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166 決戦対策


 脱出行は、意外にもスムーズに済んだ。

敵の指揮が乱れていたからではあるだろうし、あるいは決闘イベントが流れないようにサウレ神が邪魔をしてくれたのかもしれない。


 べ太郎的には、間一髪ではあったらしい。よくわからないけれど、確かにそう言ったほうが盛り上がるだろうから、わたしも周りの人には間一髪だった、と言っておこう!


 そうして、バタバタとわたしたちの陣まで戻ってきた。


 仕事はしっかりできました! と喜んでいたけれど、これもべ太郎に言わせれば「なんでお前が真っ先に喧嘩を売ったんだ! 禁錮になったお前らの使者と同レベルだぞ」なんてブツブツと。

 やぁね、細かい男は。



 サっちゃんへの報告と善後策は2人に任せて、わたしは十字軍の面々と決闘のための相談。


 まずはオミード氏と、サウレ流対策を練る。

 次いで、カーレンちゃんとゲンコツちゃん、2人のシーリンちゃんとカムラン神が妙なことをしてこないか確認したい。

 あと、ヤクタとも顔を合わせて、武神様に恨み言を述べたい。

 最後に、ハーさんに決闘の後の決戦をお任せしちゃうことについて、具体的にどうこうのお話はできないけれども激励はしておきたい。何がどうというわけではないけれど謝ったほうがいい気もする。

 オマケで、グリゴリィさんとマリアムちゃんにも挨拶してモルモルのお悔やみを申しましょう。


 そんなところだ。まずは、オミード氏。



「我が流派の特徴は、後の先を重視した守りの剣だということです。

 カムラン流は派手な動きで先の先をとる攻めの剣。武神流は、元来、敵に勝負をさせない激しい攻めを信条とする、これも先の先をとる剣です。…姫様は相手の出方をよく見て対処されることが多いようにお見受けしますが、まあ、世評的には、ということで。


 で、我が流派の弱点、ですか?

 う~む…他流と比べると、どちらかというと1対1の対人戦に強く、集団の乱戦になると力まかせ感が出てしまう、とは言われています。いや、タイマンの決闘の話でしたな。

 …銃で顔面を撃たれても、ハーフェイズ殿に散々に斬られても傷ひとつ無い敵、ですか。ちょっと想像がつき難く……。

 私でよければ今日、明日、時間の許す限り稽古のお相手ならさせていただきますが。」


 まぁ、ここで話すだけで解決の目処が立つとは思ってないし。でも、何も知らないよりはちょっとマシだろうから後で練習には付き合ってもらおう。

 次は、シーリンちゃんたちとカムラン神だ。



 サウレ神は「カムラン神の使徒も一緒に、2対1で戦ってもいい」みたいなことを言ってたけれど、どう?


「まさかぁ。“神の子”を譲るためにいろいろ働いてるのに、ここで私が目立ったらダメでしょ。」

「ジブンは、直接は見れてないんス。でも、雷とか火柱とか、あの中に飛び込んでいくのは、ちょっと……」


 でしょうね。頼りないわぁ。

 試みに、ひさしぶりに武力測定。ゲンコツちゃんは、65。さすが、15歳の女の子としては抜群に強い。でも、普通に弱いより危なっかしい数字だ。あまり危険にさらしたくない。


「その、カムラン神様はお風呂場以降、出てきた?」

「とぉんと、ご無沙汰だよぅ。あの神様、何なの?」

「ウチの神様なんで、悪く言わないでほしいっㇲ…」


 ウム、これでは仕方ない。放任してくれるのはありがたかったけれど、今はもう、そういう段階じゃないからね。ヤクタの真☆聖女パワーで呼び出してもらおう。できるとは聞いていないけれど、できないとも聞いてないから、やらせてみるんだ。

 それで、いまヤクタはどこで何してるのかな?


「え、あのおっちゃん、いつの間にか聖女になってたのぉ? いや、それ、どうなの? ちょっとそれは、私からも問い詰めないといけないわぁ。」


「…ヤクタ姐さんは、まだアイシャちゃんの部屋のベッドで寝てるッスよ。アレ、何をやったんスか。ってか、こっちよりあっちより、真っ先に行ってあげてくださいッスよ。」


 返す言葉もなく、いまだ道に不案内なのでゲンコツちゃんに先導してもらって自分の部屋に戻る。やっぱり、わたしって情が薄い人間なんだろうか。



 ヤクタは、わたしたちが部屋にはいるとベッドから体を起こして迎えてくれた。でも、やつれて、目の下のクマが酷い。

「ヤクタ、だいだだっじょだだっぶ大丈夫!? なんか死にそうじゃない?」


「落ち着け。死にやしねぇよ。すこぶる具合は良い。ただ、お前の回復魔法?と、それまで塗られてた薬とか生理止めに飲んでた“馬の爪”の相性が悪くてな。ちょっと目が回ってただけさ。」


「馬の……爪?」



「平たく言やぁ堕胎薬だ。何かの木の実を煎じたものだが男の医者には効果なんかわからんから、胡散臭い偽薬の総称でそう呼ばれてる。

 つっても、飲んだらピタリと生理がなくなるから嫌な時期に大事な仕事があるときは便利なもんさ。薬とは名ばかりの毒だから、体から毒を出されたときに馬の爪も一緒に出てきて、ゲーゲー苦しんだわけな。」


 それは、知らぬこととはいえご迷惑をおかけしました。いまは、苦しくない? 変なもの飲んじゃダメだよ?


「こっちは、もう一晩も寝れば前より元気に治るよ。それよりオマエはどうなんだ、引きこもりはもういいのか。」



 そう、それ。

 引きこもったのは、あれはあれで必要なことだったとは思うけれど、我ながらひどく無駄な時間を浪費したものだ。面倒かけてごめんよ。


 それより、決闘に勝てるのかどうか、空模様が怪しくなってきたから神様と相談しなくちゃいけない。

 ヤクタ、呼び出し係をお願いね。


「マジか。エルヤちゃん係、なってみるとウザいな。」


 そんなこと言わずに。頼むよ、もぅ。


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