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床下の迷宮  作者: へますぽん


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第88回遠征団 やっぱり同行不可避

 たまに物資を配達するのでも大丈夫そうじゃないか?草と砂担いで着いていくまでもない距離だろう。などと彼らのトンネルの短小さを揶揄するようなことを言ったせいか、強い反発を受けた。

 どうしても着いてきてくれなくちゃいけない。がっつり囲まれて足にすがりついて、口々にそれぞれの言い分をきぃきぃと声高に叫ぶ。ちょっとなに言ってるか判らない。分かることはわたしに許された選択肢は三つ。ハイかイエスか喜んでの三択しかないことだ。

 あいつらは言い分を通すことしかしない。暴君なんだ。

 従うまで叫び続けるし、なんならちょっと囓る。血がでないくらいに痛くする。しもべは辛いよ。そういってニッタリ笑っている自分が気持ち悪い。でも、飼育者なら身に覚えがあるはず?ない?それはちょっと踏まれかたが足りないと思うよ。

 遠征団の朝はアバラの隙間にチンチラの足が入って 痛い!という悲鳴で始まる。

 チンチラはあのみっしりと毛の詰まったまるい体躯に対して手足がほんとうに小さく愛らしい。毛でかさ増ししているから極端に小さく見えるのかもしれない。でもヒトの手足の比は犬、猫と比べても手でかいと思う。ヒトのバランスで見るから小さく見えるのかもしれないが、その小ささがアバラの隙間に重さを伴って食い込むのでとても痛い。重いだけじゃない。そして悪ふざけが大好物な男児達が単独特攻で済ませてくれるわけもない。集団攻撃だよ。

 アバラと言わず、腹、足、頬、デコ、顎、喉。あらゆる体表を土足のチンチラで覆われる。踏みつけられる。一瞬、悲鳴も上げられないほどだ。寝起きの不機嫌もあいまって、躊躇なくフルスイングでぶっ飛ばす。

 それをノーダメージで笑いながら着地して、おはよう!!とさわやかにかえすのだ。そして、さあ行こう一緒に行こうオレと行こう。と起きるまで言い。ハイと言うまで足にすがる。こっちに目線をくれながらそっと前歯をたてる。わたしが睨むと奴らはもうすこし歯に力を入れながら、黒く濡れた目を逸らさない。


 というわけで、今日も隧道にうるわしいハイトーンヴォイスが反響するのを聴き続けているのだ。このままチンチラのカーマストラができそうじゃないか?

 トンネルは順調に延伸している。時折地表に顔を出して方向を確認し、試削で不適な地層を回避しながら遠くに見える山脈に向かっている。巣穴と違う手触りのトンネルの土壁は礫が混ざってざらりとしている、深さなのか断層を越えたのか。ちょっと遠くなったなと実感する。


 寝床用の草と食事は分けてくくって担いでいる。わたしもすこし学習したのだ。降ろすのも寝床用が先なので悪ふざけして飛び込んでも大丈夫。怒る理由は少ない方がイイ。

「今日もたくさん歩いたので夕飯は大盛りにする!」

 誰にいうでもないが宣言してから唱える

「ビーフボウル特盛ギョクつき!」

 昨日オプションつけたらアレンジが効いたので満を持しての挑戦だ。

 肉がたっぷり載ったアツアツのドンブリが顕われる。想像してなかった特典に胸が熱くなる。豪天号との旅で気づけばよかった。でも、あの時点ではドンブリ食べ放題というだけで既に満足だったからね。

 次はなにを追加できるだろう?つゆだく??あたまだけ?やったことないからなあ。




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