声をかける男たちが登場。2人は「兄ィ…」とかいってペコペコしてる。

 ゾロゾロ現れるゴツい男5人。「女連れたぁ、いい御身分だな。俺たちにも紹介しろや」って、この展開、馴染みができてきて、もはや楽しみになりつつあります。


 周囲の一般のみなさんが遠巻きに眺めています。衛兵を呼ばれたりしたら、身分証が曖昧なわたしが迷惑なので、速やかに対処したい。

 話が早いことに、先頭の男が迫りながら手を伸ばしてくるので、その手を棒で払い、返す刀でふくらはぎの横に一撃。苦悶に身をよじって、お尻を見せたところにフルスイングの一発!

「ンバーッ!」 まず1人。

 これを見た3人が並んで押し寄せてくるのを、崩れ落ちていく最初の男の影に隠れてかわす。目標を見失った3人の後ろに回り、3回転しながら3人のお尻に横薙ぎの痛打。「ンゴッ」「ォアーッ!」「ファー!」

 残った1人は、ビビって前に進めず、人目もあって逃げるに逃げられずで震えていたけれど、覚悟を決めて前に出ようとしたところで、足がもつれて、倒れて這う姿勢になった。みずから叩きやすく尻を差し出すとは、感心、感心。大体の展開が読めていたので、良いポジションは確保済みで大上段の構えからサイドに振り抜く! この日一番の叫び声が響いた。


 観衆から沸き起こる笑いと拍手。何かの演し物と思ってもらえたようだ。さらに都合の良いことに、ヤクタの居場所に彼らは心当たりがあったらしい。


「いッっ……名は知らんがあの“黒豹”って、女じゃな、オゥっ…かったか」

「あぁ、浅黒い肌で、モサモサの黒髪、黄色い目で俺らくらいの背丈で身ぎれいなウッ、奴だ、昨日も。…もっと下の方の広場で見た。めっぽう強い、最近の新顔だ。男か女かは知らん。」


 曖昧なところはありますが、それだけ要素が出てきたら十分です。その、下の広場に案内をお願いしましょう。

「お嬢、兄ィたちはまだ歩けねぇから、俺らが送ってくよ。……うわぁ、重ね皮の作業着ズボンが裂けてらぁ。」

 ちょっと調子に乗ってきたので叩くのが強めだったかもしれません。が、自業自得です。反省なさい。


――――――――――――――――――――――


 大通りのにぎわいも、見覚えがある東砦の辺りまで来ると、ずいぶんと落ち着いたものになる。この程度であれば、アイシャには深呼吸して落ち着けば個人別の気配も探れる。まだ、ヤクタは見つからない。


「広場って、まだ先かな?」

「もうすぐさ。砦の向こうを広場ってか、空き地にしてあるんだ。そこにも屋台やら何やらあるぜ。

「あぁ、あれね、わかる気がする。もし、また騙す気だったらもう1回お尻ぶたないとって思ってたよ。」

「勘弁してくれぇ…」


 などとじゃれ合いながら、砦の門をくぐる。ここでは、大した荷物がなければ呼び止められることもないらしい。本当に? と思いつつも、問題なく進む。


「広場だね。ありがとう、案内助かったよ。もう帰っていいよ?」

「そりゃねぇよ、お嬢。なんか美味い話があんだろ、ひとつ咬ませてくれよ。」


 知らないよ、そんなこと。そう言って追い払うが、一旦は去ったものの物陰から伺われている。厄介な上に薄気味悪いが、構っていても仕方がない。アイシャは広場の中央に立ち、軽く目を(つむ)って神経を研ぎ澄ませ、気配を探る。…本当に居た。歩いて5分ほどの距離。誰かと行動を共にしているようだ。



 格好をつけて、さりげなくヤクタの前に登場しようと思っていたアイシャ。会えたら、ヤクタは喜んでくれるだろうか、懐かしがるだろうか。勿体(もったい)をつけて歩いていた足はすぐに小走りに、そのうち、息せき切って走るようになっていた。


「――ヤクタ!」



「あ? おぉ、何してんのこんなとこで。」


 息が乱れて次の言葉を紡げないアイシャに、いかにもつれない、さっきトイレに行って帰ってきたくらいの声がかけられる。その無造作趣に拍子抜けしながらも、ちょっと嬉しくなって、15呼吸ほど息を整えて言葉を続ける。


「暇になったから、来ちゃった。そっちはどう? あ、お連れさんがいるのよね、邪魔しちゃった?」

「ああー。そうそう、オマエに会わせたいと思ったヤツがいるんだよ。ところでアイシャ、政治の話に興味ある?」

「ない。」

「せめて言い終わるまで待って否定してくれよ。アタシも興味無いけどさ。儲け話だよ。革命。知ってる? アタシは知らないけどさ。腕っぷしがあれば金になるッてんで、これからアイシャを探して話をしようと思ってたんだよ。」



 どうしよう。ヤクタが、マルチな活躍を求められる話に騙されかけてる。動揺を隠せないアイシャが、とにかく場をつなごうとお連れさんに目をやる。そしてアイシャの目は驚愕に見開かれる。その相手も、同じか、それ以上に狼狽している。

 ヤクタは、特に反応を気にせずに続ける。


「アタシもそりゃあ、腕に覚えがあるし、オーク族の毒蛇斬りの片割れを努めたんだから客観的にも相当のモンだと思うぜ。でも、そのアタシが間違いなく世界最強だと思うのが、アイシャ武神流さ。だからさ、…ん?」


「叔父さん?」

「やっぱり、アイシャさん、なのか? なんで? え?」



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