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迷子の無双ちゃん ふわふわ紀行 ~予言と恋とバトルの100日聖女は田舎の町娘の就職先~  作者: 相川原 洵
第十一話 決戦前夜

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168 武神会談 2


 決闘と決戦を数日後に控え、一室の中で見知った顔ぶれと二柱の神様が話し合っている。


[カムラン家との近縁があったからこそ、カーレン家のシーリンに力を与えられたのだ。カムラーン兵術道場の娘だからと力を与えられるものではない。]

「いや、ウチのカーレン家は家名だけお金で買った他所の家で、たぶん血の繋がりは無いと思いますぅ……」

「その上、今では家出娘だもんねぇ。」


 はじめのうちこそ緊張があったものの、そろそろ普通に馴染んで、和気あいあいめいた空気も流れつつある。

 家出の件については、カーレンちゃんもウンウンと首を縦に振っている。


[血統は重要ではないのだ。どうせ同じ人間であれば、さほどの違いはない。同じ名の一族を名乗るめぐり合わせ(・・・・・)が大事なのだ。まぁ、わからなくても良い。それから、家出なんどは、若い間に誰でもやることだ。と、いうには少ぅし、齢がいっているか? まぁ、構わん。我が子もどうせ本気ではあるまい。構わん構わん。]


 わぁ、カーレンちゃん、顔が真っ赤だ。

 とはいえ、カムラーン流が戦力外ではちょっと都合が悪い。せめて、ゲンコツちゃんのパワーアップを図りたい。


「理屈はわかりませんけれど、納得はしました。

 でも、あなたの神託の声が大きかったせいでぬか喜びをするハメになって迷惑した、同門の直弟子のゲンコツちゃんに何かフォローをあげてください。カムラーン流があのサウレさんにザコ扱いされるのはあなたも業腹(ゴーハラ)でしょうに。」



 とりあえず遠慮なく、言いたいことを言ってみる。ダメで元々だ。

 ゲンコツちゃんは青い顔で、首を振りながら袖を引いてくる。ダメ?そっちが? でも、わたしの命がけの案件だ。強くなってもらわないと。


[不敬は死に値するが、友を気にかけるその姿勢は良しとしよう。

 エルヤやサウレ、モルヴァーリドの、あの自分の力しか考えぬ意地の汚さは(なれ)にも見せたかったものだ。]


[ケッ! “我利我利(ガリガリ)亡者のカムラン”がナニをぬかす。アイシャ、コイツはな、]


 昔の話は、どうでもいいです。聖人君子を他人に求めることはやめました。で、何がもらえるんですか?


[……我が人の身だった頃の死の床でひらめいた、神を斬るための剣技が、ひとつある。完成に至らんかったものだから、我が子カーレンに伝えた技の中に入ってもおらん。これを伝えてやろう。

 いまだ理論だけの技ゆえ、完成させてみせよ。サウレの使徒に潜む神気を斬り祓うこともできよう!

 …モルヴァリドは屑だったが、同じ時代の生き残りとしての(よしみ)程度の親しみはあった。サウレを討って弔いとしてやらんこともない。しっかり、神命を果たせよ。]



 本当に!? 神を斬る、そんなことができるなら途方に暮れていた問題があっさり解決だ。ただ、できるのなら、ね。

 でも、それでわたしやカーレンちゃんを斬ったら、この神様たちも倒せるの?


 聞こうと思ったら突然、ゲンコツちゃんが頭を抱えだし、「フゴッ」と一言漏らし、倒れ伏した。

 フゴッ、って。男らしいわ。でも、もうちょっとかわいいポーズで倒れようね。


[汝が急かすものだから、強引に技を伝授したら頭がパンクしてしまいおった。少し寝たら治る、気にするな。]


[まったく呆れるわ。神を斬る技だと。何を企んでおるかと思えば、姑息な裏技を。

 斬りたいものが斬れぬなら、一つの技を鍛えるしかないのだ。あれこれ、チョロチョロとその場しのぎでごまかして、次の斬れぬ壁を見つけては、またコソコソ裏技探しか。]



 また、神様がフランクに憎まれ口をたたいている。でも、わたしとしてはあまりストイックになりきれないので、その場しのぎでしのいでいく方向性はわりといいんじゃないかと思っている。言わないけれどもね!


 オーク組は話に参加しかねて目を白黒させていたけれど、ここに来て「我々は、何と戦っているんだ?」なんて耳打ちしあってる。でも、モルモルはあなたサイドの人だったでしょうに。

 …ところでさっきから黙ってる、ヤクタは言いたいこと何かないの?


「アタシか!? すまん、他人事だと思って聞いてなかった。…怒るなアイシャ。

 とっつぁん、もしアイシャが負けそうになったらアタシも出るから手を貸してくれな。そんだけかな。」


 やだ、イケメン。あ、それなら最初からわたしとヤクタの2人で戦うって、どう?


[今からの準備では、一撃分、武神流の真髄の攻撃ができる力を与えられるぞ。ただ、その一撃で心臓も筋肉も破裂することになるが、まぁ、それくらいは仕方ないよな。]


 また、この神様は無茶苦茶を言う。ダメだよヤクタ、破裂しちゃあ。

 これって、わたしが負けられない理由をひとつ増やされただけじゃん。ひどい。


 結局、武神様は役に立たなかったけれど、聞きたいことは聞いたからヨシとして、お引き取り願おう。これ以上話しても、余計な負担を増やされそうだ。


「諸事、お聞かせいただきありがとうございました。武神さま、武神さま、お帰りください…」

「ちょっとアイちゃん、そんな、コックリさんじゃないんだから。…あ、大将軍の髪の毛、やっぱり要りますぅ?」


[要らん、要らん。済んだなら、帰るぞ。またな…]

[欣快であったぞ、子よ。また会おう…]


 あぁ、帰ってったね。どっと疲れた。ふぅ。



 なんだかいろんな話があったけれど、まとめると、


▷武神さま的には全然負ける気がしていない。モル魔法も、よく見ればわかるらしい。

▷カーレンちゃんは無理にバトルしなくてもカムラン神さん的にはOKらしい。良かった。

▷カムラン神からゲンコツちゃんにも未完成の秘奥義を伝授してもらった。でも、パワーアップ度合いは微妙なので、どうだろう? 回復次第、要相談。

▷ヤクタは一度きりのパワーアップ手段を得た。けれども、使うとヤクタが破裂してしまうらしい。絶対使わせない!

▷雰囲気的にはカムラン⇨モルモルの好感度があった気がする! 逆矢印は、なかっただろうね。


 そんなところだ。

 あと2日、忙しくなってきた!


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