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床下の迷宮  作者: へますぽん


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使役獣

 ふはははは。もはやわたしはチンチラテイマーと言っても良いだろう!この間までチンチラのしもべとして旅の荷物運びに使役されていたが、そんな過去は振り返らない。

 青年部にドングリ独楽を持たせて一日中床に向かってクリクリ回させる恐ろしい報復をしていると界隈で評判の女がわたしだ。

 あの次の日から、ドングリクリクリ班とこよった単糸を撚り合わせる合糸班に分け、更に糸を定規に合わせて結び目を作る網作り班も編成。定規と言いながらただの小枝に過ぎないが、この小枝の長さこそ秘訣があって、チンチラが潜れない網の目になる。

 もちろん、網の目を潜れないから攫われることはないけど、襲われて命の危機に遭う可能性はある。でも、この繊維は半透明で細くチラつくのできっと鳥も嫌いになる。そうあって欲しい。

もし、網にかかったら、鳥はわたしの獲物だ。鳥がわたしの巣を狙ったのだから、わたしも食ってイイはずだ。カモン焼鳥丼。妄念が籠った悍ましい網である。この邪念が伝わるといい。

 合糸する糸を選分けながら、焼鳥かぁ。久しぶりかも。ホクホクの笑顔がこぼれる。

 ドングリ独楽折檻チームから高い警戒音が次々に上がる。土でできている巣穴でさえ反響する。毛を逆立てた成獣たちが駆け込んでくる。

「!!」

歯軋りやカチカチと音を立てる若獣。惨状に警戒姿勢を強める成獣アニキ。固まった身体を錆びたブリキのように軋らせながらわたしに向ける。

「ねえ.ミズキ。確かに意に反した荷役に駆り出したアイツらは悪い。その前にも悪ふざけが過ぎた。でも。まだ幼い部分があって至らないところをそこまで咎めなくても。。。俺に言ってくれればちゃんと躾けるから。どうかオレに免じて今回だけは」

「なんか轟天号に会うの久しぶり?どうしたの?」

身を震わせてなにかに怯えている?あぁぁ、主様の返品寝床藁を巣の外に出すときの鼻の皺に似てる。耳も伏せてるし。

「ミズキ、今、なにを思い浮かべている?それはこの巣を滅ぼしたい系?それともオレの一族を毛皮にしたい?どうか、まだ若い妻と子は見逃してくれないだろうか?」

なにを言い出すのか?戸惑っていると、青年部がとても怯えている。また何か碌でも無いやらかしをして逆鱗に触れたに違いなく、今度こそ頭からゴリゴリ齧られる雰囲気なので族滅だけは避けたいと懇願したそうだ。

 確かに雑食で、肉は好きだけど。生はなぁ。。ユッケ?カルパッチョ?うーん。

 じゃなくて。

「いや。青年部は、真面目に作業に協力するなら、荷役の件はもう咎めないって言ったじゃない。牧草地にかける網に猛禽がかかったら、仕返しに食べてやろうと思っただけだわ」

 でも猛禽は食鳥じゃないよね。もうすぐ網は完成する。種も蒔く。種や芽を狙う鳩とかかかるかもしれない。それは美味しいだろうか?

「ミズキ。ほんとうに信じていい?オレの子は、ちゃんと大人になれる?」

グイっとわたしの手に頭を寄せて来る轟天号の柔らかく密度の高い被毛の感触。久しぶりの手触り。

「轟天号たちの家族が増えて群れが大きくなれるようにチモシーをたくさん育てるんじゃない。たくさん食べて大きくなって轟天号はまたお嫁さんもらうつもりなんでしょう?その為にもチモシーを取りに行く危険を減らす網を張るのに、なんでそんなことを言うんだか」


糸を選るためにおろしていた腰によいしょと上がりこんで、轟天号が囁きはじめる。

「オレはミズキと一緒に運命の相手を探しに出たから、とてもありえないほどの幸運に恵まれて、妻も子も得た。それはこの群の誰もが羨むような幸せだ。弟分たちがあやかりたくて真似したくてそれだけしか考えられないほどに。そのせいで無理矢理遠征をせがまれただろう?オレも気持ちは分かるし、実際同行させたから止められなかった。ミズキが嫌だったかも、とか恨んでいるかも。って考えなかった。申し訳ない。さっきすごい怖い空気になってて初めてそれに気づいた。」


 怒っていないしチンチラのやることに恨みは持たないから、杞憂なんだが。

「そう。怖かったのね。で、轟天号が懐柔しに来たの?」

生贄係か?

「それとはまた別で、当番だから。でも、ミズキのいるところの騒動だから気になったし。この頃は侵入者も深く入って来ないからあしらいも簡単なんだよ」

 去年、わたしが帰還時にあった強盗以来、迎撃用のトラップの見直しが入り、難易度が凶悪化したらしい。上級コース、なのに見返り薄めで不人気化が著しいそうだ。

 だから危機は滅多になく、久しぶりに発生した警報はわたしからだったと。

 肉食妄想禁止か?



そうは言ってもミズキ前回プリプリ文句言ってたしな。

不平不満はあっても基本チンチラにせがまれるとなされるがママなので。

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