プロローグ
連載版を始めました!このプロローグは短編のものをそのまま使っているので内容を覚えてるという方は1話からお読みください。
内容を忘れてしまったり初めて読む方は是非読んでくれるとありがたいです!
「美怜さん」
「ん何?」
「僕達別れませんか」
「え?」
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僕は元々貧乏な家庭だった。
「おい!早く金稼いでこいよ!」
「ごめんなさい」
「ちっ。高校なんて行かずに卒業したら働けよ!」
「え…」
母は僕が中学生になる前に天国に行ってしまった。
父は一言で言うとクズな人だ。
仕事もせずに毎日パチンコとお酒三昧。
なので僕は中学生から新聞配達のバイトなどをして何とか生活できるお金を作っている。
高校は先生から県立の特別な奨学金制度を使って行けるようにさせてくれたのに…
僕はこのまま父親に使われ続ける生活が続くと思っていた。
ある日、高校受験も近いと思いながら通学しているとおじさんがフラフラした様子で歩いていた。
「危ない!」
曲がり角でおじさんが自転車とぶつかりそうになる。
自転車の方も結構急いでいる様子だ。
僕はおじさんを突き飛ばし、代わりに自転車に当たった。
「おい!大丈夫か!」
さっきのフラフラと違い、シャキッとしたおじさんが近寄ってきた。
良かった…当たってなくて…
僕も最近の疲れからか意識がどんどん遠のく。
気づいたら見慣れない天井、ベットの近くには高そうな壺。
「え?病院じゃない?」
ここがどこだが分からなくなっていると
「目を覚ましたみたいだね」
「あなたは…」
「君に助けて貰った人だよ」
「良かった〜」
なんともないようで本当に良かった。
「君に生死をさまよわせるようなことをしてしまって申し訳ない。実は病院では治しにくいところがあったから我が社の医療機器を使おうということで移してもらったんだ」
「そうなんですか…」
医療機器メーカーの人なんだ…。病院よりも性能の高い医療機器なんてあるのかな?と若干疑いもしたけど
このおじさんは悪い人ではなさそうだから信じてみることにした。
「君には本当に感謝しかない。ありがとう」
「全然大丈夫ですよ。むしろこちらこそ治してくださってありがとうございます」
誰かにありがとうと言われるのは久しぶりだった。
学校で誰かを助けてもありがとうと言われるのはあまりなかったから嬉しかった。
「ちなみに僕はどれくらい生死をさまよい続けたのですか?」
「2日くらいかな」
「2日も!?」
まずい!だいぶ時間が経っている。お父さんに怒られる。
「ごめんなさい!僕家に帰らないと!あの治療費は明日持ってきます!」
体は動かしても全然痛くない。むしろ前より動かしやすいような気もする。
治療費については母さんからの遺産は一部僕が持ってるからそれで何とか…あまり使いたくなかったけどこればっかりはしょうがない。
「いいよ治療費は。それにあの家に帰る必要もない」
「え?」
「実は色々調べさせてもらったんだ。私はあの時、徹夜明けで体が上手く動かなかったけど君のことは気になってた。そのくらいの年齢だと色々なことをしたがるはずなのに君はこの人生を捨てたように見えていた」
「そうですかね…」
確かに未来というのはそんなの考えたことがなかった。
「だけど君は私を助けてくれた。赤の他人なのに。もしかしたら自分が死ぬかもしれないのに」
「それは…!」
そこからなんて言ったか覚えていない。ただ泣いて、今までのことを吐き出すように喋った。
その間もその人は頷いて聞いてくれた。
「話してくれてありがとう。そしてこれから君には輝かしい未来を送ってほしいんだ」
「輝かしい未来なんてあるはずないじゃないですか!」
「あるよ。私が作る。若田財閥の名に賭けてね」
「若田財閥…?」
僕でも分かる日本有数の財閥。その中でもトップの
「私は若田拓也。若田財閥グループの社長だ」
「えー!」
「だから、ね?私に君の人生の手伝いをさせてくれないか?」
僕は枯れたと思っていた涙がまだ出てきた。
人生で初めての恩人に会えたような気がした。
そこからは早かった。父もお金をあげる代わりに息子をくれと言うとすぐに差し出してきた。やっぱりクズなのかもしれない。
さらに僕には大きな問題が残っていた。高校のことだ。
高校は今更受験出来るわけない。そう思っていたが
「それだったら若田高校に行こうか」
「若田高校!?」
日本のお金持ちが通う高校の名を出してきた。
「もちろん全額出すよ。それにこれからは君も私たちの家族だから当然、衣食住も保証する」
「え!?それは自分でバイトするので…」
せめて生活費くらいは自分で稼ぎたい
「ダメ。お小遣いも月に30万支給するから」
「えーーー!」
社会人の月収くらいある。
「その代わり何かさせてください。そうじゃないと僕…」
罪悪感に押しつぶされそうになる。
「それだったらうちの娘の執事兼彼氏をしてもらおうか」
「はい?」
いまいち意味が理解できずにいると
「自己紹介して」
入ってきたのは銀髪の僕と背が同じくらいか
ちょっと高い綺麗な人。
「若田美怜」
「えっと佐藤雅也です」
「それじゃあ雅也君、頼んだよ」
「わ、分かりました」
ここから春休み執事見習いとしての生活が始まった。
「美怜さんお疲れ様です」
「お疲れ」
美怜さんは高校2年生になるらしいけど、いくつか会社を任されている。
僕はそのスケジュールの管理をしたりするのが仕事。
「明日は?」
「明日は9時に…」
スケジュールの管理は大変。けど何とかミスせずこなせてはいる。
一緒にいて思ったのは美怜さんはクールな人だ。
話すことは仕事関係の話で私的な会話はあまりしない。
それでも一応僕達は付き合っていることになっている。
あの時
「僕なんかと付き合うのは…」
やんわり断ろうとしたけど
「これは美怜のためでもあるから」
「美怜さんはいいんですか?こんな人と付き合って?」
彼女本人から言えばと思ったが
「いや、別に」
と言われ結局付き合うことになってしまった。
「来週からは学校が始まるけど準備はした?」
「はい。一応高校1年生で習う範囲は勉強してあります」
「そういうわけじゃないんだけど…」
ボソッと何か言われたけど聞き取れなかった。
「あのー、何か言いました?」
「いや何もない。頑張ってね」
初めて褒められたかもしれない。
褒められる程のことしてないと思うんだけどな…
勉強は
「高校でも美怜の執事ということで行くから少し美玲の側にふさわしくなれるようになって欲しい」
と拓也社長に言われたから少し勉強しておいた。
ちなみに拓也社長という呼び方はあっちから頼まれたのでそう呼んでいる。
長いようで短かった春休みは終わり、高校の入学式。
「それでは理事長の若田拓也さんからのお話です」
「みなさんこんにちは…」
春がなんちゃらとかの話が始まった。
拓也社長には申し訳ないけどここは聞き流していた。
昨日はなんやかんやあってあまり寝れていない。
なんとなく聞き流しているうちに聞き逃せないことが起きた。
「実は私の子供に近い人がいましてその人は美怜の執事をしてもらっていて今年この高校に入学したので代表として挨拶させていただきます」
え?
「それでは生徒代表として佐藤雅也さんお願いします」
まったく聞いてなかったんだけど?
こういうのって成績が1番いい人とかが…
拓也社長に手招きされる。
行くしかない
「ここに書いてあること読めばいいから」
と言われた。
そこから緊張から何言ったか覚えてないけどちゃんと言えたと思う。
「まさごめん!」
「全然大丈夫ですよ」
「本当は成績が1番いい人にしてもらうんだけど熱出したみたいでそれだったらということで…」
まさというのは美怜さんにいつもまさと呼ばれてるから拓也社長もそう呼び出した。
そして入学式の後
「美怜さん、少し休んだ方がいいんじゃないですか?」
入学式の間も打ち合わせをしていた美怜さんも疲れているはずなのに夜の10時になっても仕事をしている。
「明日から授業も部活も始まるから週末のプレゼン資料は終わらせておきたいの」
「それでもそろそろ寝た方が…」
「じゃあ、ちょっとやっといてくれる?」
「分かりました」
「え、いやでも、まさ資料作成なんてした事ないでしょ?」
「少しは勉強したので僕でも出来ると思います。なので今日はゆっくり休んでください」
とは言っても人前に見せるような資料の作成はしたことがない。けど美怜さんには休んでて欲しいから頑張るしかない!
「本当にいいの…?」
「はい!」
「じゃあお願いできる?」
「任せてください!」
「出来なかったら途中で切り上げてもいいからね?」
「中途半端にはしませんよ」
「そう」
よし!頑張るぞ!
ちょっと日にちを超えてしまったのは内緒。
翌日
「美怜さん、こちらプレゼン資料です。美怜さんのパソコンにもデータは保存してあります」
「本当にやってくれたの?」
「美怜さんの執事ですから!」
「じゃあ見るね」
「あ、ちなみに昨日の残りと新たに修正した2つを作りました」
案は複数出すって春休み読んでいた本に書いてあった。
「2つ!?一応見るね」
修正案はちょっと工夫しただけだからあんまり変わらない。僕なんかのはちょっと使いづらいかもしれない。
「すごく工夫されてる…」
「ありがとうございます」
「朝から何話しているんだ?」
拓也さんも起きてきた。
みんな朝が早い。
「まさがね、プレゼン資料作ってくれたの」
「いや美怜さんのをちょっと付け加えただけで…」
「まぁ春休み、まさ色々勉強していたからな」
「そこまでではありませんが…」
「謙遜しなくていいよ。それほど美怜のためにしてくれてるっていうことだから」
「ありがとう」
「どうせなら資料とかはこれから僕が作りましょうか?」
ちょっと調子に乗っているかもしれないと思ったが
「それじゃあお願いしてもいいかな?」
「はい!」
美怜さんに期待されていることが嬉しかった。
そこから朝食が運ばれてきていつものように話しながら食べていると今日の学校のことについての話になり
「そういえばまさはテニス部に入ることになってるから」
「え!?」
この高校では好きな部活はあらかじめ決めておくというのが恒例らしい。
「私と一緒は嫌?」
「いえ全然!」
内心はめちゃくちゃ嬉しい。
けど美怜さんにとって僕は都合のいい執事なんだろうな〜。若干嫌われている部分もあるかもしれない。
それでも拾ってもらった恩はあるからね。
財閥令嬢であっても登下校は歩き。学園内に何台もの車があると邪魔になるからと拓也社長に聞いた。
その間会話らしい会話は1つもせずお互い目もあわさなかった。
それで迎えた初めてのホームルーム
「えーそれでは1人ずつ自己紹介してください」
僕の順番が着々と近づいてくる。
ついにきた。
「佐藤雅也です」
と言うと周りがザワザワしだした。
「あいつ、代表の?」
「ということは美怜先輩の執事ってこと!?」
さっきまで静かだったお嬢様まで騒ぎ出した。
注目浴びる結果になってしまった。
その後一部の人から美怜さんについて聞かれることがあったけど僕のことはあまり聞かれなかった。
でも、ちょっと美怜さんが褒められるのを聞くと誇らしい気持ちにもなった。
それから授業も終わり部活も始まった。けど……
「お前、美怜さんの執事か」
「はい!佐藤雅也って言います!」
「知らねーよ。とりあえず美怜は俺の彼女みたいなものだから。余計なことしたら許さねーからな」
え…美怜さんに彼氏…
スパンッ!
「きゃー!美怜さんかっこいい!」
女子側のコートでは美怜さんが相手を圧倒している。
「お疲れ美怜」
「お疲れ」
「この後カラオケ行かねー?」
「行かない」
「そうか」
そっか。拓也社長は美怜さんの好きな人を知らないから僕を彼氏にしようとしたんだ。
最初からなれるはずがないんだ…
「おーい1年は今日はここまでな」
「「「ありがとうございました!」」」
本当は美怜さんを待つ予定だったけど
今日は1人で帰ろう。邪魔しちゃいけないし。
しばらく歩いていると地面に雫が落ちる。
街灯がボヤけて見える。
「あれ?僕なんで泣いてるんだろう?」
父親に殴られても泣くことなんてあまりなかったのに。
僕は我儘だったのかもしれない。
財閥グループの社長に拾われて将来も保証してくれて、綺麗でカッコよくて素敵な美怜さんと一緒に仕事ができて。それでさらに少しでも好きでいてくれてるっていう希望を持ってしまった。
「馬鹿だな〜」
そこから1ヶ月くらいとにかくあの彼氏さんに迷惑をかけないように心掛けた。
「おはようございます」
「おはよう今日は一緒に…」
「僕先行って勉強しています」
「そう、行ってらっしゃい」
「お前知ってる?美怜先輩、お前と同じテニス部の海先輩と付き合ってるらしいぜ」
最近朝早くから一緒に勉強している友達に言われる。
「知ってるよ」
「お、さすが執事。でもさお前的にはいいの?美怜先輩のこと」
「美怜さんが幸せならいいんじゃないかな」
「なんかお前すげぇよ」
「それよりテストが近いから頑張ろう」
「そうだな!」
逃げるように僕は勉強した。
~~~~~~~~~~~~~~~
「美怜どうしたの?」
「うん?いや」
「あ、もしかして反対側の校舎から雅也君見つけようとしているとか?」
「ち、違うから!」
「そこ私語は慎みなさい!」
「すみません」
前はこんなふうに怒られることもなかった。私がこうなったのも全部まさのせいかもしれない。
最初会った時から一目惚れした。
正直お父さんを助けただけでこんなに父さんが執着するのが意味が分からなかったけど、聞くところ彼は家庭環境が複雑みたいでうちに住まわせようとしたみたい。
それでも年下とはいえ、何してくるか分からない奴と一緒に住むのは抵抗があった。
学校にいる猿どものような奴らと一緒だと思ってた。
けど違った。
私よりちょっと背が低く可愛らしい人だった。
私は小さい頃に母を亡くしたから分からなかったけどこれは多分母性だと思った。
お父さんが守ってあげたいという気持ちも十分理解出来た。
めちゃくちゃ優しいのにも惚れた。
それから私はお父さんに言って執事兼彼氏にしてもらった。
私は普段あまりしゃべるタイプではなかったから
それこそ口数が少なかったけどまさからちょっと視線を感じたり優しくしてくれるところから私を好きでいてくれていると思った。
しかも彼はすごい努力家で春休みで高校1年生の内容も勉強してた。
私が疲れてて仕事を任せてしまった時は絶対嫌われたと思っていた。
それでも翌日には完璧な資料を作って持ってきた。
正直私のよりもちゃんとしていた。
私のために頑張ってくれるからこの先も大丈夫だろうと思っていた。
ちなみに私がお父さんの跡を継いだ時はまさには執事だけさせてたっぷり甘やかす予定だ。
しかし、高校入学してからまさの様子が変わった。
この前だって
「これ、今度の化粧品のメリットとデメリットを集計したデータからまとめたものです」
「ありがとう。あのまさ良かったらお茶でも…」
「すみません、来週テストで勉強したいので。失礼します」
「そう。頑張ってね」
距離を取られている気がする。
理由は探偵事務所にも頼んだが分からず、常日頃からボディーガード達に監視させているけど情報は得られず。
他に好きな人が…と考えたがそれといった人は居ないみたいだ。
そんなことを考えているとチャイムが鳴った。時間が経つのは早い。
「今日はここまで。しっかり復習するように」
「美怜」
気持ち悪い猿が来た。
「何?」
「今から一緒に勉強しね?」
「は?する訳ないでしょ?」
「美怜さん冷たすぎー少しは海と遊んであげなよ」
「それにカップルらしいことしないと海に嫌われちょうよ?」
「俺はそんなことしねぇって美怜のこと好きだし」
後ろで雌豚どもが騒ぐ。
これだからキラキラしたやつは好きじゃない。
クラスでも最近
「海と付き合ってるの?」
とよく聞かれるのもこいつらのせい。
私はまさと付き合ってるのに。勘違いして欲しくない。
けど1年生の時からずっとこんな調子だから大々的に見せつけると浮気と勘違いされるかもしれないから出来ない。
まさとイチャイチャしたいのに。
けどまさは私のことどう見えているんだろう。
まさからみたら私はちょっと冷たい人に見えるかもしれない。
ちなみに今日はテスト前の最後の部活の日だ。
まさを見ているとだいぶ様になってきている。
正直1年生の中でずば抜けて上手いと思う。
いや過剰評価のし過ぎかもしれない。
けど見ていると海が1年たちをこき使わさせている感じがする。
やっぱり猿だなと思った。
まさにもさせているからちょっとボディーガードでも呼んで締めてもらおうかなとも思った。
女子と男子は基本的に別れて練習しているから話しかけに行くのは難しいけど、まさがテニスしている姿を見れるだけでも良しとした。
それから1週間経ってテストが終わった。その間も事務連絡以外は話すことはなかった。
そして今日は順位が張り出される日。
「すごい!美怜満点じゃん!」
「本当だ」
「美怜さんいつも1位だよね!」
周りからも言われるが私のことはどうでもいい。
それよりも
「あった」
1年生の順位を見る。
そこには
1位: 1000点 佐藤雅也
「すごい」
まさが満点…
思えばずっと勉強してた。
本当に頑張り屋さんだ。
今日はまさに頑張ったご褒美としてプレゼントをあげようと思う。
部活の休憩で言おう。そう思い
「まさ!」
「あ、美怜さん」
「今大丈夫?」
「多分大丈…」
「おい、1年。先生が呼んでたぞ」
「分かりました」
あの猿、アマゾンに放置しようかと思うほどウザイ。
「海」
「なんだ?」
「私、海のことただの猿にしか思ってないから。付き合ってるとか勝手に言うな」
「え…」
「気持ち悪いんだよ話しかけてくるな」
社長令嬢から発したとは思えない口調になってしまった。まぁこれが私だからいいよね。
私はそう言って休憩ももう終わりということで練習に戻った。
~~~~~~~~~~~~~~~
テストが終わって練習終わり。
「おい」
「何ですか?」
「美怜に泣きついたのか?」
「え?」
「今日あいつに二度と話しかけるなって言われたけどあれ、お前のせいだよな?」
「え、いや違」
何がなんだか分からなかった。
「お前なんかどうせ使い潰されて捨てられるだけだよ。後あいつ前お前のこと嫌いって言っていたし」
「え…」
美怜さんが…それもそうかもしれない。
最近は勉強からか仕事ができていなかった。
「俺らはただカップルの喧嘩だからまたすぐに直るけどよ、お前は可哀想だな〜」
「そうですか…」
最悪何か理由をつけて捨てられるかもしれない。
その時はまた働こう。
どうせなら僕から申し出た方がいいかもしれない。
その方が美怜さんも助かるだろう。
「はは、そっか…」
また帰り道僕は泣く。
「泣き虫だな…」
少し公園で目を洗おう。せめて最後は印象良く終えたい。
「あ、ブランコ」
昔良く母さんに後ろから押してもらった。
僕はブランコに何年ぶりか座る。
「やめたくないな…」
今の生活は幸せだった。けど幸せはいつまでも続かない。それは僕の今までの人生を振り返れば分かる事だ。
「あれ、まさ」
「美怜さん…」
「どうしたの?」
「ちょっと休憩してて」
「私も少し休憩しよっかな」
「僕飲み物買ってきますよ」
目が腫れているかもしれない。そしたら泣いてたのがバレてしまう。
「いいよ、ここにいて」
「分かりました」
無言が続く。
「テスト1位だったね」
「美怜さんもすごいですよね」
しばらくの間あまり話してなかったから
話し方が分からない。
もうここで言った方がいいのかな。
美怜さんも早くこんなやつと別れたいと思うし。
「美怜さん」
「ん何?」
「別れませんか?」
「え?」
しばらく思考が停止したように見えた。
「え!?ちょ、ちょっと待って!どういうこと!」
美怜さんの様子がおかしい。思った反応と違う。
普通だったら
「そう」
といつも通りに言うと思った。
けど違う
「僕高校やめて働こうと思います」
「なんで!」
「え、だって美怜さん僕なんかがいると」
「なんでそう思うの」
「だって彼氏さんが美怜さんが僕のこと嫌いだとか…」
「そんなこと一言も言ってない!というかあいつは彼氏なんかじゃない!あいつは猿だからただそう言って騒いでるだけ。君が私の彼氏でしょ」
「僕なんかでいいんですか?」
「まさがいいんだよ。一生懸命私のために仕事を手伝ってくれるところとか、優しいところとか全部好き。愛してる。なんならイチャイチャしたい、S●Xだってまさとなら毎日したい」
「ちょ、ちょっと落ち着いてください!わ、分かりましたから」
クールな美怜さんのキャラが崩壊している。
そういうことは今まで一言も言ってこなかったからびっくりしている。
「なんなら執事もしなくていい。私が養うから。隣にいてくれるだけでいいから」
「それはダメですよ。美怜さんが疲れちゃうじゃないですか」
「そうやって君は私のことばかり。優しすぎるんだよ」
「好きな人に優しくするのは当たり前ですよ」
好きな人と一緒にいられるだけでも嬉しいしね。
「ごめんね。これからも上手く好きを伝えられないかもしれないけど好きでいてくれる?」
「クールな美怜さんも大好きだから問題ないです!」
「手繋ごう?」
美怜さんはどちらかというとイケメンなのかもしれない。
それから僕達は帰路に着く。
1話は明日書ければいいなと思います。
勉強や部活で投稿頻度は3日に1回ペースにしようと思います。
ローペースでやっていきますが温かく見守っていただければ嬉しいです(*^^*)