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160 使者


「緊急事態の発生につき、第19回緊急対策会議を開く。日に2回、呼び立てることになったが危急の際であるゆえ、知恵を絞って意見を出すように。」


 朝のメンバーから、ヤクタが倒れて回復のための睡眠中。替わって、一見ぽんやりしているアイシャが座に並んでいる。



「議題に移る前に、一同を代表して小官から述べたき議がございます。」


 重々しい面持ちで、王子に次いで第二位の重責にあるナムヴァル将軍が発言を求める。

 この場合「何か。申せ。」と王子が応えるのを待つのが通常のやり取りだが、今回ばかりはナムヴァルは返答を待たずに、


「おめでとうございます。」


 居並ぶサディクの配下たちも深々と頭を下げ、「おめでとうございます」と唱和する。


「アイちゃんも、よかったね♡」とは、カーレン。ハーフェイズも勿体(もったい)をつけてうなずく。口笛を鳴らしたジュニアは、流石に場違い感に気づいて身を小さくする。

 噂の早いこと、()くの(ごと)しであった。


「私事だ。このような際に貴重な時間を割く話題ではないな。」

 照れた様子で目線をそらすサディクと、赤くなってひたすらまごついているアイシャ。


 サディクも、見た目はゴツいが、まだ18歳の少年だ。初々しい2人に周りの大人達はほっこりと和んだ目線を向ける。が、言い出しっぺのナムヴァルが大きめに咳払いをすると、みな真面目な顔になって本題に向かう。



 諜報部隊からの情報では、昨日にはモンホルース軍の砦になっている旧東フィロンタ領都に、新総司令イライーダ大将軍が赴任してきたという。

 元の総司令・メレイの死後40日近くが経っているが、その訃報がモンホルースの皇帝のもとに届けられ、後任が決定し、大陸の別方面への侵攻に従事していたイライーダが準備を整えて移動してくるには超特急で急いでもそれくらいの日数がかかるのだ。


 彼女、新総司令と実妹であるマリアム副司令は以前より行動を共にしていたが、今回、マリアムの発案により途中で奇襲船団が編成され、さらなる活躍のための試金石として独立行動が認められていた。


 齢の離れた妹を溺愛していたイライーダが、奇襲船団の失敗とマリアムが虜囚になった報を受け取ったのは、任地に入城する数日前だった。


 知らせを聞いた新総司令は、怒りのあまりその場の占領地の宿場町を焼き払った。

 奇襲の失敗は責任者の失態でもあったが、このすさまじい様相のために彼女を揶揄する(からかう)声は皆無であったという。



 そうして、戦陣に現れたイライーダは全軍に向けて何らかの意志を表明し、何らかの作戦行動の準備を急ピッチで進めていた、らしい。その何らかの中身を探るのが諜報の仕事だろうが、万能でも魔法でもない以上、いろいろ限界がある。

 これが、今日の昼までの報告。


 何らか、ってなんだとは思ったけれど、他の情報とあわせれば、まぁ、そんなに複雑なことは言ってないんだろうなぁとは考えられる。

 そういったことがあった上で、さっき、その砦、というか領都が崩壊してしまったわけで、どうなんの、どうすんの、という会議なわけだ。



 朝には、例の邪神サウレは「決闘を大決戦のプレ・イベントにして全軍大注目の舞台に仕上げる」と言っていたから、その大決戦になったときの兵隊の配置とか作戦を話し合っていたらしい。


 ちなみに、こういう時、決闘といったら主に一対一で衆人環視のもとで勝負を決めること、決戦といったら、この一回で戦争の決着が決まっちゃうような全軍挙げての大規模な戦いのことだ。

 わたしも、ふんわりとは理解していた。もし理解を間違えてたらどうしようかと焦りもしたけれど、大丈夫だったからよかったです。



「今までは敵側に責任者が不在で交渉ができなかった。敵も引きこもって時間稼ぎするばかりだったしな。やっと事態を動かせるとなった途端に、なんだか崩壊しているが、まずはこちらから使者を派遣して、相手を探ってみようと思う。」


 つまり、この会議の議題が派遣する使者の人選なわけだ。

 真っ先に手を上げたのは、女騎士ナスリーンさん。


「相手が女将軍なら、探りを入れるのに同じ女の私が適任でしょう。」


「余も、そう思うがあまりにも危険だ。将軍はどう思うか。」

「我が本家の姫ですが、本人が望むなら殿下にはお気遣いなきよう。」


「あ、そういうことならわたしも。噂のファイヤーイライラ大将軍、見物に行きたいです。」


 わたしも、横から挙手して発言。政治の駆け引きとかはできないけれど、戦力にはなると思うよ。邪神サウレに会ったら決闘の相談もできるかも、だし。

 うーん、みんな渋い顔。信用がないのか、却下されないのは信用があるからか。


(それがし)もお供しましょう!」とハーさんが挙手するけれど、あなたは十字軍の面倒を見るのが仕事。どこまでも立場が邪魔をしてくるめぐり合わせの人生だね。


 それから、話が実務的なことに移っていくとわたしは眠くなってきて、結局どうなったかはちょっとわからない。時折なにか聞かれたときには適当にうなずいておいた。あとでカーレンちゃんに教えてもらおう。




ゴールデン投稿週間でいい感じにラブ展開が過ぎていきました。

次回8日から隔日投稿に戻ります。せっせと書き溜めていかねば。

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